傷痕に上書きを

傷痕に上書きを


注意

・63のスレ主のレスに64のネタを取り込ませていただいた話です(結構ごちゃっとというかふわっと取り込んでしまったので矛盾とか変なところとかあったらすみません…スレ主の読解力がガバガバなばっかりに…)

・恋愛要素有

・特に描写はないですが2年後軸(not合流ifなのでまあ謎時空…)です

・その他もろもろ

上記を読んだうえでなんでも読めるぜ!という方はどうぞよしなに。



「Mr.3、海行きましょ。」

「能力者である私を沈める気カネ?」

「幾ら何でもそんなわけないでしょ。何時間も描き続けてたからそろそろ気分転換よ。」

Mr.3にそう言うと、ガリガリと頭を掻いた彼が溜め息を1つ。

やっぱり嫌かしらと思っていると、

「…分かった。少しだけだからな」

と意外とあっさり折れてくれた。

宿の近くにある海は綺麗で行きたかったけど、一人で行ってもつまらないから一緒に来てくれるのが嬉しい。


「ふふ、すごく綺麗ね。」

「…まあ、一般的にはそうだろうな」

能力者でも少し足に水がかかるくらいなら問題ない、とザラに聞いて知っていたけどMr.3はそれ以前に海自体が嫌いなのかしら。

「!」

後ろを向いてぶつぶつ言うMr.3にいたずらしてみたい。

「Mr.3!」

「なんだ───」

ぱしゃ、と軽く弾いた水がMr.3にヒットした。

「うぉ、やめるガネ!あんまり掛かると脱力する!」

「ザラに聞いて知ってるわ。だからちょっとだけにしたのよ。」

「全く...悪戯もほどほどにしたまえよ。」

そういうMr.3のお腹には、傷があった。

ナイフでつけられたみたいな傷。

それが、海水で濡れたことで透けて見えていた。

「(痛そう…)」

「ン?…ああ、この傷か。」

わたしの視線に気がついたMr.3が合点がいったような顔で頷く。

「これは私がまだ20にもなっていないころについた傷だガネ。能力を手に入れたばかりのあの頃は若くて無謀だった。」

───Mr.3が暑くてもあんまり服を脱ぎたがらなかった理由が何となく分かった。


宿に戻って傷を見せてもらう。

彼の服を脱がせるような形になってしまってドキドキしたけど、Mr.3の方はあんまり気にしてないみたい。

「この傷はさっきも少し話したが能力者になったばかりのころ、調子に乗ったせいでうっかり刺されてな。」

「痛かった?」

そう言いながら指先で軽く触れてみる。

…意外と腹筋がバキバキね。

「ああ、痛かったな…ッ、擽ったいから触るのはやめたまえ」

手をそっと止められたので今度は横腹をつん、と一度だけ突いてみた。

白くなった傷跡は、これも古傷なんだろう。

「それは23歳のころ、何千万ベリーと借金をしていた男に後ろから剣で突かれてな。まあそいつはどう足掻いても支払いが出来ないようだったから『中身』を取った上で…いや、君にとってはあまり気の良い話題ではないな。」

「それは今更ね。」

「他には私に勝手に好意を向けて色々勘違いしたらしい女にアイスピックを脚に突き立てられたこともあったな…」

「怖いわね…」

「能力者でなかったら多分死んでたようなシーンもいくつかあったガネ。この胸の傷痕もそうで───」


Mr.3は細かい傷の詳細も全部覚えていた。

多分自分に傷をつけた全員に『仕返し』してきたんだろう。

...でもその人たちは、悪い意味だけど一生Mr.3に覚えていてもらえる。

わたしが彼につける傷<キスマーク>は、すぐに消えてしまうのに。

そう思うとなんだかモヤモヤしてきた。

「(でもただの痕の場所なんて覚えていられるわけないものね)」

残るほどの『傷』ってわけじゃないし、仕方ないけれど。

「どんな感情なのカネその表情は。」

わたしの顔を見たMr.3にそう言われ、唇を尖らせる。

「むー…」

どんな、って言われれば『嫉妬』が一番近いんだろう。

でも素直に言うのもちょっと憚られて、代わりにMr.3の腕に残る傷跡へ嫌なことをわたしで上書きするようにキスをした。

お腹の古傷にキスマークを付ければ、

「随分と積極的だな、マリアンヌ?」

とにやりと笑った彼に名前を呼ばれる。

それだけでぶわっと顔が熱くなった。

「え、あ、えっと...」

無言で広げられていた両腕の中にすっと収まればぎゅっと抱き締められた。

頬が胸板に当たる。

Mr.3の素肌が熱い。

「...あの、ギャルディーノ、」

顔を見上げて口を開いた瞬間、がぶっと食べられそうな勢いでキスをされた。

「んむ、ぅ」

いつもより荒く唇を貪られて目を白黒させているうちに、離れた唇が鎖骨の辺りに吸い付いた。

チリッとした小さな痛みと共に、わたしの視点では見えにくいけど多分赤い痕がついている。

「…どうして君はそんなにいじらしくて可愛らしいんだ」

「そんなこと、言われても…」

どこでどうスイッチが入ったのかはよく分からないけど、このまま流されるのも嫌じゃないし悪くないと思ってしまったあたりわたしも絆されているというか、毒されているというか。

───でもそれでMr.3に痛い思いをさせた人のことを一時でも忘れてわたしだけを見てくれるなら、まあそれも良いかなと少し溜飲が下がった。

…その後、人から見えるところに沢山の赤い痕をつけられて隠すのに困ったのはまた別の話。

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