偉大な男の最後 1
「…どういうことか、説明してもらえるか、ココロ?」
声を荒げそうになるのを必死にこらえつつ、その言葉をひねり出す
一度でも強い感情を表に出してしまえば、全てそれに支配されまともな思考が出来なくなる
どれほど強く、複雑な感情がこの胸中で渦巻いていようとも、今は押し殺し、努めて冷静に振舞わなければならない
少なくとも、この現状を正しく把握できるまでは
『………』
「………」
ココロは一言も発さない
言葉を選んでいるのか、あるいは彼女自身、起こったことを受け入れ切れていないのか
その静けさはおよそ2分ほど続いた後、彼女の一言にて破られた
『海賊王の船の製造…、それがトムさんが連れていかれた理由さ』
「…それは、海列車開通により免罪される
確約こそされていないが、そうなる運びではなかったか?」
『………』
ココロが再び沈黙する
そう、元はそういう話だった
海賊王ロジャーの船、"オーロ・ジャクソン号"を造った罪
本来なら即極刑のその罪を、執行猶予たる10年の間に完成させることが出来れば免罪となる
正確には免罪となる可能性が生まれるというだけだが、海列車の規模と経済効果、そしてW7の人々の精神的支柱になりうるその存在感を考えれば、ほとんど同じようなものだ
仮に、トムの裁判を担当する裁判官がそういった功績を全く考慮しないレイテ掴んであったなら、まだ納得がいく
あぁ、やはりだめだったか、と
しかし、実際に10年前、そして今回裁判長となったのは厳格ながら誠実な人柄で有名なエニエス・ロビーの裁判長ジョルジ氏
実際、彼自身海列車に乗船しその乗り心地を誉めていたという話も聞いている
ゆえに私は、彼であれば十中八九無罪となるであろうと考えていたのだ
それが、この有様である
一刻も早く、何が起きたのかを知りたい
やがて意を決したのか、ココロは重々しく口を開け、事の次第を話し始めてくれた
『なんもかも、政府の奴らのせいさ』