『便利屋』から『調教師』へ
私は、幼い頃から『アウトロー』と言うものに憧れていた。
ハードボイルドで大人びていて、それでいて格好いい。
そんな存在に憧れていた私は、ゲヘナを飛び出し、裏社会へと飛び込んで行った。
そして、飛び込んで行った先で見た社会の闇は。
私の想像以上にどす黒く、眼を背けたくなる程残酷だった。
「・・・なんなのよ。これ」
「どうしたんだ?お嬢さん・・・あぁ、『これ』かい?・・・何でも【ゲマトリア】っていうイカれた研究者集団の所から流れて来た物らしい・・・まぁ、『失敗作』って奴だな」
「・・・『失敗作』ですって?」
「あぁ、なんかの実験に失敗した結果。精神崩壊し人間的な部分は殆どを失った。
僅かに残ったのは・・・与えられた命令に従う意思、くらいだな。まぁ、古くてポンコツな警備ロボット程度には使えるよ?これでも」
「・・・」
「・・・なぁ、『処分』するのに困ってたんだ、手を貸してくれるかい【便利屋】さんよ?」
切っ掛けは、弾薬の補充に立ちよった店の側にいた人型のナニカ────かなり汚れた包帯のような物で簀巻きにされている────を店主の依頼で、『処分』することになった事だった。
足腰の悪い店主に変わって、目立たない場所で『処分』する。
そういった内容だった。
─────でも、私は。
「・・・貴女、名前は?」
「・・・」
「・・・。・・・命令よ、貴女の名前を言いなさい」
「・・・7・・・2・・9」
「違うわ。『番号』じゃない、貴女の『本当の名前』を知りたいの」
「・・・」
「・・・ム・・ツ・・キ」
「・・・おや?また来たのかい?お嬢さん」
「ええ、また。【ゲマトリア】から『失敗作』が流れて来たのでしょう?」
「耳が速いな、そのとうりだ奥に置いてある。持っていきな」
「・・・それにしても、物好きだねぇ。『失敗作』を探し回ってるだなんて。彼女等の国でも作るつもりかい?【便利屋】さんよ?」
「貴女には関係の無い話よ、黙ってて頂戴。・・・それから─────
「【便利屋】はやめたわ、これからは私の事は【調教師『ハンドラー』】と呼びなさい」