人妻マンション・アルクェイド&娘編

人妻マンション・アルクェイド&娘編


人理を巡る戦いを終えた藤丸立香が住む、通称“人妻マンション”。

これは、マンションのある一部屋における母娘の会話を抜粋したものである。


───


「パパとママのデートってどんな感じだったの?」


真祖の姫たるアルクェイド・ブリュンスタッドにそう問いかけるのは、彼女と藤丸立香の娘であるアルカ・藤丸だ。

小さなアルクェイドと言って差し支えない外見……とある世界で『エコアルク』と呼称された少女と似ているが、彼女とアルカは似ているようで微妙に違う。アルカはショートヘアで天真爛漫な少女であり、棘の少ない陽キャムーブをする。その辺りのとっつきやすさは父の背を見て育ったおかげだろう。


「んー、普通よ? 遊園地で一緒に遊んだり、一緒にベッドでゴロゴロしたり…」

「…で、どっちもその流れでギシギシアンアンしたと」

「ちょっと!?」


…ついでにませていて、父をそういう意味で狙っている。人妻マンション内ではそれなりに見るムーブとはいえ、母のアルクェイド的にはとんだ伏兵現る、といった感じである。良きライバル的な立ち位置なのは救いと言えよう。


「でもシたんでしょ? シなきゃわたしが生まれないもん」

「そ……そりゃそうだけど…」

「ねー、シた時のこと聞かせてー!」


それにしてもこの娘、父目的でグイグイ来る。これでは両儀家の娘もかくやである。


「あーもうダメダメ! アルカにはまだ早いわよ! 代わりにバレンタインの時の話してあげるから!」

「えー、ケチ……でもないかな?」

(た、助かったー…)


アルクェイドは娘の反応に内心ホッとしていた。娘にバレンタインの話をするのも結構な羞恥プレイだが、情事の話なんてもっと恥ずかしいだろう。


「んー、わたしね? 『わたしからカルデアくんにはあげられない』って言ってチョコ作るの渋ってた時期があるんだけど、その……恋仲になってからはそうも言ってられないというか…」

「ママ、色々濁しすぎ。やっぱりケチ?」

「言うから! 言うから! もー、なんで娘相手に羞恥プレイなんてしなきゃならないのよ…」


とほほ、となりつつもアルクェイドは話を続ける。


「わたしね、初恋の人がいたんだ。だから立香と一線引いてたの。『マスターさん』とか『カルデアくん』って呼んでね。だけど、一緒に過ごすうちに立香のことも好きっていう気持ちが抑えられなくなって、恋人になっちゃって……それで、チョコ作っちゃったんだ」

「ふうーん? 心通じ合わせた結果キュンキュンしちゃったんだー?」

「っ……そうよ! 初恋は悲しい別れになったけど、その後の二度目の恋でもキュンキュンきた恋愛脳がわたしよ! 悪い!? うぅ……恥ずかし…」


顔を真っ赤にして頭を抱えるアルクェイドとは対照的に、アルカは上機嫌のホクホク顔だ。


「ただいまー」

「あっ!」

(よ、良かった〜。ナイスタイミングよダーリン!)


ドアの開く音と、聞き慣れた男の声。立香が帰ってきたのだ。今日はアルクェイド達の部屋で夕食を食べる日だった。


「えへへ、おかえりなさーい♥」

「あっ、こら! もう…」


ダダっと駆け出していったアルカを追って立香を出迎えると、アルカに抱きつかれる立香がいた。


「おかえりなさい、あなた」

「うん。今日の夕飯は?」

「ハンバーグよ。今日は中々上手くできたから、期待してね?」


そんな会話をしながら、三人でリビングへと戻っていく。


(…この幸せが、一日でも長く続きますように)


心に咲いた恋の花が、二度も儚く散るのは辛い。だからこそ、アルクェイドはそんなことを思わざるを得なかった。


───


…こうして、今日も日常は続いていく。歪んではいるが、確かな幸せのある日常が。


───


アルカ・藤丸(『アル』クェイド+立『香』)

立香とアルクェイドの娘。

人と真祖の間に産まれた奇跡の子だが、案の定アルクェイドのコピーじみた外見・身体スペックになった。

ファザコンの気がある……というか母は父を巡る良きライバル。両儀さん家の娘さんのようだ…。

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