偉大な男の最後2
「…つまり、その古代兵器の設計図とやらを狙った、CPの策略、だと?」
『…あぁ、そうだよ
そんなもんがあったせいで、トムさんは、トムさんは…!!』
ココロの言葉が途切れる
代わりに聞こえてくるのは、深い悲しみに満ちた嗚咽
復活にはしばらくかかるだろうと判断し、私は一度受話器を手から離して、顔を抑えながら天を仰いだ
…まったく、なんてことだ
古代兵器"プルトン"、その名は私も聞いたことがある
闇の世界の一部で実しやかにささやかれる伝説
かつてこの海に実在したという、一発の攻撃で島一つ吹き飛ばすことも可能という、超級の戦艦
復活すれば世界が滅びるとまで言われるその化け物の設計図を政府が狙っていたというだけでも大きな問題であると言えるのに、まさかそれがW7に、それもよりによってトムの手元にあったなどと…
私はそんなこと一度とて聞いたことはない
一言でも言ってくれれば、安全かつ機密性の高い隠し場所の確保くらい、いくらでも協力できたものを…!
…いや、言わなかった理由など分かり切っている
そんな危険なものに、私を関わらせたく無かったのだろう
直接なら言わずもがな、今回のことを考えれば、その情報を知っているだけでも狙われる可能性は十分にありうる
それに、秘密の共有というのはその人数が増えるほどに外部へ漏れる危険性が加速度的に増すものだ
私の、そして設計図自体の安全を考えれば、最初から話さないというのがベストな選択であろう
まぁそうでなくとも、あいつは昔から、そういう大事なことは私に相談せず、己の信念を貫く奴だったというのもあるだろうが
ロジャーの船、オーロ・ジャクソン号を造ったこともそう
結局、奴は最後までそのことを誇りに思い続けていたそうだ
島の者たちに罵倒されようと、それが己の命の引き金を引く結果になろうとも
…それで自分が死んでしまったら、笑い話にもならないというのに、まったく…
「…本当に、馬鹿なやつだよ、お前は…」
…もっと、うまく立ち回ることはできただろう
オーロ・ジャクソン号にしても、設計図にしても
偽の技師を仕立て上げるとか、情報を攪乱し見つかるはずのない場所に隠すだとか
それこそ、破棄したように見せかけることだって可能だったはずだ
一言でも私に相談してくれれば、私が手を貸し、それらすべてをうまく処理することもできただろうに…
…いや、何を言っても無駄だろう
そんなこと、誰であろうトム本人が許さない
少なくとも、オーロ・ジャクソン号に関しては
造った船がどのような結果を生もうと、生みの親はそれを愛し、ドンと胸を張れ
毎度のようにそう言っていたヤツが、そんな己が生みの親であることを否定するようなことは死んでもしないだろう
…だが、それでも…
「…フン、我ながら、なんと女々しいことだ」
死人"へ"口なし、ここで私がどう考えてようと、もはやトムには届かない
この悲しみも、悔しさも
ただ、この胸の中に渦巻き積もっていくだけだ