人を██ば穴一つ
「…俺は、オマエを助けた理由に論理的な思考を持ち合わせていない」
「危険だとしてもお前の様な善人が死ぬのを見たくなかった」
違う、俺は善人なんかじゃない。
「それなりに迷いはしたが、結局は我儘な感情論」
「でもそれでいいんだ」
皆が見てる『俺』は偶像なんだ。
「俺は正義の味方じゃない、呪術師なんだ」
「だからオマエを助けたことを一度だって後悔したことはない」
現に今、辛そうにしている伏黒を見て俺は笑ってる。
「…そっか」
自分のエゴを押し通して俺を助けたからそんなに苦しむんだ。
あの時に殺しておけば今より苦しまずに済んだのに。
「伏黒は頭がいいからな、俺より色々考えてんだろ」
今ここで死んでも宿儺に交渉して蘇生してもらえばいいか。
「この世界は不平等で理不尽でしかないから、せめて大切な人くらいは幸せになって欲しい」
まあ、俺に、宿儺に会った時点で伏黒に救いなんて無くなったけど。
「あー悪い、そろそろだわ」
もし俺が伏黒や高専側に不都合なことをしたら、宿儺に唆されたとでも思うのだろうか。
責任転嫁も甚だしい。
「伏黒も釘崎も、五条先生…は心配いらねぇか」
神も運命も無いからこうなってるのに、裏切ったら神の、宿儺のせいにするんだろう。
「長生きしろよ」
隣の不幸は鴨の味。