仲良くなりたいだけ(下心100%)

仲良くなりたいだけ(下心100%)



2018年、9月

平和に終わるかと思われた京都姉妹校交流会は特級呪霊による襲撃で有耶無耶になって終わってしまい、結局野球で決着をつける羽目になった。

それもあり、大山藍は仲良くなりたかった京都校の女子とまともに話せず交流会は終わりを迎えてしまった。

それというのも、藍は特級呪霊との戦闘で虎杖・東堂と共闘した後自身の極ノ番で相手の術式を奪って見事に呪霊を祓った。

その前にも戦うために同級生に極ノ番を打ったため、呪力を使い果たし戦闘後はベッドから立ち上がれず、野球に参戦できないほど弱った。

一日休みを挟んだものの体は回復せず泣く泣く野球は観戦・応援に回っていた。


閑話休題


大山藍は一に美少女ニに美少女、三と四がなく五に美少女と言えるほどの美少女好きである。

まだ齢一桁しかない幼少期に年上の従姉妹と実姉の手により性癖を粉々に砕かれ見事に堕ちた。

それもあり、藍は美少女を見つけるといつもの消極的な性格やコミュ障はどこに行ったのかと思うほど積極的になり、饒舌になる。

それを同級生は最初こそ止めたりドン引きしていたが慣れというのは恐ろしいもので初対面の女子にナンパする藍を見かけても相手が露骨に嫌がっていない時以外はそれほど大袈裟に反応することも亡くなっていた。

そのため、藍はほとんど歯止めが効かなくなっていた。美少女が絡むとTPOと言う言葉は藍の頭の中から消し去られ、ナンパすら。

交流会直前に真希の双子の妹である真依が来た時も例に漏れずナンパしていた。

交流会本番では愛用のカメラを持参し術式で空を飛ぶ西宮を下から盗撮し、京都校に急襲を仕掛けた時は短刀を片手に器用に三輪を盗撮した。

趣味である写真撮影が最悪の環境で活かされていた。そもそも藍が撮影するものは美少女しかない。

そんなわけでとにかく美少女が好きな藍は京都校の真依・西宮・三輪とも仲良くなりたかったが特級の襲撃や藍の気絶によりそれは叶わなかった。

しかし10月の上旬、藍に一つの任務が舞い降りた。

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藍「あれ、この任務って……」


藍は二級術師。2年の中では2番目に等級が高く、身体能力も高い方ではあるため実力はそれなりに高い。

故に藍は2年の中で1番任務の数が多い。そのため高専にいることはほとんどなく、いたとしてもそのすぐ後には任務が入る、というような生活を送っていた。

高専にいるのは本当に珍しく休みの時か夜寝る時の2択しかなかった。

出張なんかも珍しくはなく、時には飛行機に乗ったりもしていた。


補助監督から渡された任務の詳細が書かれた書類には勿論任務地も書かれていた。そこにはしっかり、「京都」と書かれていた。

そして偶然にもその任務地は京都校に近い場所にあった。

それを見た藍は思わずガッツポーズをする。前述の通り、美少女が何よりも好きである。藍は仲良くなりたかった京都校の女子たちに会えるチャンスなんじゃないかと思考した。


藍「最っ高ですよもう……!真依さんたちに会いに行きましょう!確かコスメとか好きでしたよね、あの人たちは。甘いものも持っていきましょうか。他の男子は別にいいですし…あ、葵くんには余った高田ちゃんのグッズ持っていきましょうかね。とりあえず真依さんたちが好きそうなお土産買って行って、あわよくば連絡先交換……うふふ、今から楽しみです!」


1人誰もいない廊下で喜びながら独り言を漏らす藍。

事情を知らない人間はドン引きするだろうが藍をよく知る人間はまたかと呆れるだけだろう。

それほどまでに、藍は浮かれていた。もう一つ浮かれた藍を表す言葉があれば有頂天とも言うのだろう。


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本当は半日かかってもよさそうな任務を藍はものの3時間程で終わらせた。

それも全て真依たちに会うため。藍は任務地に向かう前に補助監督に無理を行って大量のお土産を購入した。

メジャーなものからマイナーなものまでとにかく藍は真依たちが好きそうなお土産を購入した。自腹で。

お土産はそれなりの値段するため3個買うだけでも苦い顔をするが藍にとってはそうではなかった。藍曰く、

藍「これくらい安いものですよ!美少女のためですし、私はお金あんまり使わないので貯まってますし!」

…だそう。

そして藍はお土産を手に京都校を訪れた。元々歌姫に五条を通じて訪れることを伝えていたため、京都校には難なく通してもらえた。

そして歌姫はあまりのお土産の多さに驚愕した。藍とはそれなりに長い関係だったがさすがにこれには驚いていた。


歌姫「……すごい量ね。これ全部お土産?」

藍「はい!みなさんに。歌姫先生もぜひ食べてください!あ、後よさそうなコスメも買ってきたんですけどいります?」 

歌姫「へ?」


藍はそう言ってコスメを取り出す。


歌姫「あら、ほんとにいい奴じゃない。しかも最新の。いいの?」

藍「勿論ですよ〜歌姫先生にはいつでも美しくいてほしいですから!」

歌姫「ったく〜あんたって子は。ほんと女に対しては褒め上手なんだから。でもありがとね。大事に使わせてもらうわ」

藍「はい!喜んでもらえてよかったです!」


笑顔でそう答える藍。そして藍は1番大事なことを歌姫に聞いた。


藍「そういえば、真依さんたちは?」

歌姫「真依?真依なら西宮たちと3人で任務よ。もうすぐで帰ってくるんじゃない?」

藍「ほんとですか?ありがとうございます!」

歌姫「多分30分もかかんないと思うわよ。とりあえず玄関で待ってたら?要冷蔵のものだけ持ってくから」

藍「ありがとうございます。じゃあ、行ってきますね!」


藍は曇りなき満面の笑みで答えるとすぐさま後ろを振り向いて玄関まで走り去って行った。


歌姫「ったく…いい子ではあるし、強いんだけどね〜変態なのがどうも…」


玄関の近くで待機していた藍はまだかまだかと首を長くして待っていた。

スマホをいじりながら待っていると、予想より早めの10分弱で帰ってきた。

 

真依「あっ、アンタ…」

藍「!!真依さん!」

西宮「あれ、東京校の」

藍「覚えててくれてたんですか!お久しぶりです!東京校2年、二級術師の大山藍です!」

三輪「初めまして、ですかね?京都校2年の三輪霞です!」

藍「三輪さん!霞…いい名前ですね〜!」

三輪「そうですか?ありがとうございます…!」

西宮「3年の西宮桃。よろしくね藍ちゃん」

藍「西宮さん!京都校のみなさんは可愛らしい名前が多いですね〜!」

真依「というか、アンタ東京でしょ?何でここにいるのよ」

西宮「確かに。もしかして私たちに会いに来たの?」

藍「はい!!みなさんと是非仲良くなりたくて!!」

三輪「わっ、ほんとですか?私も仲良くなりたいです」

藍「!!ありがとうございます!そういえば、みんなのためにお土産色々買ってきたんですよ。要冷蔵の物は歌姫先生が入れておいてくれてるのでそれは後で確認してみてください!コスメとか美容品も!」

真依「そうなの?何だ、いい子じゃない」

西宮「えっ、やったぁ!呪霊のせいで東京観光ほとんどできなかったからコスメとかも買えなかったんだよね〜何買ったの?」

藍「見てからのお楽しみですよ〜さっ、さ!」


藍は三輪と真依の手を引きながらお土産を置いていた部屋へ案内する。


三輪「うわー!ほんとにいっぱい…これほんとにいいんですか!?」

藍「はい!あんまり望みませんけど(小声)葵くんたちとも分け合ってください!」

真依「コスメも限定色とか多いわね」

西宮「うわーこの色欲しかった奴ー!東京限定の!ありがと藍ちゃーん!」

藍「いえいえ〜」


こんなにも女子からお礼を言われ、ちやほやされるという体験は幸せ以上の何者でもなかった。


藍「あのぉ〜連絡先とかも交換しません?もし真依さんたちがこっちに来た時とか案内しますよ!欲しいコスメとか服とかあったら任務のついでに来ますし」

真依「そうね。私真希とは交換したくないし。藍ならいいんじゃないかしら」

西宮「私も〜藍ちゃんも京都のお土産とか欲しかったらあげるよ」

藍「ほんとですか!?ありがとうございます!」

三輪「わ、私も喜んで!」


そう言いながらスマホを差し出す3人に、藍はウキウキで連絡先を交換する。


藍「えへへ、ありがとうございます……!」


スマホを見ながらニコニコしながら嬉しそうに礼を述べる藍。その姿に3人は思わずキュンとした。

藍はそれなりに顔も整っているし背も小さい部類に入る。4人の中ではダントツで低かった。赤髪のサイドテールがよく似合い、かぶっている帽子やセーラー服も様になっていた。

一言で言えば藍も可愛いのだ。いつも息をするように美少女を褒めるが真希や野薔薇も藍を可愛いと認めていた。

それを今回京都校の女子3人は分からされ、認めざるを得なかった。


藍「じゃあ…改めてありがとうございます!これからも呪術師の卵同士仲良くしてくださいね!」

真依「えぇ、そっちもね」

西宮「また遊びに来てね藍ちゃん」

三輪「楽しかったです!帰っても連絡たくさんしましょうね!」

藍「みなさん…ありがとうございます!じゃあ、お元気で!ではまた!」


笑顔で大きく手を振りながら3人と別れる藍。3人も手を振り返しながら藍の背中を見つめていた。


真依「案外悪い子じゃなかったし、結構可愛い子じゃない」

西宮「分かる。肌も綺麗だったし。私より小ちゃい」

三輪「本当に…小動物みたいですよね」


3人の目には仲良くなれることを素直に喜び、無邪気に笑う藍の姿が小動物のように可愛らしく見えたのだろう。

しかし藍にとって美少女は仲良くなる対象ではなく、捕食()対象である。今回仲良くなった3人もその可能性が限りなく高いのだ。それを3人はまだ知らない。

3人はただ友達になりたいだけかと思っていたが藍は純度100%の下心で京都校へ遊びに来ていた。

大山藍とはそう言う人間である。

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