代用ヒロイン
曇り「……拓海さん…これは……どういうことなんですか…?」
ソラは今起こっている状況が理解ができない様子です。
拓海がクローゼットから取り出したのはゆいのお気に入りの服と全く同じものでした。
「これを…何ですか…?」
「これをお前に着てもらいたいんだ。できれば髪型もゆいと同じにして欲しいんだ。できるか?」
そう言うと拓海はゆいのと同じリボンを取り出すと、ソラは怯えたような反応を示します。
「……拓海さん、嫌です…何でですか?何で私にゆいさんの格好をさせようとするんですか?私のままじゃダメなんですか?やっぱり拓海さんが好きなのはゆいさんであって私なんてどうでもいいんですよね…だから私をゆいさんに仕立てて…ゆいさんの代わりにして…そうなんですよね…ゆいさんの他はどうでもいいって思っているんですよね…?」「拓海さん…私がどれだけあなたのことを想っているのか分かっているんですか?こっちは四六時中あなたのことを考えているんですよ?拓海さんは私のことを想ってくれていますか?違いますよね?私のことをゆいさんの代わりにしようとしていましたもんね…うぅ…拓海さん私といる時くらい私を見てください…私といる時くらいはゆいさんを求めるのをやめてください…」
「拓海さん…私とゆいさんでは何が違うって言うんですか?幼馴染というのがそれだけ特別なんですか?私はもっと拓海さんにお近づきになりたいです…もっと拓海さんと普通のお付き合いをしたいんです…なんで私のお願いを聞いてくれないんですか?私は散々あなたの要求を飲んできましたよね?あなたが求めれば危ない日であっても拓海さんに捧げ続けたんですよ?拓海さん…私はあなたにとって何ですか?」
思いの丈を拓海に訴えた彼女の瞳には既に涙が浮かんでいました。
「…」
拓海は気まずさから目を逸らしてしまいました。
「拓海さんなんで目を逸らすんですか...?私のこと嫌いになってしまったんですか?...嫌です...嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ...私を嫌わないでください...捨てないで...」
「...苦しいです...私苦しいです...拓海さんに嫌われたらって思うと...心が苦しくなってしまうんです...辛いんですよ...どうしたらこの苦しみから解放されるのでしょうか...?」
「拓海さん...ちょっとはこっちを向いてください...私を見てください...ねえ!...やっぱり嫌いになってしまったのですね...もうおしまいです...絶望です...私...面倒くさいですよね...こんな面倒くさい女...嫌われて当然ですよね...でも...私嫌われたくないんです...あなただけには...私はどうしたらいいんでしょうか...?拓海さん...うぅ...苦しいです...」
彼女は自分が嫌われてしまったのではないかという恐れに苦しみ、心が押しつぶされるような絶望の中で悲痛な叫びを上げました。
「……そうだ…コレ…に着替えればいいんですよね……?私…拓海さんの期待に応えます…応えるから…だから私を…私を捨てないで…グスッ…貴方のそばに私を置いて…」
涙ながらに訴えながら、ソラは独自の結論に達しました。そして、着替えと髪のセットを始めました。しかし彼女はいじらしく、何かに怯えたような身振りをしながら、虚ろな目をしていました。その姿は、普段の元気な彼女のイメージからは程遠く、酷い光景でした。
「…出来ました…」
衣装も髪型もゆいになった彼女を舐め回すように見た拓海は、興奮を抑えきれない様子でした。
「…」
「どうですか?…ほらー…ゆいですよー…」
「たくみーはらぺこったー」
「ははっ似てないな」
自分がゆいになれば…上手くゆいの真似が出来さえすれば拓海に褒めてもらえる…ゆいと同じ拓海の愛情を受け取ることができる…とソラう考えました。そしてその一心でソラは自分なりにゆいの物真似をしました。
しかし、結果は拓海に軽く笑い飛ばされるだけでした。これによってソラは自分の無力感を強く実感し、心は完全に壊れてしまいました。
ソラはか細い声で泣きながら、崩れ落ちその場にうずくまってしまいました。
(うまくゆいさんを演じられなかったばかりに...嫌われてしまう...そんなの嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ...)
と声に出せないほどの思いでいつまでも悲しんでいました…
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ミラーパッド越しにその様子を覗く人影が3つ…
ましろ(ソラ虐)「あぁっ♡いいっ!ソラちゃん最高に可愛いよぉ〜♡」
?「あの男に和実ゆいの服を渡しただけでこんなにも多くの人間が不幸になるなんてね…面白いショーだったわ」
ましろ(⁇?)「忘れてませんよね…?『青髪女騎士の不幸』を見せるかわりに私たちのスポンサーになってくれるっていう約束…」