体調不良怪銃をお見舞いする少年ペッツ
お見舞い概念可愛すぎたので、レス繋げただけみたいになっちゃった短いです
少年ペッツ完全捏造
時系列、口調迷子
配信要素ないけど一応いつもの怪銃です
シコスレなのにスケベない上にCPでごべーん!上げる場所他にねェんだ!
早朝、体を起こした瞬間ひどい頭痛に襲われてヴィトは枕へ顔を埋めた。
ぐらぐら煮える頭に身動きが取れず、酷く喉が渇くのを感じる。
「あ゛…?」
自分の体なのにうまく動かすことが出来ない。頭の中が疑問符でいっぱいになり、歪む視界に吐き気がやって来る。
何だこれ、と必死になって記憶を手繰り寄せようと足掻くが、そのまま意識がぷつりと途切れた。
「風邪ね」
シフォンが溜め息交じりに告げ、手桶で濡らしたタオルをぎゅっと絞る。
朝、起きて来ない相談役を心配して部下が部屋へと訪れ、行動不能のヴィトがベッドの上で発見された。突然のことに大混乱になりかけたところを颯爽と登場したシフォンがテキパキ指示を飛ばし、騒ぐだけの部下たちを追い出してヴィトの寝室は完全な病室と化した。
「おかみさん、面目ないレロ~…」
「ううん、昨日のペッツのせいでしょ? ごめんなさいね」
冷やされたタオルが額と目元を覆って熱を僅かに奪って行き、ヴィトは漸く昨日の記憶を取り戻した。
遊び盛りのペッツに付き合って夕方まで水鉄砲で遊んでいた。びしょびしょになりながら射撃の腕を褒められて楽しかったのを覚えている。
その後、風呂に入ろうとしたタイミングで緊急の会議が入り、適当に濡れた体を拭いて長時間頭脳労働をしてしまった。深夜を回った頃に後処理が終わって気絶するようにベッドに突っ伏した気がする。
「あ、坊ちゃんは大丈夫レロ?」
「ヴィトと一緒のお風呂がいいって駄々捏ねてたけど、風邪は引いてないわよ」
くすくす笑う声に安堵してほっと息を吐いた。風邪を自覚した瞬間、体が火照っているのを感じる。
するとシフォンの腕が伸びて布団が掛け直された。ぽんぽん、と胸元を叩かれてヴィトはふにゃりと口元を緩める。子どものように扱われても、悪い気がしないから不思議だ。
「ゆっくり寝ててね、こんな時くらい休ん…」
「びとーーーーー! びとどこーーーーーーーーー!」
和んだ瞬間、部屋の外から甲高い子供の絶叫が響いて二人で固まった。
「おー、よしよしペッツ、ヴィトはねんねしてるからパパと」
「やぁ゛ーーーーー!! びとがいいーーー! びととあしょぶのーーーー!!!」
宥めるベッジの声はペッツの悲痛な叫びにかき消される。瞬時に蔑ろにされる父親があまりにも可哀相で申し訳なさや嬉しさや複雑な気持ちがぐるぐるして、ヴィトは思わず笑ってしまった。
「ニョロロ、坊ちゃんかわいいロレロ…」
「もう、ペッツ見て来るわね」
困ったような笑みを残してシフォンが部屋を去る。「病人がいるのよ!」というお叱りの声と共に遠ざかって行くペッツとベッジの声。
しん、と静まりかえった部屋で先ほどのペッツの言葉を思い出し、ヴィトは暖かな気持ちで布団に包まりまぶたを閉じた。
頭は痛むし喉にも違和感がある。熱いのに寒気を感じて気持ち悪い。それでも、耳に残った自分を探す幼子の声だけで穏やかに眠れそうだ。
沈んでいた意識が浮上し、目を開ける。随分寝たのか少し体が軽い。
すっかりぬるくなった額のタオルを持ち上げると、不意に左手にあたたかい感触。
「……?」
頭をゆっくりと傾けると、ベッドに突っ伏しながらヴィトの左手をぎゅっと握って眠るペッツの姿があった。
「え、ちょ…坊ちゃん…」
驚きと混乱と風邪をうつしてしまっては大変だと言う危機感に思わず僅かに体を引くと、その振動でペッツの目が開く。
「ん、…びと、だいじょうぶ?」
左手はぎゅうと握ったまま、目をごしごしと擦り少年は小さく欠伸をした。目覚めてすぐに体調の心配をされて、ヴィトは健気さにぐっと胸を詰まらせた。さっきまであんなに自分を探して騒いでいたのに、今は小声でぽそぽそと様子を伺ってくれる。
「少し良くなったレロ…お見舞いに来てくれたロレロ? 坊ちゃん、ありがとう」
「…うん、入っちゃメっていわれたから、ナイショね?」
「風邪うつっちゃうレロ~」
やっぱり、とヴィトは眉を下げて握られた手を優しく握り返す。頭を撫でたくても、これ以上の接触は宜しくない。
「きっとすぐなおるよ」
「え…? なんでレロ?」
「ナイショ」
くふくふと微笑むペッツに首を傾げると、はらり、と頭の上から何かが落ちた。
ひらひら舞ってベッドに落ちたそれは小さな花。よく見るとベッドは色とりどりの小さな花に包まれて、まるでおとぎ話のお姫様だった。
「坊ちゃんお花持ってきてくれたレロ!?」
「うん」
「こんなに!?」
「うん! おみまい!」
にこにこで胸を張るペッツにヴィトは風邪以外の要因で頭が茹だって仕方がない。枕に顔を埋めて上がってしまう口角を必死に隠した。なんて、かわいい!
入ってはいけないと言われた部屋にこっそり侵入していることを叱らなければいけない、いけないのだが、今のヴィトには無理だ。
「坊ちゃん、ありがとうレロ~…嬉しいレロ~…」
抱き締めたくて仕方ないと叫ぶ腕を何とか抑え込んで、繋がれた愛しい手を撫でた。
「いっぱいねて、はやくなおしてね」
母親とそっくりな動きで布団を掛け直され、ぽむぽむ、とあやすように胸を叩かれる。
眩しいその存在に癒されてまた眠気がやって来て、ヴィトは静かにまぶたを閉じた。
小さな花たちの匂いと優しくて愛しい少年のあたたかさを感じて、きっと次に目が覚める時には元気になっているだろう、と漠然と思った。
寝息を立て始めたヴィトの唇に、ぐっと背伸びをしてペッツは自分の唇を落とした。ちゅ、とかわいらしい音を立て満足げに少年は笑う。
「びとのびょーきはもらってあげるから、はやく元気になってね」
いつもサングラスに隠れた瞼やセットされていないふわふわの髪の毛。赤くなって眠るその姿を目に焼き付けるように、ペッツは母親が探しに来るその時まで飽きずに大好きなお兄さんを見つめていた。