俺シコスレ

俺シコスレ


「あのさ、俺ってシコれる?」

そう言ったのはオレのダチだった。ちっこくて軽い癖にプライドだけデカくて、おもしれー奴。

「シコ……ってお前なぁ」

確かに見た目だけなら小さくて髪が長くて可愛げのある奴だけど、オレはそんな目で見たことはなかった。と思う。

「いやなんとなくさ。聞いたことなかったし」

「普通ダチにそういうこと聞くかよ」

ぶっちゃけそういうことを言うからオレはこいつとダチをやってるんだけど、それを言えば調子に乗るのが目に見えてるからそれは黙っておくことにした。

「実際どうなん? 俺でシコれる?」

「いや……シコろうと思ったことはねーけどさ。何? シコれって言ってんの?」

「いやそういうつもりじゃねーけど」

じゃあどういうつもりなんだ。

「いやさ、前言ったけど俺って腋フェチじゃん? お前は何フェチなのかな〜、みたいな?」

何を言うかと思えばフェチを聞きたいだけか。それなら一発カマしてやろう。

「オレはフェチっつーよりシチュ重視なんだよ。つまりこういうこと」

そう言って壁ドンしてみる。身長はオレの方が15センチくらい高いものの普段は対等っつーか、あんまり身長差を感じないんだが、こうしてみると結構威圧してる感覚がある。

「あ……」

「おい、黙んなっての」

「いや……」

「……なんか悪いことしてる気分になるんだけど?」

「ん……まぁ……いや……」

なんで顔が赤いんだこいつは。オレまで暑くなってくるだろ。

「……終わり!」

ダチはオレを跳ね除けた……いや、跳ね除けようとした。思ったよりもずっとか弱い力で、オレの胸を押している。

オレの中の何かが動き出した。

「終わりってことはないだろ。お前が聞いたんだぜ? オレはどういうのが好きかって」

「いやあのその……」

「こういうのが好きなんだよ」

手首を掴んで、強引に唇を合わせる。

「!?!?……!!」

もがこうとした脚の間にオレの脚を捩じ込む。同時に唇の間に舌を捩じ込む。オレの半分くらいの太さの脚が、必死にもがこうとしている。もがこうとして、止まる。

こいつの身体から力が抜けていくのを感じて、手首を掴んでいない方の手で支えてやった。

「あぅ……」

「イイ、だろ? こういうの」

「ぅ…………」

「……続けるか?」

「………………ん」

小さく小さく頷いたダチをオレは抱き上げた。羽根のように軽いと思った。そんなはずはなくても、何か熱いものに浮かされたオレの頭ではもうよくわからなかった。

「ベッド行くけど、いいよな?」

そうは言ってもお姫様抱っこをしている以上逃す気はない。こいつも分かっているのか、小さな頷きが返ってきた。

とすん、と音がして、ギシ、と続いた。

「あの! ……あの、俺……」

「ん? もしかしてはじめてか?」

「……ノーコメントで」

「なんでだ?」

「……恥ずかしいじゃん」

その反応が何よりも物語っていたのは言わないことにした。

「いつも地味めな格好の割にやたら煽ってくるから“狙ってる”のかと思ってたんだが」

「なっ……あっ……え、あ……」

まぁいいけど、と流してボタンに手をかける。風呂はいい。そういう雰囲気じゃない。それにもうどうだっていいと思った。

「……下も脱がせた方がいいか?」

「自分でやる」

プライドから奴はそう言ったのかもしれない。だが実際のところはそれが一番煽情的だ。自らの意思でこれから起こること、起こすことに備えるという事実に掻き立てられない男はいない。

脱ぐが早いかオレは思い切り押し倒した。

「痛かったら言えよ」

「俺の方も、変だったら言って」

そうして確認しあって、確認をしたという事実に更に昂る。

オレの指が触れただけで奴の身体が跳ねる。肩に触れただけで。細く小さな身体がとても脆く見えて、たまらず抱きしめた。

「……なんか俺変だった?」

「いや、そうじゃない」

もう一度唇を合わせる。さっきとは違う。お互いに唇を寄せ合った。

舌を入れる。さっきとは違う。お互いに舌を絡め合った。

唇を離すと、唾液が名残惜しそうに繋がっていた。

「俺の……触っていいよ」

「ん」

頭がどうにかなりそうだった。ダチとこんなことをしている。もうダチじゃないのだろうか。そんな後悔とも言えるナニかがオレの身体を熱くした。

「ぅんっ」

「痛いか?」

「だいじょぶ」

既にオレは準備万端だった。こいつも徐々に準備が出来てきている。あとは限界を迎えるだけだった。

「あの……さ」

「どうした?」

「挿れる?」

限界だった。

オレは考えるのをやめた。悩むのをやめた。目の前のこいつだけを見ることにした。見ると目が合って、目が逸れて、オレの意識はこいつに全部持っていかれた。

ベッドのスプリングが鳴く。どこか遠くで鳴っているような気がしたその音は、もう一度重ねた唇に塞がれて聞こえなくなった。

「んぁっ」

重ねた隙間から声が漏れる。普段より1メートル近い声に心臓が揺さぶられる。肌と肌の距離はゼロになって、熱で揺らぐ視界と一緒に溶け合った。

「俺の……準備、出来てるから」

早く、と続くより早くオレは股を開かせた。開いて、足首を掴んで、押し上げる。奴の柔らかい身体は無抵抗に動いて、オレを受け入れる形になった。

「……痛かったら」

「いいよ」

二人の距離はマイナスになった。

頭が熱い。股はそれより熱い。水音がするのに、火よりも熱い。

「んぐっ!」

「あ……痛かったか!?」

冷や水が叩きつけられた感覚で我に返る。やや歯を食い縛ったように見えるダチの顔がはっきり見えた。

「ん、いや、あんまり痛くはなくて……その……圧迫感? がすごいっていうか」

「苦しいか?」

「ううん……あの……おっきいね……って」

また頭が煮え上がった。叩きつけられた冷や水もとうに熱湯になって、オレの頭を湯掻く。

心配をかけまいとだろうか、はにかんだ顔を歪めたくて、話す声を歪めたくて、狂いそうだ。

「じゃあ、動くからな」

「ん」

ず、ず、ず、とシーツが音を立てる。腰が動くたび、オレの脳内に火花が散る。

「んっ、うっ、あっ」

オレの腰に合わせてこいつの肩が動く。肩が動くたび、声が絞り出される。

聞こえないはずの粘膜が擦れる音が聞こえる。ずるっ、ぐじゅ、ずるっと脳内に響く。

「悪いっ……もう……出る……」

熱いものがこみ上げる。熱すぎてもうとっくに焼き切れたと思っていたのに、まだこんな熱があったのかと思わせる。息が詰まる。腰が震える。視界が白く染まる。

「だして」

記憶が飛んだ。

——————

「悪かった」

「なにが?」

罪悪感に打ちひしがれるオレをよそにこいつは首を傾げている。そういう奴だった気がする。

「いやその……無理やりだったし」

さっさと出しちまったし、とは言わないでおいた。オレにもプライドはある。

「俺は……悪くないって思ったよ」

「何が?」

今度はオレが尋ねる番だった。

「その……シコられるの」

「これはシコったって言うのか?」

「似たようなもんでしょ」

最中とは違うはにかみにオレは目を奪われた。

「ま、うん……その…………また俺で“シコり”たくなったら言ってよ」

「ああ、うん……そうだな」

何かが目覚めた気がした。

イラストは無いぞ。誰か描け。

俺もやったんだからさ

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