代用品の代用品

代用品の代用品

曇り



「品田拓海、わざわざおいしーなタウンに呼びつけて何の用トル?まさか…また私と菓彩あまねでレズ○ックスをさせようと…?」


青ざめた表情をしたジェントルーは問います。


「いや、今回はお前にこれを着てもらいたいんだ…」


拓海がクローゼットから取り出したのはゆいの春服でした。思っていた回答と違ったジェントルーは少しほっとしながらも呆れた顔をします。


「意味がわからんトル。何故私がそんなことをしなければならない…まったく付き合ってられんトルー。帰らせてもらうトル」


「私は君の着せ替え人形ではないトル」


と、大きなため息をつき帰ろうとするジェントルーに拓海は頭を下げて頼み込みます。


「まあまあそういうなって」

「頼む!こんなことジェントルー…お前にしか頼めないんだ…この通りだ!」


「そんな…トル…」


ジェントルーの赤い瞳は青色に変化し始めました。彼女はあまねのデータを基にして作られたため、困った人を放っておけない性格を持っていました。渋々ではありますが、ジェントルーはそれを受け入れてしまいました。


「くっ…いいだろう…トル…」


「いいのか?」


「…着替えるからあっち向けトル」


「菓彩はそのままでいいって言うぞ?」


「チッ……好きするトル」


そう吐き捨てるとジェントルーは拓海の目の前でマスクを外し、着替えと髪のセットをあっという間に終えました。拓海からの好奇な視線を受けながら、ジェントルー屈辱を噛み締めたような表情を浮かべていました。


拓海は、衣装も髪型もゆいになった彼女を見ましたが、どうもピンと来ていない様子でした。


「……どうトル?」


ジェントルーは尋ねます。


「うん…話し方がなぁ…もっとゆいに寄せられないか?」


「分かった……トル……」


深いため息をついた後、ジェントルーは頭の中でイメージトレーニングを行い、覚悟を決めて目を開きました。


「……あつあつごはんでみなぎるパワー! キュアプレシャス! おいしい笑顔で満たしてあげる♡……トル」


生真面目なジェントルーは拓海に認められたい一心でプレシャスの名乗りを真似します。


「…これでいい?……トル」


「………ああ大体そんな感じだ」


(語尾がな…萎えるなぁ…)

(コイツ菓彩のコピーなのにゆいの物真似下手くそだな…菓彩が今アレだから代わりにジェントルーに頼んだけど…今回はテキトーに済ませて…次は華満か虹ヶ丘に頼むか…)


(こんな最低な男…菓彩あまねはなぜコイツにこんなにも好意を抱いているトル?全く分からんトル…)


Report Page