僕と私と父さんと母さん

僕と私と父さんと母さん


父さんと遊ぶのが好きだ。

母さんの歌を聴くのが好きだ。

父さんと母さんと歌うのが好きだ。


僕と私は、双子として生を受けた。

一番古い記憶は、父さんが僕を背負い、私を腕の中に抱いて、母さんの子守歌を聴いてるってもの。

なんでも海兵だった父さんと母さんは、昔神に逆らって犯罪者になったらしい。そのせいで世界中から追われることになったとも言っていた。

でも父さんと母さんには同じくらいたくさんの友達や味方もいて。

その人達のおかげで、ただの普通の人に戻れたらしい。

それが僕と私が生まれる前の出来事だって教わった。


僕と私は父さんと母さんが大好き。

そしてそれと同じくらい、父さんと母さんはとっても仲良し。

いつもくっついてるし、お風呂にも一緒に入るし、あと暇さえあればハグしてるし頬擦りしてる。

正直見てて恥ずかしくもあるけど、幸せそうだからまあ強くは言えない。

なんでそんなに好きなの?って訊いたら、揃って「ずっと一緒に居てくれたから」って言う。

単純だけど、納得しちゃう。だって同じような話を、父さんと母さんの知り合いからたくさん聞いたから。

結婚する前からずっと仲良しだったらしいから、幼馴染ってすごいんだなって思った。

……前に私が「大きくなったら結婚するー」って父さんに言ったときは、母さんがすごい勢いですっ飛んできて父さんに抱き着いて、そして「ダメ。絶対にダメ。パパは私だけの旦那さんだもん」って言われて、ちょっと怖かったけど。

僕はそんな2人が笑顔の父さんに「2人とも大好きだぞー」って言われてふにゃふにゃになっていくのを、笑いながら見てたっけ。


父さんと母さんはよく「"新時代"を作る」って言うけど、それが何なのかはよくわからない。

「今のままでも十分なのに」って僕が父さんに言ったら、「まだ足りねェ」って言われた。

「新時代になったらどうなるの?」って私が母さんに訊いたら、「もっとたくさんの人が笑えるんだよ」って返された。

僕たちはまだまだ小さいから、どうしてそこまでこだわるかわからないけど。

私たちが大好きな父さんと母さんの夢だから、応援したいって思った。


そしてそんな父さんと母さんのことを、色んな人たちが助けてくれた。

赤い髪のおじいちゃん、炎の叔父さんとシルクハットの叔父さん。

革命軍のおじいちゃんや海兵のひいおじいちゃん、白いひげの大海賊のおじさん。

大仏のおじさんに、3人の大将のおじさん。

ひいおじいちゃんの弟子の2人のお兄さんと、オレンジ髪の海兵のお姉さん。

煙の海兵のおじさんと刀の海兵のお姉さん。

酒場の店主のお姉さんと山賊のおばさん。

緑の髪のお兄さんと、長い鼻の海賊のお兄さんとその仲間の人たち。

サメの海賊のおじさんと蛇の海賊のお姉さん。

青い髪のお姫様に大きな人魚のお姫様、ピンク髪のお姫様。

おにぎりが上手なお姉さん、犬みたいな髪型のおじさんに病弱だったお嬢様、よさ毛のおじさんに風車のおじさん。

栗のおじさんに船大工のおじさん、犬猫のおじさんたちに龍の将軍のお兄さん。

他にも数えきれないほどたくさんの人が助けてくれて、ちょっと思い出せないのが申し訳ないくらい。


助けてくれた人たちはみんな言っていた。

世話になったから。目にかけていたから。恩があったから。救われたから。酷いことをしてしまったから。

仲間だから。友達だから。家族だから。大切な人だから。

父さんと母さんのことが大好きだから、助けたかったって言っていた。助けることが出来てよかったって言っていた。

父さんと母さんはたくさんの人たちに愛されていて、僕と私はそんな父さんと母さんの子供なのがとても誇らしかった。


だから決めたんだ。

この素敵な世界に恩返ししようって。

父さんと母さんを助けてくれた人たちも。

たくさん目にかけてくれた人たちも。

一緒に泣いて悲しんでくれた人たちも。

海軍も。

海賊も。

革命軍も。

世界政府も。

民衆も。

みんな、みんな、父さんと母さんの友達だから。

僕と私でみんなを手伝って、少しでも報いようって、そう決めたんだ。


みんなが僕たちを守ってくれた。

みんなが私たちを育ててくれた。

この世界に神はいないけど、優しい人はいっぱいいる。その人たちがいれば、正義も守れるし”新時代”もきっと作れる。

僕と私のやることはその手伝いだ。

大好きな父さんと母さんを助けてくれたんだから、それくらいはやらなくちゃ。

そんなことを言ったら、父さんと母さんもそうしたいって言ってきて。

そんな父さんと母さんのことが、やっぱり僕と私は大好きなんだ。


みんなが僕たちに色んなものをくれたから。

今度は私たちがみんなに色んなものをあげる番。

僕と私と父さんと母さんを助けてくれたこの世界に祝福を。

そして僕と私の大好きな父さんと母さんにー―――――目一杯の幸せを。


Report Page