仮面ライダーギーツ×ウマ娘:SS
黎明1:回想‐リガドΩとの決戦膝をつきながらも気丈にスエルを睨み続ける3人。
景和「そうだろう?…英寿」
???『ああ…そうだな。』
聞こえるはずのない、男の声。
道長&景和&祢音「「「…?」」」
3人は僅かに目を見開いて声の聞こえた方を見ようとする。
だが、その声に気を取られスエルがサイドバックルにマグナムレイズバックルを生成するのに気づかなかった。
『MAGNUM INFINITY』
…もう、止めようがない。
スエル「…ならば奴と同じく、銃殺刑に処すとしよう。」
重い銃撃音が立て続けに鳴り響き、放たれ”幕”と化した深紅の光弾達が三人に迫る。
「「「「「「「「トレーナー(さん)!!!」」」」」」」」
『『『『『『『『LASER CHARGE』』』』』』』』
間一髪間に滑り着こんだ8人の少女達。その銃から放たれた蒼穹の光線は何重にも重なった障壁を成し、その身を砕きながらも深紅の光弾達を阻む。
砕かれた障壁を掻い潜った一部の光弾は、3人を庇った少女たちのアバターを情け容赦なくシールドごと砕き、換装解除に追い込む。
ダメージによる換装解除の副作用である痺れと、アバターで受けたダメージの余波で悲鳴と共にその場に倒れ込む8人。
地面に這いつくばう少女たちにスエルは吐き捨て、再びレイズバックルを生成しようと手を前へかざす。
スエル「…愚かな、わざわざ死に急ぐか。ならば望みどおりn」
が、その言葉は続かなかった。スエルのその身を、どこからか颯爽と現れた赤い影が突き飛ばしたのだ。
スエル「っ!なんだ!?」
聞き慣れた狐の鳴き声と共に、さらに蹴りを見舞った赤い影…狐を模したブーストライカーは、スエルに吐き捨て返すように鳴き声をあげると、どこかへと走って行く。
このような状況なら、走っていった先に自然と視線が引き寄せられるのが人間、そしてウマ娘というもので。
11人が視線を向けたその先には、こちらへ歩いてくる人影があった。そのシルエットと、その影の中光る複眼の色と形。その正体にこの場に居る者が思い当たらない筈もない。
キタサン「あっ、あ…あぁ…」
オペラオー「…ふ…フフッ」
両の眼に涙を浮かべる二人。キタサンに至っては浮かべるどころか頬を涙がつたっている。
6人のウマ娘「「「「「「浮世さ(ぁ)ん!」」」」」」
道長&景和&祢音「「「英寿!!」」」
名を呼ぶ9人と動揺するスエル。
スエル「浮世…英寿」
ギーツ「それぞれの担当サブサポーターまで勢揃いか…運がいいなお前ら、俺が来たからにはお前らの運勢は…」
英寿改めギーツは右手を見せて指を鳴らす。
ギーツ「大吉だ。」
スエル「何故だ…何故ここに居る…?貴様は死んだ筈!」
スエルは動揺しながらも難なく立ち上がりギーツを見据え、問う。
その問いに、見せた左手で狐の形を作り答える。
ギーツ「愚問だな、俺は狐だぜ?」
ギーツの足に軽く頬ずりした狐のブーストライカーはひと跳ねでバイクに変形し、そのヘッドライトの光でリガドΩの金の瞳を眩ませる。
ブーストライカーに跨ったギーツは答えを続け、
ギーツ「化けて出てきた…って所だ。」
そのままアクセルを一気にかけスエルとの距離を詰める。
『EXPUNGE』
スエルはシリウスカードを読み込ませ、リガドΩの体中にはまった『眼』から光線を放って迎え撃つが、眩んだ眼で反応が遅れる。
そのままのペースでまばらに放たれる光線を容易に掻い潜り、飛び上がったギーツはそのまま赤い車体の側面を向けて右手の白い拳銃から弾丸を放つ。
その弾丸でリガドΩの胸部にはまった目を撃ち抜き、怯みを与え小さな隙を生み出すと、その隙を逃さずそのまま赤い車体をスピンさせて後輪でスエルを蹴り飛ばすと白い拳銃で更なる追撃を見舞う。
スエルが再び光線を放つが今度は赤い車体のエンジンが排気口を伝って火を噴き急加速と急ターンで回避、そのままカーブを描いて車体でタックルを喰らわせる。
だがスエルもタックルで接触したチャンスを逃さずに右拳の眼から放った光線でギーツのドライバーにはまったブーストバックルを貫き、ギーツが振り落とされたブーストライカーを虚空へと追い出す。
ギーツ「…ごめんな、コンちゃん。」
ギーツは受け身をとって低くなった姿勢のまま、消えゆくブーストライカーをチラリとみて小さくつぶやくと、腰のドライバーに左手をかざし、赤いバックルがはまっていた部分から白と赤のバックルを”生やした”。
『SET』
そしてバックルから伸びた白いハンドルを間髪入れず即座に捻る。
3つの排気口から放たれた尾にも似た赤黒い炎は立ち上がったギーツの両脚へと巻き付き、マフラーに狐の尾を模した意匠が施された白いブーストの装甲を成した。
『Get ready for "Boost" !and『 "Magnum"』!!』
『Ready…『Fight!』!!』
『For…Desire!』
———「戦え。己が願いの為に。」
そのドライバーの宣言は、『最早二度と運営の手に捕まる気はない』という、英寿の意思の表れでもあったのだろう。
跳んでくるリガドΩにそのまま白い拳銃を片手に歩み寄ると、マフラーから噴き出る赤黒い炎で加速した蹴りや裏拳、弾きといった格闘に隙を見たゼロ距離射撃を織り交ぜた攻防を繰り広げ、作り出した一瞬の怯みを逃さず
『BOOST STRIKE』
3本の尾じみた赤黒い炎を纏わせた空中回し蹴りでリガドΩを蹴り飛ばした。
まともに喰らったスエルは少し後ずさりながらも踏みとどまると、
スエル「『化けて…出た』だと…?人間のまま創世の力を振り回す貴様では、死から自力で蘇るなど出来る筈がない!」
ギーツに指を指し怒鳴り散らすように問う。
スエル「答えろ!一体…貴様は何なのだ!」
それに対しギーツは調子を崩さず、それでいて力強く答える。
ギーツ「ああ…確かに俺の肉体は滅んださ。」
左手を胸に当て、言葉を続けた。
ギーツ「今の俺は…言わば、”神様”だ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
…3人と8人は互いに目を見合わせ、
11人「神様(ぁ~)!?」
思わず叫んだ。…それはそうだろう。白狐、あんたはどこかの教祖か。
ギーツ「”神”と言えば語弊はあるかもだが、これまで何度も死からの転生を
重ねてきた。今更生物の枠を飛び越えたって何もおかしくはないだろ?」
突拍子もない、唐突な"神"宣言を自ら補足するように平然と無法じみた論理を唱え、言葉を続ける。
ギーツ「それに、母さんと約束したあの時、俺は覚悟を決めた…
『誰もが幸せになれる世界を作る』と。
『その為なら、神にでも何にでもなってやる』ってな。」
決意を示したギーツは白い拳銃の銃口をスエルに向けたまま振り向き、背後の11人へ問う。
ギーツ「…お前達の願いは何だ?」
景和、祢音、道長の三人はそれぞれの担当にそのまま伏せているように指示すると、立ち上がり、目を見て頷く。
祢音「言わなくても、分かるでしょ?」
景和「…君と一緒さ。」
道長「……今になって、わざわざ言わせんなよ」
その回答に、マスク越しに微笑むような声を漏らすギーツ。
ギーツ「…そうだな。その願い、叶えてやるよ。」
彼が左手を3人に向けかざすと、もはや何度も聞いてきた荘厳な鐘の音と共に、
『『『DESIRE DRIVER』』』
3人の腰にIDコア付きのドライバーが現れる。
スエル「!?…馬鹿な…」
ギーツ「…叶えよう。俺たちの願いを!」
景和「…ああ。」
景和の返答を合図に、3人は同時にバックルを、
『『『SET』』』
ドライバーに装填。担当達が息を吞む中、それぞれに構えをとり…
祢音「…変身!」 景和「…変身!」 道長「…変身!」
響いたのはスクラッチ音に、旋風音、そして破砕音。
『BEAT』 『NINJA』 『ZOMBIE』
それぞれかつての纏い慣れた姿を纏い、握り慣れた得物を構えた。
ギーツを含めた4人の複眼がかすかに光る。
『『『READY…FIGHT!』』』
ドライバーから鳴り響く闘いの合図。だが、これは踊らされた闘いではない。
『『『FOR…DESIRE!』』』
己が願いを掴むため、未来の悪意から世界を解放する闘いだ。
スエル「お前達など…存在してはならない…!!!」
『EXPUNGE』
呪詛と憤怒の籠った声と共にシリウスカードを読み込ませるスエルの予備動作を逃さず、ギーツがマグナムバックルを銃身を伸ばした白い長銃に装填。シリンダーを回す。
ギーツ「タアッ!」
『MAGNUM TACTCAL BLAST』
放たれた大きな光弾でリガドΩの光線を打ち消して爆炎で目くらましをかけるギーツ。
反動で少しのけぞるギーツに代わってタイクーン、ナーゴ、バッファの3人が気合の声と共にスエルへと走り出す。
挟撃、リボルブオンによる回避と位置ずらしからのストライクキック、キックを押し返された反動で再びリボルブオン、他人の手によるポイズンチャージ、共に放たれるタクティカル攻撃。
これまでデザイアグランプリ、ジャマトグランプリ、デザイアロワイアル、数々のゲームを戦い抜いた経験を全てつぎ込んだ連携を見せながらリガドΩと互角に渡り合う3人。
…当然ながらそれを眺めているだけで済ます担当達ではなかった。
弾幕から3人を庇った分の衝撃がいつの間にか消え去っており、今自分の動きを妨げるものがダメージによる換装解除の副作用である”手足の痺れ”しかなくなっていることに気付いたのだ。
キタサン「あっ…」
オペラオー「あのときか…!」
先ほど3人にドライバーを生成したときの荘厳な鐘の音を思い出し、ギーツが8人の受けたダメージもついでに消去していたと気づくのに一瞬もかからなかったし、手足の痺れまで消去できなかったのか、それとも消去するほどの時間はかけられなかったのか。どちらにしても、『英寿は私たちを信じている。』そう考えるのも不思議ではなかった。
二人は痺れる体に鞭打つように無理やりに立ち上がり、キタサンはダイヤへ、オペラオーはドトウへ手を差し伸べ、共に頷き、相手を立たせる。トップロードはシュヴァルに肩を貸し、クラウンはベガに肩を貸して共に立ち上がり、互いに見合わせて頷いた。
そしてもう一度、自分のレイズライザーカードをカードリッジに装填してそれぞれ自分の腰にかざす。
『『『『『『『『LASER RAISE RISER』』』』』』』』
スエルもその様子を金色の瞳で映していたが、妨害しようとしてもそのたびに3人の攻撃を受けて邪魔されてしまう。
腰に現れたベルトのホルダーからライザーのグリップパーツを抜き、カードリッジを銃身として装填、待機音と共に円形のリアクターから発生したエネルギーがライザーを満たすと8人はそれぞれの構えをとり、引き金に指をかける。
8人の少女達「「「「「「「「換装!」」」」」」」」
『『『『『『『『LASER ON』』』』』』』』
光線と共に放たれたカード型のエフェクトが使用者の実体を読み取るとそのエフェクトが振り撒いたブロック状のエネルギーが全身を包み、各々の勝負服を着た自分を模したアバターを形成する。
『『『『『『『『LOADING』』』』』』』』
カード型エフェクトはアバターが形成されると共に、収縮するとそのアバターの耳飾りや髪飾りなど、各々の頭に装飾として差し込まれ、勝負服に走る幾何学的な黒ラインにメインサポーターの色の光を灯す。
そして各々のサブサポーターユニットとしての名を読み上げたライザーはその手を離れてひとりでに宙に浮かぶと、くるくると回りながらホルダーに再びはまり込んだ。
『『『『『『『『READY FIGHT』』』』』』』』
ライザーから響く闘いの合図・・・”何のため”かなんて初めから決まっている。
『FOR DREAM』
全て終わらせてまた走り出すため。そして————
『AND DEAREST』
——”あの人”と同じ”景色”を見に行くための闘いだ。
その場に無い筈のゲートが開いたかのように、闘いの合図が鳴り終えるのとほぼ同時に地面を強く蹴る8人の少女達。
そのうち6人は散開して、スエルと戦う3人の周囲を建物の柱を遮蔽にしながら走り回る。痺れで動きが鈍っているとはいえ互いの隙をカバーするようにスイッチとヒットアンドアウェイを繰り返し、3人のライダーから距離をとって技を放とうとするスエルの予備動作や3人の攻撃間の隙を塞いでいく。
キタサンとオペラオーは更に外周を走り回り、6人の様子とスエルの様子を伺いながらカバーの準備を行う。
皆、トレーニングとレースで身に着けた走りをアバターの強化効果で増幅し、それに数々のシークレットミッション、そして担当プレイヤーについて行って得た経験をのせて駆け抜けて行く。
8人の走った道筋に残る4色の光の軌跡はまるでオーロラや星雲のようで、それらが織りなして形作る帳はスエルを逃さず捕らえ、3人を優しく包み込んでいるようにも見えた。その帳から内側へ向け青い援護射撃が次々に放たれる。
キックを押し返され吹き飛ぶタイクーンをダイヤがサポートモードで作り出した壁で受け止め、タイクーンはその壁を蹴ってリボルブオンと共に再び跳びかかりデュアラーの斬撃を刻み込む。
更にデュアラーを接続して薙ぎ払おうとしゃがむタイクーンの隙を逃さなかったドトウがタイクーンに銃口を向けるが、それで体勢を崩しながらもサポートモードでタイクーンの頭上に張った障壁がその身の破砕と引き換えにタイクーンに振り下ろされるリガドΩの拳を遅らせ、タイクーンに当たる前に『TACTICAL SLASH』による薙ぎ払いでスエルの体勢を崩し、拳の機動をずらして回避。そこにバッファがブレイカーで切り掛かるようにスイッチをかけて更なる追撃の芽を潰す。
体勢を崩したドトウはオペラオーのサポートモードで一瞬無重力状態になり、空中で一回転して大勢を整え、再び加速。
タイクーンとスイッチしたバッファは上段からブレイカーを振り下ろし、リガドΩの腕に阻まれるもベガがサポートモードでブレイカーに増設した錘でポイズンチャージがかかり、毒を纏い出力が上がったブレイカーで『TACTICAL BREAK』を放ち腕ごとスエルを叩き斬る。
そのままブレイカーを振り下ろしたバッファの後隙を見逃さなかったクラウンがサポートモードで道長の足元から生成した足場でバッファを押し上げてリガドΩが反撃で放った足払いのような回し蹴りを外させ、そのままバッファが飛び降りながらリボルブオンして下半身に回した装甲で『ZOMBIE STRIKE』を放つ。
ナーゴがアックスを振り回す合間のギターを弾く隙を突いたスエルがナーゴの首を掴むが、シュヴァルがサポートモードで放った腕型のエフェクトがナーゴのドライバーを回してリボルブオンで脱出させる。
そのままナーゴの放った『BEAT STRIKE』の当たった個所にトップロードが間髪入れずサポートモードで音波増幅効果を付与してダメージ強化と怯みの効果を与え、タイクーンがデュアラーを手にその間に滑り込むのと入れ違いになるようにして、
そのまま一度距離をとって再びリボルブオンで手にしたビートアックスの刃を振り回してタイクーンとの挟撃をかけながら弦と鍵盤を鳴らして響かせるEDMで皆の精神を奮い立たせ、担当達を痺れへの抵抗による苦痛から守る。
そしてサポートモードで放った腕型エフェクトの操作に気をとられて落ちたシュヴァルのスピードをキタサンのサポートモードで一瞬強化して隙をカバーする。
自分たちの隙を互いにカバーし、相手の隙を無理やりにでも作る。複雑に、それでいて完璧と言っても差し支えない連携によってスエルの手札は次々に封じられてゆく。
スエル「どコ、カら…こンな、力が…」
バッファ「決まってんだろ!お前をぶっ潰して!」
ブレイカーに走る刃がリガドΩの肩の眼を抉る。
ナーゴ「幸せな世界を作る!」
アックスの震える刃がリガドΩの左腕の眼を断ち切る。
タイクーン「それが!俺たちの願いだ!」
デュアラーの研ぎ澄まされた刃がリガドΩの胸部の眼を切り裂く。
『ROCK FIRE』
そしてナーゴが弦をかき鳴らしてゾンビブレイカーとニンジャデュアラー、ビートアックスに付与した『TACTICAL FIRE』を
3人「「「ハァッ!」」」
三人で振り抜いて放ちダメージと共に爆炎でスエルを包む。
スエル「こノままデ…終ワルと思ウなァ…?」
『REVERSE』
スエルの引き出したリガドΩの力で爆炎が巻き戻り、収束していく。しかし3人のベルトは消滅どころか身動き一つしない。ライザーにも何も起こらない。
スエル「何…?」
ギーツ「知ってるか?」
忌々しいであろう声のする方を見るといつの間にかギーツIXへと進化を遂げた状態で、ギーツが収束してゆく爆炎から現れる。
ギーツ「神様には時間なんて…」
ギーツは左手で立てた人差し指を揺らし、告げた。
ギーツ「関係、ないんだぜ?」
そのまま白い銃剣の刃を振り上げてリガドΩの体をかちあげ、そのまま振り下ろして地面へと打ち下ろす。
『REILGUN』
銃剣の刀身を傾けて銃身にしつつ青い光弾を立て続けに放ってリガドΩを怯ませる。
ギーツ「キタサン!オペラオー!」
名前を呼ばれた二人の担当はギーツを見る。
ギーツ「…ついてこい。」
そう一言だけ告げると、自分のドライバーに宿った白い九尾のクラッチレバーを一押しし、その蒼き焔を解き放つ。
『DYNAMITE BOOST TIME』
その動作を逃さずスエルもシリウスカードを”二度”読み込ませる。
『DESTROY』
腰に開いた瞳が紅い光を湛え、その力を右手に集め出す。
キタサン「はい、いきます!」
オペラオー「ああ、終幕の時だ!」
二人の担当も、手にしているライザーの”ギーツの青白い炎の宿った”セレクトレバーをはじく。
『『FINISH MODE』』
本来サブサポーターの権限では扱えない必殺攻撃。権限においてナーフされた銃撃でもこれなら奴の拳に、きっと届く。
大きく飛びあがった九尾の白狐は再びクラッチレバーを叩き、鳴り響く荘厳な鐘の音と共に九つの尾を青く靡かせながら、蒼い光と炎で満たされた脚でドロップキックを放つ。
『BOOST IX VICTORY』
潰れた眼に覆われた赤黒い魔人は、集まった力で紅い雷と炎が走った拳をストレートで放ち迎え撃つ。
キタサン&オペラオー「「はぁっ!」」
『『LASER VICTORY』』
————だがその瞬間、その拳に向けて二本の青い光線が横槍を入れた。
スエル「…!」
その始点には立ち止まったまま、銃口を魔人に向けライザーを構えるキタサンとオペラオーの姿があった。
力を右手に集める”溜め”の構え。それを見逃すほど二人は”弱く”ない。
だが当然、眼の殆どが潰されたとはいえ呪詛に震える魔人の黄金の拳はそんな線では砕けない。
スエル「…ッ!」
————けれど、その軌道を僅かにでもずらして力の通りを悪くするくらいなら、できる。
そのまま、繰り広げられる蒼白い力の奔流と紅黒い力の奔流の激突。
ギーツ「ハアアアアアアア!」
スエル「…ァアアアアアアアア!」
しかし全力でぶつけられた蒼い衝撃と一部なりとも力の逃げた紅い衝撃、どちらに軍配が上がるかなど最早審議するまでも無く—————
8人の少女と3人のライダーが見届ける中、巨大な爆炎と爆風が九尾と魔人を包んだ。
気を抜かず、爆炎が収まるまで息を呑んで”力の奔流”の潮目があった空間を見つめ続ける三人と八人。
静まってゆく炎の中から現れたのは————
6人「「「「「「え…」」」」」」
3人「「「…ッ!」」」
オペラオー「…なっ!?」
キタサン「そんな!」
————紅いローブに身を包み、そのフードから無機質ながら愉悦的な笑みを想起させる仮面を覗かせたスエルだった。
スエル「……フッ」
笑みを漏らしたかのような声と共に、無い脚で一歩、こちらに近づいてくる。
だが————
スエル「…ウッ」
その身にノイズが走る。致命傷を負った未来のデータ生命体特有の”傷”を示す現象。
スエル「…!?」
自らの異変に気付いたスエルははっと自らの姿を見直す。
スエル「ナッ…何!?」
英寿?『お前は”破壊”した。』
哀れな”身体無し”に忌々しいであろう男の声で無情にも告げられる、死刑宣告。その身にかかるノイズの数も頻度もみるみるうちに増えてゆく。
スエル「…ソンナ…バカナァ…!」
捨て台詞を最後に、その醜悪な仮面すらもヒビ割れて行き・・・・哀れな”身体無し”の存在していた”情報”ごと、粉々に砕け散った。
9人「・・・!」
キタサン&オペラオー「「あっ・・・!」」
砕けた仮面の下からのぞかせた顔は、見慣れた人間————だった男の顔。
紅いフードを下ろし、いつもの飄々とした笑みで。
英寿「…さあ始めよう。」
紅いローブは青い光の粒子となって破れ去り、男は見慣れた筈のタキシード姿で両手を広げ、
英寿「誰もが幸せになれる世界を。」
荘厳な鐘の音と共に男から放たれた青白い力の奔流は瞬く間に広がり、その奔流は優しく包み込むようにして3人のライダーの姿を解き、8人のアバターも解除して11人を純白の世界へと誘うだけでは止まらずに、蒼き創世の力は響き続ける荘厳な鐘の音、神々しい歌声と共に世界中を包んでいった。