僕は優しいよ(真顔)

僕は優しいよ(真顔)


「あの……エランさん、って……猫かぶっ、てたり……しますか……?」

「え?」

きょとん、とエランの目が丸くなり、首を傾げている。その仕草は少し幼くてかわいらしいとスレッタは思ったが、すぐ下を見れば自身とは似ても似つかぬゴツゴツとした身体がある。シャワーを浴びてしっとりした肌からはいいにおいがして、なんだかもうクラクラとスレッタはしてきて目をさ迷わせた。

「猫をかぶってるって……僕が?」

「ご、ごめんなさい!失礼、でしたよね……あ、あの、猫をかぶる、というか、私にはエランさん、自惚れじゃなければすごくすごく優しくしてくれてるんじゃないかな、って思って……」

「優しいと思ってくれているのなら、嬉しいよ」

そう言って微笑みを浮かべるエラン。物語で花のような笑顔なんて表現を見たことがあったが、きっとそれはこういう笑顔なのだろうとスレッタは思った。猫をかぶっている、と言った時に一瞬すっと目を細めていたのが少し気になるけれど。

「え、エランさんは本当に優しいです! 今までずっと……!」

「でも、誕生日を祝おうとしてくれた時、僕は君に酷いことを言ったこともあるよ」

「あれは……私が鬱陶しかった、ですし、それにエランさん……私にハッピーバースデーの歌、うたってくれたじゃないですか……だからおあいこ、というか、私はもう、嬉しい思い出になってるというか……」

スレッタの額にキスが落とされた。ひゃ、とおでこを抑えてエランを見ると、とびきり優しい笑顔を浮かべている。あんまりきれいな笑顔だったので、猫をかぶるだなんて言って申し訳ないことをしてしまった、と少し反省の気持ちがもう湧いてきていた。

「や、やっぱりエランさんはすごく優しいです……大好き、です」

「僕もきみが大好きだよ」

「え、えぇ、えへ、えへへ……」

それから何度も唇にふれられ、いつの間にかベッドに押し倒されていた。見下ろされてドキドキしながらこれからすること、されることを想像しようとした。

「……どうして僕が猫をかぶっていると思ったの?」

「え……? あ……べルメリアさんにエランさんはすごく優しいって言ったら、猫をかぶってたりして、って言われて……」

「……チッ」

聞き間違いだろうか。エランから似つかわしくない、少々野蛮な音がスレッタは聞こえたような気がした。だがエランは目を少し細めてスレッタの頬や顎、耳を宝物にふれるようになでている。

「優しくない僕は、もしかして嫌……かな」

「そんな訳ないです! エランさんは優しいですし……それに、もし優しくないところを知っても、エランさんのことをまた知れて、きっと、嬉しいと思います」

「本当? 嬉しい……」

当たり前じゃないですか!そうスレッタはエランの真下で胸をはった。



「も、う、やぁ、です……っ、じらすの、やらっ」

女にも二言はある。

もう嫌だとスレッタは泣きっぱなしになっていた。

スレッタはエランの手を太ももに挟み込んでしまって身をよじっている。

「えらんさ、ぁ、はやくいれて、おねがいぃ」

「痛くないようにしてあげてるんだよ、ワガママを言わないでくれる」

「でもっ、も、3回も、いってぇ……じゅうぶん、です、からぁ」

「はぁ……我慢のできない女だな。でも、そう数えられるのは余裕のある証拠だよね。気に入らないな」

え?と思った時には奥までエランのもので貫かれ、スレッタの全身はぴんと伸びた。それからすぐにガクガクと休む暇もなく揺さぶられ、頭は混乱しているのに、からだはどんどん熱を持った。

「ああぁ〜〜っ、あ、あ、やぁっ」

「うわ、なかドロドロ。そんなにいれられたかった?」

「あ、あ、ふぁ、ああぁ……っ」

「聞いてるの」

ごちゅ、とひときわ強くなかをえぐられ、スレッタはあっという間に達して全身を痙攣させた。じいん、と指の先までしびれて、思うようにからだは動かないし頭も働かない。

「〜〜〜〜っ……」

「スレッタ」

「き、きいて、ましゅ、ぁ、い、いれられた、かった、れす」

「そう」

せっかく頑張ってこたえたというのにエランの返事は素っ気ない。もう今日はこんなことばかりで、悲しいはずなのになかをぎゅうぎゅうと締め付けているのがわかる。

腰を持たれているからおしりが浮いてしまって、うまく動けない。スレッタは逃げたくてたまらないのにどうしようもなくて、エランを受け入れるしか無いのだ。しかしやはり、逃げたい。ぱんぱんと音が響くなかに、ぐちゅぐちゅと自分の出したもののせいで鳴る音が混じっているが、明らかにいつもより大きい気がした。恥ずかしい。

「えらんしゃ、もぉやあ、ですっ」

「なに、今度は抜け、って? きみが言ったんだよ」

「でも、れも、もぉへんに、おかしくなる、ぅ、あぁ!」

「我慢しろ」

「は、はいぃ……♡」

エランは穿つような冷たい眼差しでスレッタをなじった。胸が高鳴ってしかたがない。スレッタはエランの命令とは反対のからだになってしまって、また絶頂まで一瞬でのぼってしまったのだ。

「んんん〜〜〜〜〜っ、」

「は……きもち……」

スレッタは余裕なんてひとつも無いのに、エランはほんのりと頬を染めているだけだ。その腰の動きは可愛さの欠けらも無い。まだ1回も彼は達していない、その事実に気付いてスレッタはゾッとした。もうすでにいつものセックスよりもからだに力が入らなくなっているのに、まだエランは始めたばかりなのだ。

スレッタは最後のさいごの力を振り絞って、抵抗をした。

「おねがい、ぬ、ぬいてぇ、せめて、おやすみ、してかりゃ……ああぁッ、あぅ」

「がたがたうるさいよ」

「〜〜〜〜っっ!」

子宮口にごちゅん、と強く穿たれ、スレッタの視界がはじけた。声なんて出なくて、ただエランのものを締め付けただけだった。また達したからだに構わずエランは動き続けている。ぐずぐずになったなかを何度も何度もえぐられ続け、その快楽が脳にまで響いている気がした。

「ふあ、あぁ! もういきまひたっ、いまいったからぁっ」

「だからなに」

「ふぇ……あっ、ん、んんぅ」

「ほら、腰あげて」

「ひっ、ぁんっ!」

エランはスレッタの腰や胸や太ももをなでたあと、ぱん!と尻を横から叩いた。びくん、と情けなくはねたスレッタの顔は涙とよだれでぐしゃぐしゃになり、足はもう力が入らなくてだらりと開かれているだけだ。それでもエランは許してくれない。スレッタはもうとっくに限界だった。

「僕、まだいってないんだけどな」

「ごめんなさ……っ、ひぁっ!や、やめっ、」

「さぼらないで」

さっきまでなんとか自分からも腰をあいまいに動かしていたけれど、今はつま先だって力が入らない。なのに体重を重ねられ、腰を回すように押し付けられたスレッタは抵抗をする術をぜんぶ奪われた気がした。

「ご、ごめ、にゃさ」

「しょうがないから僕が全部動いてあげるよ」

「そ、そんな、も、いい、ひああぁっ、ああぁ〜〜っ、やだぁっ、やだっ、やぁだぁ〜〜っ」

「弱すぎ。でも……かわいい」

エランさん、どれだけ猫かぶってたんですか……

スレッタはエランからの優しいキスを受けながら、彼の化けの皮を剥いだ自分を恨むしかできないのであった。

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