エデン条約ベアトリーチェ戦

エデン条約ベアトリーチェ戦



 ミカとゴジュラスギガの切り開いてくれた道を進み、先生とアリウススクワッド、彼女らの駆るゾイド達は遂にベアトリーチェを追い詰め、儀式を食い止める目前にまでたどり着く
『あと少しで儀式を阻止しアツコを救い出せる』
そう思い希望を持つ先生とアリウススクワッド

……だったが


「シュトゥルムスパイナー、やりなさい」


 パチンッと指を鳴らすベアトリーチェの合図と共に彼女のゾイド『シュトゥルムスパイナー』の背びれが展開し空間を歪ませていく


「……どうしたハイドラ、ファングタイガー!? ……ぐぅっ!?」

「ス、スナイプテラ……うわぁっ!?」

「ドライパンサー……!? 」

 "これは!?"


 突如としてアリウススクワッドのゾイドはコックピットに乗る彼女達を無理矢理放り出し、先生と彼女達へ武器を向ける
シュトゥルムスパイナー……ダークスパイナーにシュトゥルムユニットを装備した強化形態、その戦闘能力はバーサークフューラーを真っ向から倒すことすら可能なほどという、更には儀式の影響かゾイドコアの出力が異常なほど跳ね上がっている
しかし、かのゾイドの本領は背部のジャミングブレードから繰り出される空間を歪ませるほどの超高出力の電磁波『ジャミングウェーブ』による電子戦にある
それによる操縦系統への干渉は一部の例外や徹底した絶縁処理を施していなければ防ぐことは叶わないものだ


「まさか私がこのような事態を想定していなかったとでも?」


 ──アリウス分校のゾイドの殆どにはベアトリーチェの指示によりゾイドオペレートバイザー(Z-Oバイザー)と呼ばれるゾイドの意思を抑制し兵器として制御しやすく装置が付けられている

 それは表向きにはゾイドを御しやすくする為と伝えられていたが、本来の目的はもしもの時にベアトリーチェのシュトゥルムスパイナーから干渉しやすくする為の装置というものだった


「ふふふっ、アーッハッハッハ! 形勢逆転ですね? シャーレの先生」


 制御を奪った四機のゾイドを従えたベアトリーチェの勝ち誇ったような嗤い声が響く


「さぁ……私へ牙を剥いた貴女達には良いものを見せてあげましょう……ジェノハイドラ、荷電粒子砲でまずはファングタイガーを消しなさい」

「なっ!? ハイドラよせっ……」


 サオリの制止の叫び声は操られたジェノハイドラの拡散荷電粒子砲の轟音にかき消され、ファングタイガーは放たれた閃光へと呑み込まれてしまう


「次はスナイプテラ、ドライパンサー、ジェノハイドラを攻撃しなさい……あら、荷電粒子砲を直撃してまだ生きいるんです?」


 操ったゾイドを同士討ちさせる卑劣な命令を下すベアトリーチェの視線の先には、塗装が焼け落ちて元々の装甲色が剥き出しになり、サオリにより取り付けてもらっていた追加武装も焼失し今にも機能停止しそうになりながらも未だ立つファングタイガーだった


「ジェノハイドラ……ファングタイガー……」

"ベアトリーチェ……!!"


 あまりに凄惨な光景に思わず悲痛な言葉が溢れるサオリや絶句するアリウススクワッド達、外道な行いに怒りの籠もった視線でベアトリーチェを睨む先生
元凶たる彼女はそれら皆を嘲笑しながらゆっくりと


「いいでしょう、私が直々にトドメを刺してあげます」


 シュトゥルムスパイナーを自ら動かし、虫の息のファングタイガーの息の根を確実に止めるべく歩みを進めていく


 ──ジャミングウェーブの効かない『一部の例外』

それはゴジュラス・ジ・オーガのような搭乗者とゾイドの精神リンクのみで動くような、いわば操縦系統や制御システムが存在しないゾイドのこと、そしてファングタイガーは

『操縦系統そのものが存在しない』

ゾイドの一種。本来は首元にある鞍に騎乗しゾイドと絆を結んで心を合わせて動かす操縦方法、原始的な精神リンク方式と言ってもいいだろう

 だがサオリの駆るファングタイガーはZ-Oバイザーとさらには操縦系統として簡易的なコックピットを取り付けたファングタイガー改、ゆえにジャミングウェーブから逃れることは出来ない


"はずだった"


 それらの後付けされたものは全てジェノハイドラの拡散荷電粒子砲で消滅、ファングタイガーにはもう操縦系統と呼べるものは何も付いていない

 ──それはすなわちファングタイガーがジャミングウェーブの影響下から抜け出したことを意味する

 ベアトリーチェからすればある種予想外の事態だろう、だが勝利と儀式の成功を確信し驕り高ぶる彼女はそのことに気づくことはない



 シュトゥルムスパイナーの凶刃が振り下ろされる直前、呪縛から解き放たれた虎の瞳に映ったのは

嘲笑う元凶

仲間を撃たされ、仲間に攻撃され悲痛な咆哮を上げる友

そして……苦しむ大切な相棒の姿だった


「何ですって!?」

「えっ……」

 仲間を操られた怒り、相棒を苦しめられ続けた怒り、様々な怒り全てを込めた凄まじい咆哮と共に、本能を極限まで解放してファングタイガーは再起する


「死にかけの虎が吠えたところで……今トドメを刺して……なっ!?」


 ベアトリーチェがシュトゥルムスパイナーを動かすよりも速く動き出したファングタイガーのツインドファングにより、ジャミングブレードは一撃の元に破壊される
更に本能を解放したファングタイガーはその小さい体躯と速度を活かして撹乱するかのようにシュトゥルムスパイナーを攻め立てていく


「たかが死にぞこない一機に……!!」


油断と慢心、それにより手痛いしっぺ返しを食らわせられたベアトリーチェはファングタイガーを捉えトドメを刺そうと躍起になり始める
周囲への意識が疎かになるほどに……


(今なら……!)


 いくら本能を解放しているファングタイガーといえど瀕死とも言えるその体では単騎でこのままシュトゥルムスパイナーを相手取り続けることは不可能だろう

そう"単騎"であれば


「ハイドラ、荷電粒子砲最大出力」


 ファングタイガーが撹乱して稼いだ時間を使い、制御システムを再起動されジャミングウェーブから開放されたジェノハイドラの荷電粒子砲が、操られて仲間を襲った閃光が今度は仲間と共に戦い元凶を倒す為に放たれる


「スナイプテラ、兵器解放!」

「ドライパンサー……兵器解放」


 同じくジャミングウェーブから解放されたヒヨリのスナイプテラ、ミサキのドライパンサーもそれに続いて攻撃を加えていく


「貴様らァッ!!!」


 ──アリウススクワッドの卓越した連携による猛攻、だがそれでもベアトリーチェとシュトゥルムスパイナーを下すまでには至らない
スナイプテラとドライパンサーでは兵器解放しても火力が足りず、ファングタイガーは本能を極限解放して無理矢理動いているようなもの、このままでは間もなく限界を迎え自壊しかねないことは誰の目にも明らかだった
ジェノハイドラも損傷が激しい、荷電粒子砲も最大出力ではもう撃つことは不可能だろう


「貴様ら……!貴様ら如きに……!」


「ぐぅっ…!まだだっ!」

「うぅぅ……」

「くっ…まだ戦える」


 限界の近いファングタイガーにジェノハイドラ、精神的疲労、肉体的疲労が溜まるアリウススクワッドはベアトリーチェとシュトゥルムスパイナーに徐々に押されていく
けれどそれでもアリウススクワッドは仲間を助けるために勝利を信じて諦めず戦い続ける

 ゾイドも皆、限界を迎えようとしていても相棒達の思いに応えるかのように死力を尽くしていた


 そして仲間を、相棒を助けたいというその思いは、先程のファングタイガーの怒りの咆哮、アリウススクワッドの奮戦する熱意、思いに刺激され目覚めたアリウススクワッド最後のゾイド達も同じだった


アニメ版準拠の超大型版

「バカな……オーガ……オメガレックス……!?」

「姫のゾイド……!?」

 至聖所の壁を破り地を砕き、アリウススクワッド最後にして最強のゾイド達が咆哮を響かせながら現われる
囚われ、儀式の贄とされかかっている秤アツコのゾイドであるオメガレックスとゴジュラス・ジ・オーガが


「……形勢逆転だ、マダム」


 

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