俺とシュライグさんがひたすらすれ違うだけ
届かぬ愛を叫び続けた哀れな主人への同情か、居場所を失うことへの恐怖か、はたまた純粋な愛情なのか。
愛しい愛しい俺の相棒。出会った時から、彼の心が分かったことは無い。
…この瞬間を除いては。
怒気を孕んだ瞳で俺を見つめながら、「またか」だの「どうして」だの責めるような呆れているような言葉を投げかけてくるシュライグさん。
相棒である彼をほっぽり出して、他のデッキばかりを使う俺に対して怒りをぶつけてくるこの瞬間だけ、彼は感情を剥き出しにしてくれる。
普段からこれくらい喋ってくれれば良いのになぁと内心で嘯いて、いつものように「すまない」だの「もうしない」だのと明らかに心の籠もっていない返事を繰り返せば、いつものように彼は黙って。
「マスター。…真面目に聞いてるのか?」
「ああ。」
「…そうか。」
ややあって重苦しく口を開いた彼の言葉さえ気の無い返事で受け流し、諦めたような瞳を見つめ返す。…こんなことをしていればいずれ本当に嫌われるのではなかろうかと気まずい静寂の中でぼんやりと思考を巡らせていれば、
彼はいつものようにため息をついて、
力いっぱい抱き締めてくれた。
骨が軋むような気さえするほどの、こちらのことを一切考えていないような、ただ彼自身の執着心を満たすためだけの行為。無口な彼の唯一の愛のしるし。
やっと、やっと与えられた彼の愛に意識が蕩けて、脳が痺れて、何も考えられなくなって。
だから。
どうして分かってくれないんだと、絞り出すように呟いた彼の声は俺には届かなかった。