信じられない噂と信じたい人

信じられない噂と信じたい人

ここだけゾロがルナーリア族Part2の145

※閲覧注意

※【ここだけゾロがルナーリア族】のスレより

※ゾローリアの更にIFネタ

※ファンタジスタした幼少ゾロがキングに拾われ百獣海賊団所属√

※幼少ゾロはくいなと約束する前

※くいな生存&麦わらの一味√

※CPはゾロ×日和

※IFネタの派生⇒百獣√

※キャラエミュが微妙

※文才なしの駄文

※捏造設定あり

※それでも良い方のみ、お読み下さい














「将軍様が百獣海賊団のカイドウ様に鈴後の土地と民を渡したってよ」

「そのカイドウ様は大看板の一人に鈴後を贈ったとか」

「なんでも就任祝いだそうだぜ」

「そりゃあ、あれか?キング様の養い子でワイルド様とかいう」

「おう、そうだ」

「なんで、また…」

「幾人もの侍達も、そのワイルド様に付き従っているらしい」

「本当かよ」


そんな信じられない噂が聞こえてくる。

最初は数人だったのに、数日経つと半数以上の人達が口にしていた。

「ねぇ…会ってみたいって言ったら、反対する?」

7年支えてくれている彼に、声をかける。

本当は辞めた方が良いのは知っているけど、噂を確認したい。

「……今夜…そのワイルドという男が、部下の慰労の為にと遊廓を貸切にしております」

彼は肯定も否定もせずに、今夜この場所に噂の男が来る事を教えてくれた。

「じゃあ」

それに彼を見れば、彼は1つ頷き言葉を続ける。

「努々、警戒を怠りません様に」




「今宵はおれの奢りだ。羽目を外し過ぎなければ、何も言わん」

大広間で黒いフード付きのマントとフェイスベールで顔を隠した男が、男に付き従う侍達に声をかける。

「「「御意!ありがとうございます!!」」」

一糸乱れぬ返答に男は…百獣海賊団の大看板たる“戦災”のワイルドは鷹揚に頷き、器用にフェイスベールの向こう側で手元の盃を傾ける。

「…随分と慕われているで、ありんすね」

“戦災”…戦乱による被害などという災害を異名として背負っている男にしては、穏やかで静かな気配に飲まれそうになるが、問いかける。

「ん?あぁ…あいつらは、おれの部下であり同胞だからな」

問いかけに苛立つ事も無く、逆に私という花魁が隣にいる事も気にかけずに、“戦災”のワイルドは答えた。

「同胞…で、ありんすか?」

部下はわかるけれど、同胞?

「ワノ国の血筋の、侍だ」

お酒を飲む速さは変わる事がなかったが、話は続けてくれるらしい。

でも…可笑しい事をいう男ね。

“戦災”のワイルドといえば、外つ国から“火災”のキングが拾って来たと聞いているけど…。

「…ワイルド様も、この国の血筋であると?外つ国の方かと思っていたでありんすが」

その疑問を口にする。

この男は、なんて答えるのかしら。

「外つ国で8つまで育ったのは確かだ。養父に保護されてワノ国に帰って来たからな…おれの父方の祖母が、ワノ国の生まれだ」

酒の肴には手をつけずに、ただ酒を飲む。

フェイスベールで見えにくいけれど、酔っている様には見えない。

「…その様な事を、あちきに話して良いので?」

空いた盃に酒を注ぎつつ、問う。

「なに、部下達と鈴後の民衆は知ってる事だ」

“戦災”のワイルドは、なんて事も無いように答える姿は嘘をついている様には見えなくて。

「そうで、ありんすか…ところで、その御祖母様は?」

純粋にワノ国生まれの御祖母様の事は気になった。

「ワノ国には帰れず終いだな…ワノ国に残っていた大叔父も、おれがワノ国へと帰って来る前に亡くなったらしい」

苦笑気味に答えてくれて、少し悪い事を聞いた気がした。

でも、大叔父という事は御祖母様の弟よね。

「大叔父様?」

首を傾げると、フードの下で私を見たような気がした。

「鈴後の大名・霜月牛マル」

淡々と大叔父だという者の名を出される。

それに思わず素が出てしまった。

「えっ!?」

口元を手で覆っていると、不意に謝られた。

「っと、すまん…おい、そこ!女に無理に迫んな!羽目を外し過ぎるのを許可はしてねぇぞ!!」

先程までの静かな気配は無く、上に立つ者特有の気配を出していて。

ワイルドは、酔いが回り遊女に手を出そうとした部下の侍をたしなめる。

「申し訳ありません!!こっちでも、注意致します!」

「おい、お前呑み過ぎだぞ。若殿に迷惑をかけるな…」

たしなめられた侍の周りにいた他の者が遊女から離れた場所に連れて行くのを見て、ワイルドは呆れた様に息をつく。

「…ったく。慰労だからって、侍の矜持は忘れるなよ…。それで、どこまで話したんだったか?」

思わずといった様子で愚痴をこぼしたワイルドは、私に向き直って聞いてくる。

「…大叔父様が、かつての鈴後の大名であったと」

なので聞き直す様に言葉をつむいだ。

「あぁ。だから、カイドウさんがおれに鈴後を返してくれたんだ」

ワイルドは頷くと、カイドウがどうして鈴後の土地と民衆を贈ったのかを教えてくれて。

「…そうで、ありんすか」

私は納得したように頷いてみせるしか無かった。



慰労の宴が終わり、傳ジローと部屋へと戻る。

「…さっきの話は聞いていた?」

戻ると同時に、傳ジローに問いかける。

「はい、まさか…とは、思いましたが」

私の問いかけに、僅かに口籠るような躊躇するような傳ジローで。

「…調べたの?」

もう一度、問いかけた。

「…調べさせた結果、鈴後ではフードを被っていないそうで…その」

途中まで言った後に、覚悟する様に深く呼吸をして…傳ジローは続きを話した。

「ワイルドという男は、髪色こそ違えども若かりし頃の霜月牛マル殿に瓜二つ…奴が振るう二刀の所作も、民を思い遣る姿も、だと」

信じたくないと思う様な、それでも事実として受け入れているような声音で。

困惑している…というのが、正しいのかも知れないけれど。

「そう…ねぇ、傳ジロー」

私が静かに声をかける。

「はい、日和様」

そうすると、何時もの様に傳ジローは応えてくれて。

「…彼を信じたい…反対する?」

私の本心を告げた。

「…警戒はするべきでしょう…しかし」

傳ジローは戸惑う様に目を伏せる。

そう…あのワイルドという男は、“戦災”などという異名を持つ百獣海賊団の大看板なのだから。

それでも…。

「そうよね…大看板としては、信じない…でも、信じたい人ね」

そう、私が言えば、傳ジローはなんともいえない笑みを浮かべる。

「……そうですね」




















「…盲目的におれを信じれば良い、その為の〝餌〟はやる。従っている内は丁寧に扱ってやるさ、〝侍達〟も〝鈴後〟も…カイドウさんがくれた〝おれの〟だからな」


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