今日は良き日
戦闘描写あり
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いつものように、私は他のアリス達と一緒に傭兵としての仕事をこなした。他愛の無い、雑魚ばかりだった。それ自体は良いことの筈だ。私達を修理するパーツは乏しく、なるべく損傷を負うのは避けたい。だから、すぐに終わらせられるのは良い事の筈なんだ……なのに。
なのにどうして、私の心はこんなにも空虚なのだろうか。
「!止ま、れ…」
帰る途中、面倒な事になった。トリニティ自治区で暴れたのが不味かったのだろう。正義実現委員会が出てきた。バレないように路地を隠れながら移動していく事にした。
「どうしますか?」
「……」
頭の中で思考を巡らせる。万が一ぶつかったとして、一般委員の部隊なら突破できるだろうが……問題は幹部が居る場合だ。ただでさえ此方は修理が中々効かない状況、誰かが大怪我でもしようものなr
「あ、見つけたっすー。」
考えてる側から見付かった。しかもこの声と特徴的な喋り方は確か…
「!」
即座に一人がリボルバーを構えて撃つ。そのアリスは此方のメンバーの中でも腕利きのガンマンって言われてるやつだ。その早撃ちは速度も精度も相応のものを持っているし、何より一分の迷いもない。
だが、そいつはそれを軽々と避けて見せた。あの、身のこなし、実力も相当に……
「どう、しましょうか?」
「……私が、やる。」
「出来れば大人しく捕まってくれると嬉しいんすけど…」
「無理な、相談だ。お前らは、先に…帰ってろ。」
一歩進み出れば目の前の正義実現委員会委員…いや、幹部か。仲正イチカは静かに銃を構える。その口調は穏やかなもので、争いを望んでいないのも事実なのだろう。だが、捕まるつもりもない以上、無理な相談というやつだ。
「やるしかなさそうっすね…?」
「仲正、イチカ。だな?私は…リウ。覚えて、おくといい…」
それに、私の心は何故かこれまでに無い程に大きく脈打っている。これまでの傭兵仕事では感じることの無かったもの……あいつと、ククラと愛し合った時と同じ位に……高鳴っている。
「……行くぞ!」
まずは互いに銃での撃ち合い。お互い弾丸の口径や威力はほぼ互角。いや、フルサイズのライフル弾を使ってる分私が有利か。だがイチカの持つ銃は此方より取り回しがいい。路地という狭い環境も、恐らく向こうの味方だろう。
「たまには…こういうのもっ……良いかも。」
奴の目が薄く開く。その時私の背中に、ある感覚が走る。それは私がククラと出会う前に何度も感じたもの…体を破壊されかも知れないという予感が、死が迫ってきているこの感覚…!
「楽しい、なぁ!」
「っっ…!」
私の言葉にイチカは面食らったようだが、その言葉は奴の内側にあるもの、つまり本性をくすぐったようだ。纏う雰囲気が、変わる。
今日は良き日だ。こんなにも心が昂るのはいつぶりか…!こんな時は、銃ではなく。キヴォトスの量産型アリスのニセモノではなく……
「なぁ、知って、いるか?キヴォトスの、地下には……闘技場が、有る。競うのは、銃の、腕じゃない…」
銃を一度側に捨て、懐から二つの物を取り出す。そいつはキヴォトスでよく使われている銃じゃない。じゃあ、何か?両手の拳に嵌める為の物だ。まぁ、よく不良が使っている所を見られるようなやつじゃない。あんな、精巧な物じゃない……ただの、鉄塊だ。
「此方の、経験は、有るか?仲正、イチカ。」
私らしく行こう。私らしく…私<拳闘士>らしく!
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『報告書 羽川ハスミ』
激しい銃撃音が聞こえるとの通報があり二個小隊が出動。重軽傷を負った不良生徒を複数人確認した為、救護騎士団へ連絡した後、襲撃犯の捜索を開始。
現場で指揮を取っていた仲正イチカが襲撃犯グループを発見。主犯と思われる人物と交戦するも逃走。互いに負傷。
同委員本人からの報告により、主犯と思われる人物はミレニアムサイエンススクール、アリス保護財団が提示していた優先保護対象アリスと断定。自動小銃の他に、殴打用の武装を所持している事が判明。その威力はコンクリートの壁に穴を開ける事が現場検証により判明。
各委員は注意されたし。