偉大な男の最後4

偉大な男の最後4


プルプルプルプルプル、プルプルプルプルプル、ガチャ


『…もしもし』

「久しぶりだな、アイスバーグ君」

『…!○○さん…』


ようやく、繋がったか

トム一件から1週間後、その翌日に奴の弟子、フランキーことカティ・フラム君の最後を聞いた私は、もう一人の弟子であるアイスバーグ君にすぐ連絡をとろうとした

しかし、師匠も弟弟子も失った彼はすでにトムズ・ワーカーズを去っており、連絡先を入手するまで随分時間がかかってしまった


…フランキー君の訃報を伝えてきたとき、ココロはだいぶ飲んでいたらしく、呂律が回っていなかった

いや、それも当然の話だ

トムが死んだというだけで-私もだが-受けた精神的ショックは計り知れない

そこに畳みかけるような彼の死の報告だ、酒に逃げるなという方が無理な話

それで彼女の気が少しでもまぎれるのであれば、止める理由の方がない


フランキー君の死因だが、政府からの報告ではトムを連行中の海列車を止めようと線路上で立ちふさがり、そのまま轢かれたそうだ

…結果的に、師匠と弟子がそれおれ作ったものがお互いを傷つけ命を奪うことになってしまったというのも、何とも皮肉で、後味の悪い冗談だ


話が逸れたな、今はアイスバーグ君のことだ

正直向こうも話したい気分じゃないだろうが、これだけは言っておかねばならない


『…○○さん、せっかく連絡をくれて悪いんだが、おれはこれから仕事-』

「あぁ、わかっているとも

私も長話をするつもりはない、用件だけを言いに来た」

『…!』


一度受話器を離し息を整え、言葉を続ける


「アイスバーグ君、今回のことに関して、私からことさら言うことはない

…言わずとも、君であれば分かっているだろう?」

『…』


アイスバーグ君は何も言わない

が、それは私の言葉が理解できていないからではない

分かっているが故の沈黙、張り詰めた空気がそれを物語っている

彼はトムから設計図を、技術を、意志を受け継いだ

言いたいこと、思うこと多々あるだろうが、今はそれを胸にしまい、受け継いだものをもってただがむしゃらに前へ進むべき

アイスバーグ君自身、分かっているだろう

自身の死によって彼が立ち止まってしまう事こそ、トムは望まないだろうからな


そして、アイスバーグ君がその選択を取るのであれば、私がすべきことはただ一つ


「アイスバーグ君、私は君がどのような道を歩もうとも、君自身がその選択にドンと胸を張れるなら、何も言わん」

『…』

「そして、君が真に必要だと思うことがあれば、何時でも私を頼ると言い

君がどのようなことをしていようと、私は全力をもって君を支えることを約束しよう」


トムから私への、最後の言葉

後のことを頼みたい、と

ならば、望み通り、後のことはすべて任せてもらおう

私の取れる手段、金の力をもってして

トムの意志を、未来を託されたアイスバーグ君を全力で支援する

それが私にできる、トムへの唯一の弔いになる

そう、私が感じたから

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