仮初の邂逅

仮初の邂逅

モテパニ作者

響「やってきました!おいし〜なタウン!」

奏「もー響はしゃぎ過ぎ」

ある日のこと、スイートチームとC拓海はおいし〜なタウンにやってきていた。

残念ながら大人が不在という小学生のアコと奏太は不在だが。

響「いやーこの街テレビで紹介してた時にすっごい興味湧いたんだよね〜。拓海もこんな良い街出身なら教えなさいよ!」

C拓海「いや、出身地なのは俺じゃなくて本物の方の俺だし…」

きっかけはこのおいし〜なタウンがテレビで特集されたことで食いしん坊な響が話題に出した際C拓海が、正確には本物の品田拓海がその街出身であることがわかったためだった。

C拓海「それより約束は覚えてるよな?」

エレン「ええ、福あんってゲストハウスと隣のなごみ亭ってお店には行かないってやつ?」

C拓海がこの街を案内する条件として出したのは福あんとなごみ亭には決して赴かないことだった。

彼いわく、その二件には本物の自分がいる可能性が高いという事で、対面するのを避けたいとの事だった。

響「(本物の自分に会うのってそんなに嫌なものなのかな?面白そうに思えるのに)」ヒソヒソ

奏「(私たちにはわからない感覚が本人にはあるんでしょうね。本人が嫌がってるんだし、聞いてあげましょ)」ヒソヒソ

本物とクローンの差異、それは普通に生きている響たちには理解し難い事であった。

しかし出生がどうであれ拓海が大事な友達であるのに変わりはない。

その友達のお願いなら聞いてあげるだけだ。

が、C拓海の本音は別にあった。

C拓海「(最悪俺に会うのはいいんだよ。ただ問題はその近くにはあいつもいるかもしれないっことだ)」

C拓海には本物の自分ではなく会いたくない相手がいた。

はたしてそれはいったい…?

エレン「……」

〜〜〜

C拓海の案内でいくらか店を周ったスイートチーム。

響「さっすが美食の街、どのお店もおいし〜。こんなにお店あるんだからいくらか加音町にも来てくれればいいのに」

奏「でもちょっとお腹いっぱいになってきたかも…ていうか響は知ってたけど拓海くんもすごい食べるのね。私とエレンは分けて食べてるのに」

エレン「拓海ってこれでけっこう食べるのよね」

C拓海「俺自身はこの街に来るのは初めてだけど、この街の人間はだいたい食うからな。ま、この料理を毎日食ってたら胃も大きくなるってもんだ」

響「へー、まあでも奏たちがお腹いっぱいになりそうなら早めにスイーツのお店に行く?そっちが本命だしさ」

奏「さんせー!」

いろいろな美味しいものがあるが、やはり響たちの本命はスイーツ。

伊達にスイートというチーム名ではない。

エレン「どこかおすすめのスイーツのお店無いの?」

C拓海「うーん、スイーツは食べなかったわけじゃないけどおすすめできるほど知ってるわけじゃないな。本物の記憶全部あるわけでも無いっぽいし」

響「うーん…あ!あそこなんてどう?」

響が指を指した先にあった店は…

C拓海「ッ!?」

フルーツパーラーKASAI。とても見覚えがある場所だった。

C拓海「あ、あそこはやめた方がいいんじゃないか?」

奏「なんで?雰囲気良さそうだし、お客さんも入ってるみたいだよ?」

C拓海「え、えっと…なんとなく!なんとなくやめた方がいいと思うんだ!」

???「ほう、店の近くでネガキャンとはいい度胸をしているなきみは」

C拓海「!?」

焦っていたC拓海は彼女の接近に気づかなかった。

あまね「やあ品田、ずいぶん変わった客引きをしてくれているようだな。頼んでもいないのにご苦労なことだ」

C拓海「か、菓彩…」

現れたのはあまね。

"本物の"拓海の知り合いだった。

エレン「…拓海、知り合い?」

C拓海「あ、いや、その…」

あまね「む?」

あまねは周りの女子たちを見てあまねは様子を変える。

あまね「品田、私も知らない間にこんなに女の子の知り合いを増やしているとはやるじゃないか。是非とも話を聞きたいものだな」

響「(この子ってひょっとして)」ヒソヒソ

奏「(うん。拓海くんの本物の方の友達とか?)」ヒソヒソ

あまね「話を聞かせてもらうぞ品田ぁ!そちらの三人もうちの家族が経営するフルーツパーラーKASAIへご招待だ!」

C拓海「(あれ?菓彩ってこんな感じだったか?)」

エレン「…その前に聞いときたいんだけどあなた名前は?」

あまね「菓彩あまねだ。よろしくたのむ」

エレン「…そっか、あまね、ね」

〜〜〜

ゆあん「いらっしゃい!と、おおあまねよ!」

みつき「品田くんもいらっしゃい。そっちは新しいお友達かな?」

あまね「兄さんたち、ちょっと場所を借りるよ」

ゆあん「心得た!」

店を切り盛りしている兄たちから許可を取り、奥のスペースへC拓海たちを連れて行くあまね。

あまね「単刀直入に聞こう。この中で品田にそういう意識を向けている者は?」

C拓海「なに聞いてんだいきなり!?」

奏「この子です」

エレン「ちょっ!?」

響「えーと、注文ってしていいの?」

いきなり懐に飛び込むあまね。

それに対して当事者であるC拓海とエレンは狼狽える。

そんな中響はマイペースだった。

あまね「フッ、やはりそういった相手を増やしていたか、さすがだな品田」

エレン「拓海?」

C拓海「(俺じゃない!)」

C拓海にとって預かり知らぬ事をエレンに明かされてしまう。

あまね「さて、ちょっと待っていてくれ」

そう言ってあまねは席を外す。

奏「どうしたんだろ?」

エレン「さあ?」

C拓海「(まさか!?)俺ちょっとトイレ行ってくる」

響「こら!女子の前なんだからもうちょっとオブラートに包みなさい!」

C拓海「悪い、じゃあな」

エレン「…」

エレンはトイレへ行こうとする拓海の様子を少し訝しむ。

〜〜〜

ゆい「うん、うん?うんわかった。とりあえず行くね」

ゆいはハートキュアウォッチからの通信を切った。

拓海「誰からだった?」

ゆい「あまねちゃんから。拓海の事で話があるからみんな呼ぶって」

拓海「ん?俺には連絡なかったぞ?」

ゆい「拓海はもういるって言ってたよ」

拓海「は?」

〜〜〜

ダークドリーム「え?あまねん家の店に来てくれ?今日は無理なごみ亭でシフト入ってるんだから。あーわかったから、終わり次第行くから先にやってて」

〜〜〜

そんなやりとりをしている裏では。

C拓海「(逃げるか)」

トイレの窓からC拓海は脱出していた。

食い逃げっぽく見えるが、まだ注文していないし許してほしい。

C拓海「(悪いな菓彩、俺はあいつに会うわけにはいかないんだ)」

あまねが彼女を呼んだのはなんとなく察した。

だから強引にでも逃げる必要があった。

とりあえずC拓海は知り合いがいないのを確認して表に出た。

???「あー!」

C拓海「!?」

ちゃんと確認したはずなのに通りにいた一人がC拓海を見て声を上げた。

はな「やっと会えた!はじめまして品田拓海くん!野乃はなです!」

それは誰も予期せぬ邂逅であった。

〜〜〜

あまね「失礼、待たせたな。ん?品田はどこへ行った?」

響「あー、お手洗いに」

奏「でもちょっと遅いね」

エレン「たぶんもういないわ。逃げたのよあいつ」

『え!?』

エレンの発言に驚きを隠せない三人。

奏「え?なんでわかるの?」

エレン「私も席離れた時は確信はなかったけど、あまねでいい?あまねはさっき席を外した時もしかして知り合いを呼んだ?」

あまね「ああ、私と品田共通の友人をな」

エレン「やっぱり」

響「どういうこと?」

エレン「響と奏は聞いてたでしょ。拓海が会いたくない相手がいるって、きっとこの後来るから」

響奏「「!」」

ゆい「おーい、あまねちゃーん」

あまねが最初に声をかけて家が比較的近いゆいが店にやってくる。

しかし響と奏が注目したのは彼女ではなく隣の…

響「え、まさか…」

奏「ほんとに…」

拓海「菓彩、ゆいに言ってた用件ってどういうことなんだ」

初めて、いやその顔は何度も見ているがそれでも初めてというしか無い本物の拓海であった。

あまね「品田ぁ!店から逃げてゆいと合流するとはどういう事だ!?まさか私たちがいないところで弁明でもしようというのか!?」

拓海「はぁ?何言ってんだお前」

あまね「とぼける気か!?ならばゆいの前で彼女達との関係を言ってみろ!」

拓海「彼女たち…?」

あまねに促され拓海は響たちと目が合う。

エレン「"はじめまして"私は黒川エレン」

拓海「ああ、はじめまして俺は品田拓海」

あまね「何を言っている?先程まで一緒にいたではないか」

拓海「いやお前が何言ってんだ」

ゆい「あまねちゃん、拓海は今日ずっとあたしといたよ?」

あまね「…え?」

それを聞いたあまねは青ざめる。

あまね「ななな何を言っているゆい。ド、ドッペルゲンガーでも現れたというのか?」

奏「うーん、当たらずとも遠からず」

そんな話をしていると。

らん「おーいあまねーん」

ここね「拓海先輩の話ってなに?」

のどか「そこで会ったからみんなで来たよ」

あまねが呼んだ者達が集まってきた。

響「え?何人いるの?」

奏「というか…」

つぼみ「あっ」

れいか「あら?」

奏「見覚えのある顔が」

エレン「なら、説明しやすいかもね」

〜〜〜

その一方C拓海はというと

C拓海「えーっと、野乃だったっけ?」

はな「うん!さあやからいろいろ聞いてるよ!拓海くんもさあやからわたしのこと聞いてる?」

C拓海「(さあやって誰だ!?)」

実を言うとC拓海はさあや達、デパプリチーム以外のプリキュアを知らなかった。

誕生がイレギュラーであった影響か、C拓海にはブンドル団との戦い前後までの記憶しか備わってなかった。

どう誤魔化したものか狼狽えていると…

はな「あっ!そうだ、拓海くんもあまねちゃんに呼ばれてるよね?一緒に行こうよ!」

C拓海「え、あー、いや…」

どうしたものか、一緒に行くのは論外。

かといってこのまま別れても自分が逃げたのがはなの口からバレる可能性が高い。

そうなれば…ならそれを避けるためには。

C拓海「なあ野乃、こうしてせっかく会えたんだしさ、一緒に街を回らないか?」

はな「お!おおっ…!?それはもしやデートのお誘い!?」

C拓海「いやデートってほどじゃないんだけどさ…」

はなを連れてここから離れる。

それが正解のはずだ。

はな「う〜ん、う〜〜〜ん……」

はなは悩んでいた。

あまね達の元へ行くという約束を守るべきか、ようやく会えた拓海からの誘いを受けるべきか。

そしてたっぷり悩んだ末…

はな「待ってて!…もしもしさあや?ごめん、行けなくなっちゃった。え?そうなると思ってた?めちょっく!あ、ごめん行けなくなっちゃったわたしが悪いのに。うん、うん。それじゃあね。拓海くん!一緒に行こう!」

拓海の誘いを受けることにした。

〜〜〜

はな「どこ行くの?」

C拓海「まあ、この街ならやっぱり食べ歩きだろ」

はな「食べ歩きかー。わたしこの街にはけっこう来るけど、あんまり美味しいもの食べれてなかったんだよね」

C拓海「へぇ、そりゃなんで?」

はな「何度も来てたらその、それだけでお財布の中身がめちょっくなことに…はっ!」

口にして気づく。

はなの財布の残金は帰りの交通費除けばほとんど入ってないことに。

はな「ごめん…せっかくのデートだけどわたしお金無い…」

がっくりと肩を落とすはな。

せっかくの念願が叶ったというのにそれより先を楽しめないのだから。

それをC拓海は。

C拓海「そんなに落ち込むなよ」

はな「え?」

C拓海「俺も余裕があるわけじゃないけど、俺が誘ったんだ。カッコくらいつけるよ」

〜〜〜

拓海「俺のコピーがそっちで暮らしてる!?」

エレン「ええ、そういうこと」

一方こちらでは事の経緯を説明していた。

ゆい「そういえば前に拓海がたくさん増えた事あったよね…」

ここね「けどあの拓海先輩達、すぐに消えたけど…」

奏「そこはエレンと拓海くんの愛のパワーで!」

エレン「絆のパワーね!」

あまね「ふむ、ひょっとしてだがエレンといったか?きみはそちらの品田と…」

奏「恋人同士なの!」

エレン「〜〜〜///」

ソラ「た、拓海さんと…」

のどか「恋人同士…」

拓海「といっても正確には俺じゃないぞ?」

響「まあそうかもね。私たちは拓海が消えかけそうなところも見たし、普通の人間じゃないっていうのはわかってるけど」

奏「私たちが仲良くなったのはこっちの拓海くんで、そこになんの含みもないの」

エレン「………つ、付き合い始めたのもね」

あまね「…そうか。そちらもいい関係を築けているんだな」

さあや「それで?なんでそっちの拓海は逃げ出したの?」

響「本物の自分に会いたくなかったんだって」

あまね「嫌われているなぁ品田」

拓海「うるせえ」

エレン「(ま、たぶんだけどほんとに会いたくないのは)」チラッ

ゆい「ん?どうかしたエレンちゃん?」

エレン「なんでもー」

この世でただ二人だけが知る事情、それをエレンはわざわざ口に出しはしなかった。

〜〜〜

はな「楽しかったー!」

あれからしばらく、はなとC拓海は二人の時間を思う存分楽しんだ。

C拓海「お気に召したようでなによりだ」

はな「うん、本当によかった」

C「そんなにか?」

はな「今日のこともそうだけど、拓海くんに会いたいって思い続けたことがかな。こんなに楽しい時間が過ごせたんだもん。またわたしとこんなふうに遊んでくれる?」

その質問にC拓海は…

C拓海「悪いけど、難しいかな」

はな「どうして?」

C拓海「好きな子がいるんだ。だからその子を放って野乃とってのはな…」

はな「そっか…」

二人の間に静寂が流れる。

その静寂ははなが破る。

はな「それじゃあ今日のお礼に拓海くんが好きな子と上手くいくよう応援するよ!フレフレ!拓海くん!」

C拓海「ッ!…ああ、ありがとうな野乃」

二人はお互いに感謝しあいどちらからともなく笑い合う。

そうして二人の楽しかった時間は終わりを告げるのだった。

〜〜〜

はなと別れ、C拓海はどうやってエレンたちと合流しようかと頭を悩ませていた。

考え事をしていた分少し不注意になっていた。

ダークドリーム「はぁ、やっと仕事終わった」

そのため路地を曲がったあたりで彼女が走って来ていることに気づかなかった。

C拓海「うわっ!」

ダークドリーム「ちょっ!」

それで危うく二人はぶつかりかけた。

C拓海「あ、すいません」

ダークドリーム「いえ、こちらこそ」

なんとかぶつからずに済んだ二人は、軽く謝罪してそのまますれ違った。

ダークドリーム「(さっきの人拓海に似てたような?まあ気のせいか)」

ダークドリームはそのまま走り去って行く。

〜〜〜

はな「へへ〜」

ほまれ「はなご機嫌じゃん」

はな「やっと念願叶ったからね〜めっちゃご機嫌だよ!」

さあや「そういえばはな、今回はどんな理由で来れなかったの?」

はな「じつはまたおいし〜なタウンに行った時偶然拓海くんと会ってね。集合場所に行くって約束破ったのは本当にごめんだけど仲良くなる大チャンスだったから二人でお出かけしてたんだ。ごめんさあや!」

さあや「別にいいよ。でも拓海ならこっちにいたけど?」

はなほま「「え!?」」

えみる「これは…都市伝説なのです!都市伝説ドッペルゲンガー。ドッペルゲンガーに会った者は近いうちに命を取られる…はな先輩も近いうちに命の危機が訪れるのです!」

はな「めちょっく!わたし死んじゃうの!?」

ほまれ「ななな、何言ってんのえみる。そ、そんなこと起こるわけないじゃん?」

ルールー「通説によりますとドッペルゲンガーに命を取られるというのはドッペルゲンガーが本物に成り代わるためですので百歩譲ってはなが拓海のドッペルゲンガーに会うのはいいとして、それが命の危機に陥るのは理解不能です」

さあや「(きっと例のコピーくんなんだろうけど、少し黙ってよ)」

はなとC拓海の邂逅。

それはいったい何を残したのか…


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