今。
「クロコダイルさん、来世って信じます?」
にへらと笑う男にクロコダイルは一言くだらねェとだけ返した。あぁ、これはいつの会話の内容だったか。この男と喫煙所で出会って何度目の出来事だったか。
「ひっでェ!……おれはあったらいいなって思いますよ。だって死んでその後消えるだけなんて悲しいじゃないですか」
「それをおれに言って何になる?」
「別に何にも?ただアンタがどう考えてんのかなァって気になっただけです」
そう言った相手はまたもう一回、今度はすこし思い詰めたように笑って。それがおれは気に食わなかった。だから
「ク……ちゃ、…!クロ……ん!」
「……っ」
「クロちゃん!」
「……………あ?どこだここは」
「何寝ぼけてんだよ、ここおれの高校!海群高校!!」
「海群…高校……」
「おう、いやぁでも待たせたのは悪い!ドジって先生に捕まっちゃってさ!」
そうだ、おれは今日このドジ野郎と出かける話をして委員が長引くからこいつの席で待ってろと。
「待たせんじゃねェよ。終わったんならとっとといくぞ」
「あぁ!今日はどこいくんだ?新しくできたゲーセン?」
「予定を変える、おれの家だ」
「え!いいの!クロちゃんち久しぶりだぜ!ワンちゃん元気にしてるかなぁ!」
ニコニコと笑う顔とさっき見た夢がリンクして、重なる。前世来世など馬鹿馬鹿しいと思う。
「あ、そういやさおれ兄貴の高校にもう少ししたら転校すんだよ」
「ドフ学…偵察か?」
「……どうかな」
「図星だろ」
「あははっ」
「………」
「…………ねぇ、クロちゃん」
まただぶる。
今度はあの思い詰めた笑いの方が重なった。俺はあの夢の中、こいつの湿気た面が気に入らなかった。だから。
「っ、」
「……」
近所のガキからプレゼントとしてもらったと自慢していたネクタイを加減なく引き顔を近づける。うじうじした似合わねェ面をいつもの馬鹿げた顔に戻すために。
来世前世なんざ今考えたって始まらねェ。俺は今を生きる。それだけだ
同じことをしてそう言ったような気がする。
「く、クロちゃん!?」
「その任務が終わったら次は俺の高校に来い」
「い、いやそんなにサイサイ転校なんて…!」
「偵察目的ならできるだろ」
「できるけどさぁ…!申告するおれの身にもなってよ…」
「クハハッ!俺の高校に来れるよう、精々生きながらえ、手を尽くせ」
「……プハッ!何だよそれ!ほんと変わんないなクロちゃん!うん、じゃあクロちゃんのためにもおれ早く終わらさせねェとな!」
ニコニコと笑うロシナンテに満足そうにクロコダイルは微かに口角を上げ、2人は並んでクロコダイルの家へと帰っていく。
「犬もいいが家に来る意味わかってんのか?」
「え、いや、あ…」
「明日起きれるといいな」
「……はい」
夢と同じく、弾は放たれたが命は取られなかったようでドジ野郎は潜入任務完了後俺の高校に転入した。