僕の武器は厳密には「固定ダメージ1」を与える針だった、ということは!?
アドラメルクとの戦いは、マヌルに重要な気づきと、そして多大な希望を与えた。
装備を外せない呪いがかけられた、攻撃力1しかない針。
そう思い込んでいたが、厳密には違ったのだ。
本当は、「固定ダメージ1」を与える針だったのである。
「あれ? この針って多分、どんな相手、どんな条件下だろうと、1ダメージは与えられるんだよね?」
王国最強パーティ、アレクサンドラ隊の全力攻撃さえ完全に反射した、『四魔天』アドラメルクにさえ適用されたのだ。
およそ例外はないと考えていいだろう。
「と、いうことは……!」
マヌルに、天啓の如き閃きが降りてくる。
「メタル系モンスター……!」
全身が謎の超硬質金属で覆われ、あまりに高い防御力を誇るために、まともにダメージを与えられず、そのくせなぜか臆病で、すぐ逃げてしまうために、極めて討伐困難なモンスター種である。その代わり、倒せば凄まじい経験値が得られるという。
もっとも、それさえ御伽噺の類である。なにしろ、超越者が伝説級武器を全力で奮ってさえノーダメージだった、という確かな実例の方はよく知られているのだ。仕留めた、という話は、噂にも聞いたことがない。実在も怪しい伝説の英雄の物語に出てくる程度だ。
「それでも……!」
マヌルにとっては、試してみる価値があった。いや、他に縋るべき希望もないのだ。
悲壮な決意と、小さな、けれども煌々と熱く灯り始めた期待を胸に、マヌルはメタル系モンスターが棲むという地を目指すのだった。
「ってぇ!? これ、『メタルスライム倒して3年、知らないうちに(超越した上で)レベルMAXになってました』になっちゃうのでは!?」