交わる剣と剣

交わる剣と剣


「大王、少しいいか。私と手合わせを願いたい」

「…は?」

白い大王がこの世界に来てから半日が過ぎた。彼は相変わらずこの状況をどうするか、寝る間も惜しんで考えていた。そんな所に窓から入り込んだメタナイトが声をかけ、今に至る。

「生憎だが、俺はお前の期待に応えられるような実力を持っちゃいねぇぞ?」

「それでも構わない、ワドルディたちからきみが剣を使っていたとの情報を耳にしてな。1つ手合わせをしてみたいと思ったのだ」

「…わかったよ、お前ならそう言うってわかってたからな」

「感謝する。ワドルディ、中庭を借りても構わないか」

「はい!お好きにどうぞ。」

「では大王、行こうか。…躓いても大丈夫なように手でも繋ぐか?」

「バカ言うな、俺はそこまで落ちぶれてねぇよ」

「おや、これは失礼」

「(やっぱりこいつは苦手だ…)」

☆☆☆

「では大王、剣を」

「…おう」

中庭へ移動したメタナイトはデデデに剣を出すよう命じる。デデデはどこからか剣を出し、メタナイトへ向けた。

「けどよ、どうして急に手合わせなんか…」

「きみは何十年もゼロに飼い殺しにされていたのであろう?ならそれなりに体も訛っているはず。それにゼロと戦う時、何も出来ないと困るからな。…きみはハンマーを持ち合わせていないのか?」

「壊されたよ、身体を乗っ取られた時に」

「…すまない。では始めようか」

「ルールは?」

「私がやめだと言うまで。それでは…行くぞ」

メタナイトの目の色が変わる。デデデは剣を構えるが、次の瞬間猛スピードで突っ込んできた。

「うお…っ!?」

咄嗟に剣を前の方へ突き出し、鍔迫り合いとなる。が、デデデは思った以上に力が弱く、剣をいとも簡単に吹き飛ばされてしまった。

「あぁ…!」

「(…弱ってはいると感じていたが…まさかここまでとは)」

「くそっ!」

弾き飛ばされた剣を取りに背中を見せるデデデ。剣を掴むも、間髪入れず次から次へとメタナイトは攻撃を仕掛ける。

「おいっ…俺は怪我人だぞ!?ちったぁ手加減…しろ!」

「手加減だと?戦いにおいてそんなものは必要ない、全力で向かってこい!」

「こんの…戦闘狂アホ仮面!」

時折デデデの方も剣の振り方等変えてみるも、メタナイトは全てを受け流す。デデデは徐々に息が上がり始め、判断も鈍くなっていく。

「はぁ、はぁ…」

「構えがなっていない!その程度では誰も守れないぞ!」

「…っ!こっちの気も知らねぇで、偉ぶってんじゃねぇ!」

当たらないことに頭に来たのか、デデデは力任せに剣を振るい始める。メタナイトはそれを受け流し『れんぞくムーンショット』を使う。

「おま…飛び道具は反則だろうが!」

「道具は使わないと、私は言ってないが?」

「(こいつ…動きが全然読めねぇ…)」

「…隙あり!」

「な…」

デデデが考え事をしている間にメタナイトは懐に潜り込み『アッパーキャリバー』を繰り出す。上空へ上がるとデデデの身体を斬り刻み、地面へとたたき落とした。

「あぁ…!大王様ぁ!」

2人の勝負を見守っていた全員は決まった、と誰もが思った。しかしデデデはゆっくりと立ち上がる。

「…まだやるつもりか」

「………」

ぼたぼたと血が滴り落ち、白い服を汚すも生気のない顔をメタナイトに向けた。

「(…なにか様子がおかしい。構えておこう)」

「………今度は、こっちの番だ」

「…!(早…)」

デデデがそう宣言すると一瞬の間に距離を詰め、そのまま斬り捨てた。

そして…

「…………!?」

パリン、となにかが割れる音がした。何とデデデはメタナイトの仮面だけにダメージを与え、割ったのだった。メタナイトは咄嗟にマントで自分の顔を隠す。

「…ぅ」

「だ、大王様ぁ!?ご無事ですか!?」

「(なんだ…今のは…)」

デデデはそのまま地面に倒れ付し、気絶してしまった。目を回すデデデを見ながらメタナイトはそんなことを考えた。

☆☆☆

「…で、俺はその後部屋に運ばれて今まで気絶してたと。」

「あぁ、あの勝負はきみの勝ちにしよう。それと…少し大人気なかったな、すまない」

「少しじゃねぇよだいぶだぞ」

デデデ城内部は夕日が傾き、部屋はオレンジ色に染まる。テーブルにはお茶菓子が並べられていた。

「…それで、あの力は何なんだ。私の仮面を一撃で割るとは」

「………俺にもわからねぇ」

「ふむ、そうか。おそらくだが、今まで抑制されていた力が一時的に解放されたのだろうと私は考えている」

「抑制されていた…力?」

「例え話だが。その可能性が高い」

「…よくわかんねぇな」

「さて、今日はここまでにするか。今日はひとまず身体をゆっくり休めたまえ。明日また再開するぞ」

「おい明日もやんのかよふざけ」

「さらばだ」

デデデが何かを言う前にメタナイトは窓から飛び去って行ってしまった。

「…ったく……まぁ…今まで稽古なんて付けられたこと無かったからな…悪くは無い、かな…」

夕日をバックに飛び去っていくメタナイトを見ながら、デデデはそう呟いた。

◆◆◆

「大王様!お洋服、汚れてしまいましたね。お着替え持ってきましょうか?」

メタナイトが城を去った後、バンダナワドルディは替えの洋服を持ってデデデに話しかける。

「いや、いいよ。この服は俺が洗ってまた使う」

「ですが…」

「この世界の俺が帰ってきた時勝手に使ってましたー、だなんて悪いだろ?だから大丈夫だ。気遣いありがとうな」

「そう、ですか…あ、ではお先にお風呂どうですか?お夕飯は大王様がお風呂に入っている間に準備しておきますから!」

「お、いいな。じゃあ行ってくるよ」

「はーい!」

☆☆☆

デデデは風呂場に付くとマントとガウンを脱ぎ始める。頭に付けていた王冠は乗っ取られた際にハンマーと共に破壊されてしまった。

服を脱ぐと、暗黒物質たちに注がれたエネルギー痕がまるでタトゥーのように見える。

「(こんなの、見せられるわけが無いよな)」

デデデは鏡越しに自分の姿を見る。右腕は落とされ、右目は暗黒物質の注がれたエネルギー痕が色濃く映し出されている。

そのままシャワーを浴びるも、デデデは煮え切らない気持ちを抱いていた。自分がこうしている間も、自分の世界の方のデデデは辛い目にあっているのだろう、と。しかし今帰ってどうなる?これはあの悪夢から一時的に逃げているだけだ。

「…どうすればいいんだ…」

『だいおう』

「…!?」

デデデが考え事をしていると、浴槽からカービィが顔を出す。夢か現実かわからずにいるとカービィは再び口を開いた。

『ねぇ、きみはこんなところでなにしてるの?にげたの?あれから』

「ち、違う…俺にもわからねぇよ…どうしてここにいるのか…」

『だめじゃないか。きみはひとりでこくみんをみごろしにしたつみをつぐなわなければいけないのだから。これじゃあ、ここのデデデがかわいそうだよ』

「たしかに俺は1人生き残っちまった…でも、でも…」

『ゼロがきぼうをあたえたうえでへしおるのは、きみもよくしってるでしょ?これはただのゆめ』

「やめ、やめろ…」

『はやくさめなよ。このゆめからさ』

カービィはそう言うとデデデの右腕があった場所に触れる。触れた部分からまるで発火したかのように熱を帯び始め、デデデは叫ぶ。

「あ…あ゙ぁぁぁぁぁ!!!」

「大王様!!!」

大王の叫び声を聞きつけ、バンダナワドルディが飛び込んでくる。デデデが再び浴槽へ目をやると、そこにカービィの姿は無かった。

「…どう、なされたのですか?まさかまた幻覚を…」

「……なんでもねぇ。騒がせて悪かった…そういえば、俺腹が減ったわ。飯、出来たんだろ?」

「え?あ、はい…食欲されあれば、食べます?」

「もちろんだ」

そう言うとデデデは駆け足で着替え、自分の部屋へと戻って行った。

「…大王様………」

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