偉大な男の最後5
『…ンマー、ありがとう、○○さん
折角の申し出だが、その話は今すぐには受けられねェ』
「…」
ふむ、やはり彼は頭がいい
ちゃんとわかっているようだ
ここ数年、私はトムと表立った付き合いはしていない
彼に対する支援金も、複数のダミー会社やエージェントを介することでたとえCPでも追いきれないほど複雑なルートで送っている
そのおかげで、仮に古代兵器の設計図がトムの周辺から見つからなかったとしても、私の所までCPの調査が及ぶ可能性はだいぶ低い
もちろんゼロではないが、さすがに政府の奴らも公式には10年以上あっていないはずの人間のもとに、そんな重要なものがあるとは考えないだろう
しかし今の、戸籍のないトムズ・ワーカーズの1社員でしかなく個人としてはほぼ無名のアイスバーグ君に対し私が支援を行えば、悪目立ちし最悪そこから設計図のことがばれる可能性がある
トムの時のように秘密裏に行う事もできなくはないが、それでは取れる選択肢が狭まり、約束したような全面的な支援が出来ない
一番確実なのはアイスバーグ君が個人で名をあげ、私の援助を受けることに何の疑問も持たれなくなってから支援を始めること
私は元より投資家、将来有望な若者を支援することに何の問題があるというのか
アイスバーグ君もそれが分かっているからこその、先ほどの言葉
彼自身理解しているなら、問題はない
後は時間だ
「…分かっているとも、それほどかかる?」
『…2年、2年でおれは、このW7で名をあげ、この町を変えられる男になる
そうしたら、○○さん、アンタの力を借りたい』
「…わかった、2年だな、いいだろう
君が覚悟を決めたなら連絡すると言い、私はいつでも準備して待っていよう」
『あぁ、頼む…
じゃあ、2年後に』
「うむ、達者でな、アイスバーグ君」
通話の切れた電伝虫の受話器を戻し、背もたれに体重を預け大きく息を吐く
話した感じ、アイスバーグ君は大丈夫だろう
トムの死を、前に進むためのばねにできている
後はここから、彼がどんな道をたどるのか
それを知るのは、今のところ彼自身だけだ
ならば私は、彼がいつ助けを求めてきてもいいように、最大限の準備をして待っていよう
…それでいいんだよな、トム?