五条戦の日に宿儺の身支度を手伝わさせられる小娘の話
183_3■ここだけ宿儺から小僧への好感度が https://bbs.animanch.com/board/2589332/ で伏黒宿儺に掻っ攫われて手元に置かれて五条戦当日に身支度を整えるのを手伝わさせられる話の虎杖♀バージョンです
※虎杖♀な話です
※該当スレの内容からちょくちょく良いですね……それ……となった箇所の要素をお借りしたりしています
※具体的に記載すると「虎杖♀が十二単を着させられている」「五条が獄門疆から解放後羂索の所飛んでった時に虎杖の奪還を試みる」「虎杖♀の足の腱が宿儺の手によって切られている」等の要素があります
※以上の事が大丈夫な方はどうぞ
※問題があれば消します
「小娘、起きているか」
寝たふりをし続けたい、なんて気持ちを抑え込んで重たい身体を起こした。
歴史の教科書で見た時重たそう、なんて事を思ったものだけれど、想像通り何枚も重ねられた布はずしりと身体に重たさ伝えて来る。
声をした方に視線を向ける、真っ白な格子の外側に、忌々しい事に見慣れた相手が立っていた。
普段は、まるで身体に走る呪印を見せびらかすように服はだけさせているのに比較的着込んでいる。
後は片手に抱えてるいる、黒い羽織を着れば完全に出掛ける際の姿だ。
今すぐにでも殴りかかりたい気持ちを抑え込む、ここから、外に出る術をこちらは持ち合わせていない。
趣味の悪い赤い床と壁、柱は白と言うどこかの生得領域を思い出す場所に押し込められてから何日が経っただろうか。
真っ白な格子は帳に似た何からしい、少なくとも自分は出る事が出来ず、そして、宿儺は通れる事だけは分かっていた。
「何」
「お前の下に通う事に何もあるまい」
「……」
当然のように格子を抜けて、歩み寄ってくる、通うと言う言葉に何か昔にごちゃごちゃ言っていたような記憶があるが、話半分で聞いていたので詳細は思い出せなかった。
どれにせよ、自分に関しては良くない話だったのは間違いないだろう、宿儺はそう言う生き物だ。
無造作、と言うよりは当然の事のように歩み寄ってくる姿はこちらを神経を逆なでしてくるが、殴ろうとしても多分止められるだろうな、と何度か繰り返した事を思い出す。
「そんな目で見てくれるな、出かける前に顔を見たくてな、何か欲しい物はないか」
「ない」
「お前は無欲で困る」
全く、困っているようには聞こえない声で、宿儺は笑みを浮かべてこちらを見下ろして来る、手は、届く距離、だけど、それだけだ。
睨みつけても、機嫌よく流されてしまうと言うのは分かっているので視線を向けるだけにする。
「お前が望むのならば、蓬莱の玉の枝でも用意するのだがな」
名前だけは聞いた事がある物に思わず顔を顰めてしまう、だって、それは、確か昔話の求婚を受ける条件に欲しがった物だった筈だ。
そう言う意図が無いとは思うけれども、気分が良いものでも無いし、受け取る事自体に何か意味がありそうな気がして、何にせよ絶対に渡されたものは受け取らないでおこうと心に誓う。
目の前に座られて、こちらに向かって伸ばされた手を叩き落としてその姿を視界に収めつつ、出来る限り逸らした。
その姿を見て居たくはないが、話しかけられるのを無視して壁の方を見ていたら抱き上げられて抱えこまれた事があった。
「いらない、お前から渡される物はなにも受け取らない」
「ふむ……未だ拗ねているのか?」
「……は?」
こちらに向けられた目がまるで、子供の駄々を眺めるような目に見えて、反射的に握った拳を繰り出していた。
手首を掴まれて、拳を突き出した勢いのまま引っ張られる、離れなくては、と思う暇もなく抱きしめられる。
片手を腰に回されるだけでも、服の重さの影響で酷く動き難い腕力で上回れて居るなら尚の事、こうなった以上、宿儺が飽きるまで離れる事は不可能だった。
「お前の足の腱を切った事、だ」
「っ、!」
服の上から足を、足首を、そこに刻まれた傷跡を確かめるように触れられる。
切られた時の痛みと、その時の出来事を覆い出して、勝手に身体が強張ってしまう。
あの日、五条先生が封印から解放された日、逃げ出そうとした俺の足の腱を、宿儺は術式で切り裂いた。
怪我をした足で逃げ出す事も出来ず、後一歩で先生に手が届いたのに、今日のように抱え込まれて、帰れなかった。
先生の声が忘れられない、あの時は、直ぐ意識を落とされてその後どうなったのかは分からなかった。
ただ、起きた時にはここには放り込まれていて、化膿だとかには気を付けられたものの、自然と直るまま放置された足は以前のように歩く事も難しくなってしまった。
「望むのであれば直してやっても構わんが、お前は少々御転婆が過ぎるからな、今日が終わるまでは大人しくしておけ」
「……っ、いらない、何も」
「小娘、お前が何に期待しているかは大凡予想出来るが、そうだな、揃いの六眼でも見れば諦めもつくだろう?」
宿儺のその言葉に、今日がその日なのだと分かってしまった。
少なくとも日付が指定されたのなら、その日以外何かすると言う事は無い筈だから、だったら今日があの12月24日なのだろう。
「先生は、負けない、その身体も、お前のじゃなくて伏黒の身体だ」
「では、五条悟に俺が勝ち、伏黒恵が戻れない、と理解すれば、改めてお前は俺の物となるで構わんな?」
「……お前とは、もう約束しない」
以前、軽率に約束を、縛りを受け入れた己のせいで今の事態が引き起こされたのだと分かっていた。
何が起きようとも、もう、宿儺との間に縛りを作りたくは無い。
ただ、誰かを傷付けないだとかそう言った事を条件にされてしまえば、自分がどう答えるかの自信が無かった。
きっと、宿儺は分かっている、分かっていて先程のような言い方をしたんだろう。
宿儺は、五条先生に負ける気は無いし、伏黒の身体から離れる気も全くない。
「この先、何が起こっても、お前を許さない」
酷く愉快げな笑い声が響く、抱きしめてくる力は変わらず、離れる事が出来ない。
暫く笑って満足したんだろう、視線を合わせられる、似合わない穏やかさすら感じるようなその視線に、怖気が走る。
「そこはせめて呪ってやると言えんか」
「そうした方がお前が喜ぶから嫌だ」
「よく分かっているではないか、小娘」
抱きしめられていた腕が離れる、こちら行動を起こす前に、ふわりと頭の上に何かを被せられる。
視界の端に映るのは黒、頭の上から宿儺の羽織をかぶせられている、と言う事を認識出来たのは少し間を置いた後だった。
「やはり、黒にするか、お前には黒が似合う」
「……なんの話だよ」
「先の話だ、小娘、身支度を手伝え、本当は一からさせるつもりだったが、その足では酷だからな、今はそれだけで構わん」
服を床に落とそうと掴むと、その手ごと掴まれて、無理矢理宿儺の肩に服を掛けさせられる。
こう言う言葉で求める癖に、行動を強制してくる所が心底嫌いな訳だけれど、コイツはそれを知ってるのだろうか、いや、知っててもどうでも良いのだろう。
目の前で宿儺が笑う、伏黒の身体で、五条先生と戦いに行く身支度を無理矢理手伝わせて、それで楽し気に愉快げに笑っている。
「土産は楽しみにしていろ、小娘、お前の為に全て誂えてやる」