会いに行った話
※擬人化 ご都合主義時空※
※タイ→(←)エフです※
※鞍上への言及がありますがすべて妄想です※
※引退辺りの話が入るので注意※
「幸せになってほしいと言われた」
そうやって穏やかに話すかつてのライバルは言葉を思い出しているのかゆっくりと言葉を紡ぐ。
それをタイトルホルダーはどう受け取ればいいのか、迷う。あの火花を散らし競い合った日々の中のライバルとうまく重ならなかったからだ。
たまたま時間が出来た。たまたまだ、と何度も念を押す。それにエフフォーリアはわかっているのかいないのか、少し微笑んで頷いた。たったそれだけなのに調子が狂う。レース外で出会うことがあまりなかったためか、ギラギラとした瞳は鳴りを潜め穏やかに見つめている。
それに対して心はおかしくなっていくので慌ててフン!と少し子供っぽく返してしまった。それに対してやはり瞳は穏やかだった。
もう追い抜かされることはない。もう彼も追い抜かさない。それは事実だ。それがどうしようもなく、と心の中で渦巻く。
そして冒頭の言葉に戻る。それが誰の言葉かは知っている。最後まで見送り涙を流した青年の言葉だ。
その言葉の重さをエフフォーリア自身も分かっている。走り続けることだけがすべてではない。幸せは、様々だ。
だからといって、割り切れるわけじゃない。最後に見た年末の舞台の彼をタイトルホルダーは鮮明に覚えている。エフフォーリアだってそのはずだ。
ぐずぐずと心の中で言葉が暴れてはうまく吐き出せずに沈黙する。
「……だから、うんと幸せになろうと思う」
沈黙を破ったのはかつてのライバルだった。少し不器用な笑みを浮かべてタイトルホルダーの手に触れる。身長はエフフォーリアの方が高いために見上げる形になってタイトルホルダーが顔を上げた。
寂しさはきっとお互いの瞳に宿っているだろう。