仕方のない事
それは仕方のない事だった。
初めて海に出た少年がその雄大さに目を輝かせる事も
「凄いなシャンクス!ウタ!すっごい広いぞ!」
「当然でしょ。あんまり乗り出さないようにね。ルフィ。」
初めての戦闘に身を震わせる事も
「いい、ルフィ。ここはこの船で一番安全な所なの。絶対でちゃダメだからね。私と一緒に待ってるの。」
初めての故郷以外の街に目を輝かせる事も
「ここが音楽の国か!早く来いよ!ウタ!一緒に探検しようぜ!」
「待てルフィ。ここには補給以外の目的があって来たんだ。ウタと探検をするのはそれが終わった後にしてくれないか。」
初めて聞く数多の音楽に心躍らせる事も
「凄いなウタ!初めてでもあんなに綺麗に歌えるなんてよ!」
「当然でしょ。なんたって私は赤髪海賊団の音楽家なんだから。」
初めて見た楽譜をねだる事も
「なにこれ。古びた…楽譜?」
「ウタ!何やってるんだ?なぁ、ウタならその楽譜も読めるのか?ならさ、歌ってくれよ!俺、ウタの歌もっとききてーし!」
ねだられた幼馴染の少女がその歌を歌ってしまう事も
「なに?これ…?いや!たすけて!るふぃ…」
その伸ばした腕がその幼さ故に届かない事も
…きっと仕方のない事なのだ。