似たもの同士

似たもの同士


オレから見たクロエ・フォン・アインツベルンという少女は、それはもう真面目な女の子だ。それに自分の身を省みない。時に見ているこちらが苦痛を覚える程のその在り方は、良く言えば尽くすタイプ、悪く言えば自分の行動で周りがどう思うか考えていないタイプと言える。

…突っ走ってボロボロになる姿を見せられる側の気持ちにもなれ、と思ったことは何度もある。自分の価値を信じられないのか、とも。クロには「お互い様よ」と言われたりもしたが、まあ想いはちゃんと通じ合ってる……と思う。


「マスターは彼女を大切に想いすぎなんだ」


そんなエミヤの言葉は真実だ。きっと大切に想い過ぎて、正常な判断力が損なわれている。

腕の中に飛び込んできた恋人に、しっとりとした甘い声で愛を囁かれて狂わない男がいるだろうか。いや、いない。

───で、だ。そんな風に狂ってしまったら、あのハワトリアでの一件を気に病むのは当然な訳で。


「過労ですね」


ある日、クロやカーマに引きずられて訪れた医務室で、婦長にそう断言された。


「…我々もクロエに編集を頼んだ身ですから、負い目を感じる気持ちは分かります。しかしマスター、それで自分を追い込めば今度は彼女が悲しみますよ。理解できたのなら、あのような自傷行為は即刻止めなさい」


自傷行為などしているつもりはなかったが、そう見えているということはそうなのだろう。人の振り見て我が振り直せ、流石に休むことにした。


───


そんなこんなでオレは自室待機となった訳だが、クロとカーマはオレを自室に放り込むなり軽いお説教を喰らわせてきた。「人の振り見て我が振り直せ」だとかなんとか。まさか同じことを考えているとは夢にも思わなかったため、思わず吹き出してしまった。当然さらに怒られたが、その後二人を抱き枕にして寝られたので怒られた甲斐はあったと言える。

…ああ、久しぶりにちゃんと寝られそうだ。


「…というかさ。最近の二人は仲良いよね」

「え? あー、まあ? 聖杯絡みでシンパシー感じてるというか、なんというか。ねえ?」

「ええ。わたしもクロエさんも、ある意味では聖杯戦争被害者ですからねー」

「?」

Report Page