傾城傾国、魔性の尾

傾城傾国、魔性の尾

とある組織の一員

とある宮廷のある部屋、官吏であれば、暇だからとかぷかぷとキセルを吸うような時間。

煙と同じように、『金色の九本の尾』も安らぎを示すかのように揺れていた。

そして、その尾の主である傾城傾国の女狐はキセルなんか吸わずに、手紙の束を読みながら思案していた。

「……そう。廊は安泰、他も良し。悪くない報告にも飽きてくるわ。

まあ、優秀で忠実な番頭を立てて任せているからこそなのだけれど」

おおよそ満足と退屈の混じった声色でそう呟き、手紙の束を投げ捨てる。

すると、魂魄を縛られ目が虚ろとなった女官――縛る理由としては口封じのためだけであり、もっと簡潔な方法もあるのだが、あえてそうした――がそれを拾い上げ、整え、仕舞う。

その動作は無機的であり、一切の感情が廃されている。それこそが、魂を縛られた人間の成れ果てなのだが。


そして、それを行った当人はこれまた暇そうにしていたが、ふと面白い遊びを閃いたようで金色の狐の耳をぴんと立たせ、別の女官を呼びつける。

「ねぇ。あの人に会うから今すぐ服を整えなさい。……って、この子も魂を縛ったあとじゃないの。別の子を呼びつけて、しくじったら指でも落とすなんて言えばよかったわ」

そう、残念そうに告げる女狐の尾と耳はいつの間にか消えていた。


――その日のその後についてはいまいちわからぬが、数日後には必死に運ばれた筈の貴重な果実が捨てられていたそうだから笑えない。


これが、国を傾けた女狐の日常の一瞬である。くわばらくわばら。

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