五姉妹ギャルゲ洗脳純愛√

五姉妹ギャルゲ洗脳純愛√



逆境に強いパーンダヴァを洗脳純愛√へ連れ込むなら少なくとも三年程度じゃダメだと仮定して、

五年かけて警戒を解き、もう五年かけて献身的な純愛選択肢を叩き込む。

そしてダメ押しの五年でパーンダヴァの各ルートヒロインをわし様の持つ身内限定ぶっ壊れた愛のシャワーを浴びせることで、五姉妹のパーンダヴァ気質(正しさを選び、そうでないものを斃す理想的な英雄概念)にじわじわとわし様のカウラヴァ気質(悪徳であろうと愛おしいものは愛おしく、奪われるくらいならいっそ握りしめて逃げてしまおうという悪党概念)を染み込ませていく。


「この男は悪辣だがそれだけでもない。それにここで逃げ出せばまたロクなことにならないのは分かりきってる」 


そんな思いを攻略ヒロインが言い訳アリでなら許せるようになってきた頃、突然に


「やはりわし様は間違えているか?お前を欲しいと思うことは、正しくないか?欲しいと思ったものを愛したいのも愛されたいのも間違いだと、お前はそう言うか?」 


と、奴隷とは名ばかりだった立場を唯一証明する首輪の鍵を持ち出し、ヒロインの首輪を外す。十五年つけさせられていた首輪は、呆気ないほど軽い音とともに外された。


「今夜は離宮で過ごす。人払いはいつもの通りだ。この十五年の恨みをぶつけるなら、…分かるだろう?」


散々やってきた自分の悪どい手口を疲れた顔で揶揄しヒロインに背を向ける。

そうしてヒロインとドゥリーヨダナがいつからか互いの気の向くまま、気兼ねなく通い、泊まり、愛し合うことを知った二人のための離宮へ向かった頼りない後ろ背を見つめながら各ルートヒロインは決めることとなる。

十五年前の屈辱か、十五年かけた愛着か。

──悪を殺すか、愛をとるか。




ゲームなら愛を取る選択肢を選んだところで分岐、各ヒロインが他姉妹の部屋を訪ねるエンディング前の最終会話が挿入される。



「そうだね。お前のそれは、正しいとは言えないね。ダルマの子として法と秩序を愛する者として、私はその愛を肯定してはいけないし、お前の前に立ちはだかり止めるべき立場なのだとも思う。

……だから、姉さんは今から強めの酒をあやまって飲むことにしよう!こんなにも強い酒だ、きっと前後不覚になること間違いなしだ。当然この会話も覚えてはいないだろう。であれば、自分が覚えていないことを咎め罰するのはダルマの子といえど不誠実な行いだ。そうだろう?

……あぁ、いいんだ、泣くな泣くな愛しい妹よ。長い時を過ごせば十分に起こりうる気持ちだ。特にお前は従兄弟殿と関係の深い道を歩んできた。不思議とあの人もお前を気に入っていたし、どこかで奇妙な縁でもあったのかもしれない。 

…確かにね、従兄弟殿は悪心を持ったひとだ。正しく在ろうとしていたお前が自らの選択に悩み苦しんだのは聞かずとも分かる。こんな泣き腫らした目をしているんだ。分からないわけがないだろう。

賢いお前はよく分かっているし、正しいお前はよくよく悩んだ。ならば、お前のその結論が、重く苦しい悩みのなかで出した答えであるとするのなら、…私は否定したくないよ。

だって、愛しい妹の、最愛なのだもの。

……あぁ、泣かないでくれ、可愛い子。私の愛する妹よ。確かに私はダルマの子、法のもとに全てを見定める者。

それでも、それでもね、私は姉なのだ。それなら、いいじゃないか。愛しい妹の幸せを願うくらい、いいじゃないか…」


◇ ◇


「行くんだな。…いや、何となくわかってた。お前がアイツを選ぶことは。

はは、ンな顔すんなって。

確かにな。私とアイツは宿敵同士、かつては怨み憎まれ、何度も暗殺されかけた。今だって腹立つクソ野郎だと思ってるし、今でも、…今でも、許してねぇことはある。

……でもなぁ、今は、それ以上に許せねぇと思うことがあるんだよ。……なんだと思う?

…あぁ、違う。

…違うな。

…はは、それも違ぇよ。

ん、まぁ、答えを言っちまうならな、…その顔だよ。私の大事な姉妹に『どうか裏切り者を罰してくれ』なんて辛気臭ェツラをさせやがったアイツが、今の私は心底許せねぇと思ってる。

このままその顔で居るつもりならいっそ私があのトンチキ王の寝所にカチ込んでこう、丸めてぶっ殺しちまおうかなーんてワッハッハ!冗談だよ、冗談!そんな慌てんなって。

……本当に、愛してんだな。あいつを。

…あぁ、いや、……いいや、これ以上は蛇足だな。姉妹の幸せを願うには、相応しくねぇ言葉しか出てこない。

……。…んん〜?なんだよ、まだ居るつもりか?…あっ、もしかして、まだあのトンチキ王の元に行く決意が固まってねぇのか!?それなら、…って、心配はいらねぇみたいだな。

──行ってこい。私は、いつも通り、ここで朝を待ってる。

……そうだな。きっと、悪くねぇと思っちまったんだ、こんな穏やかな生活も、決まりきった朝でさえ。

それはきっと……、…正しくは、ないんだろうけどな」


◇ ◇ ◇


「そうですか。であれば、私からは祝福を贈りましょう。

…そんなに驚きますか?…あぁいえ、それはまぁ、はい。思うところがない訳ではありませんが、こうも思ったのです。誰からも祝福されぬ道を、愛する家族が往くのは、哀しいと。

例えどのような輩が相手であろうと、姉妹が選んだ相手。一度は納得するべきですからね。もちろん、貴女があの男の悪性に辟易としたならばすぐにでも、遠く離れた場所に居ようとこの私が奴の頭蓋を撃ち抜いて見せます。……。…えっと、…すみません、冗談です。

…まぁ、正直、あの男が姉妹の伴侶たる人物として相応しいのかどうかには異議を唱えたくもありますが、それは当人達の問題。たしか、恋に浮かれた者からすればどんな汚点もお茶目に見えるとそのような例えもあったような…あっ、い、いえ!けして!けしてあの男が汚点まみれのロクデナシだと蔑んでいる訳ではなくてですねっ!?あっ、あぁ〜…そうではなく、そういうことが言いたいのではなく……!

…はぁ、…すみません、少し取り乱しました。

自分では、上手く別れの言葉が言えると思っていたのですが。どうにも上手くいかないものなのですね、姉妹との今生の別れの挨拶、というものは。

…思えば、長い、長い時を過ごしました。私も、何故か神々からの祝福が届かないこの王宮では人より少し出来ることの多いだけの娘でした。そんな穏やかさを含んだ毒壺のなかでは人を憎み続けることの虚しさやわびしさばかり考えてしまう。相手が絶対的な悪ではないかもしれないと感じてしまった瞬間から、それはなお、激しくなった。

……だから、私は祝福します。私は私のために、あなたを祝福する。だから、良いんです。罪悪感なんてもたないで下さい。貴女が、あの男を、あの悪性を受け入れ愛することが出来ると言うのなら、私も、いつか……、

…いえ、いいえ、なんでも。なんでもありません。

改めて、新たなる門出を迎えた愛しき家族へ餞を。『どうか、あなたの愛するひととの生涯に、幸多からんことを。』

…ふふ、いえ、この王宮に留まる前のことを思い出していました。こんなにも長い間なんの特別もなかったのは初めてで、こんな日々は二度とないでしょうから。

あぁ、そうか。何かを授けてあげたい、というのは、このような気持ちから生まれるのでしょうかね」

  

◇ ◇ ◇ ◇

「あーっ!やあっと来ましたね!ずっと待ってたん、ぁ、い、いえ、コホン!

…このような日を迎えられたこと、貴女の道先を祝えること、私は喜ばしく思います。私もパーンダヴァ五姉妹の一員、ならば当然、姉妹の選んだ道先を、その幸いを、心より、…こころ、より…、…。……。……ずび、…すみません。無様な、顔を。

…いえ、いえっ、違うのです!私は寂しいのではなく、悔しいのです!

私は、……私は今でもあの日を夢に見ることがあります。この宮殿で奴隷とされたあの日の屈辱は、未だ記憶に残っている。どれほどの時が経とうと、愛する姉妹を、私達の妻をあの様な場で辱め嘲ったあの男を、私は未だ強く、強く、憎んでいる。

それは私だけではなく全員がそうだった。私達パーンダヴァ五姉妹は、それぞれがそれぞれの恨み辛みと憎しみを持ってあの男の奴隷となった。…分かり合えることは、ないと思っていた。

…でも、月日が経ちました。

五年、十年、十五年。……それは、長い。本当に、本当に長い年月です。

あの男が我々に向ける深い憎しみの底にある感情が垣間見えることが増えた。ろくでもなさの奥にある軽妙さが人を救うのだと知った。だから、分かるつもりでは、あるのです。正しかった貴女があの男を愛してしまった愚かさも、あの男があなたへ伸ばした僅かな希望も。

憎み合うより手を取り合うことを。殺し合うより愛し合うことを望むのは、間違いでは無い。……はず、なのに。

…どうしてか、不安なのです。これでいいのかと。私達は何か、…何か、とてもつもない、致命的な間違いを見過ごしているのではないかと。

……いえ、…いえ、すみません。いつもの、私の先走った妄想です。姉さん達からもよくたしなめられていた例のクセです。だから、きっとこれも勘違いなのでしょう。

……どうか、どうか、幸せに。その道先が、これからも明るく満ち足りた世界となるよう、心より、願います」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「……ん。待ってた。いつ、来るのかなって。思ってたより早かった。

…ううん。いいよ。たくさん、たくさん悩んでたのを知ってる。…ふふ、そう。わたしは色々なことを知ってる。すごい。褒めていい。今なら特別、その腹のなかの子の性別も教えてあげたりする。

…わはは。ひっかかった。相変わらず騙されやすい。よくないね。かわいいけれど、良くはない。

あの狂王はそこを愛したのだろうけれど、わたしたちもそこを愛したのだけれど。…貴女のその優しさはつけこまれる。ほら、いまだって。愛した男のことを想うあまり、◻️◻️の◻️◻️が見えてない。

……なんて言ったか、聞こえない?……なら、それでいい。やがて知ることだ。いまわたしが教えなくても、貴女は聡いひとだから、きっと答えに辿り着く。

……ふふ、違うよ。あの男を選んだことを叱ったりなんかしてない。へたくそなりに考えた、祝いの言葉だ。うまく聞こえなくても、ちゃんと耳をすませて、聞いてくれ。

…貴女は、いつだって正しく在ろうとしていた。その信念は、美しい。……だからこそ、これから先ともに生きる男の悪性を甘く見てはいけない。…あの男は、邪悪だ。いつなんどきその縛りが解けるか、分からない。

幾重にも放棄された◻️◻️の歪みは、もう、すぐそこまで来ている。ここはやがて◻️◻️される◻️◻️◻️。

この幸福は長くない。だから、私が願うのは、ただひとつ。

……どうか、愛したひとと、幸せに。

……なんにも出来なかった末妹からの忠告。

…覚えておいて。

強く、美しく、正しかった。あなたは善きひとだった。

……どうか、最期まで、愛を貫けるよう、願ってる」



他姉妹との会話が終わり次第、女は離宮れ向かう。

物語の終わりを待つ最低最悪な王のもとを、そんな王を愛してしまった愚かな元奴隷が訪ねた。


「……ドゥリーヨダナ」

「……あぁ、来たのか。…獲物はどうした。手ぶらか?……まぁ、それも良かろう。恨み骨髄、なぶり殺すなら好きにしろ。だが知っての通りわし様は我慢強くないタチだからな。痛みと恥で我を忘れれば反射的に暴れるぞ。いたぶるのなら鎖でも持ってきた方が都合が良かったのでは──」


寝台の上、ぺらぺら天井を見上げながら話し続けるドゥリーヨダナへおもむろに近づくと、ドゥリーヨダナの足を引っ付かみ、地面へと引きずり倒した。


「…いっ…だぁ〜〜!!お、お前なぁ!!最期だぞ最期!!最期くらいカッコつけさせてくれても良いだろうが!!好いた女に殺されるならそれくらいのご褒美バチなんぞ当たら───」


後頭部の痛みに呻き、がばりと頭をあげる。

尻もちをついた体制のままドゥリーヨダナは己を寝台より引きずり降ろした女を見上げる。

差し込む月光を背に立ち尽くす美しき女の目元がひどく真っ赤ににじんでいたから、ドゥリーヨダナは息もできない衝撃に口元を覆った。


「…ぁ、……ど、どうした?なぜ、泣いている?どこか痛めたのか?……何か、あったのか?」

「……選んだ」

「…ぇ?」

「ドゥリーヨダナ、あなたが、私の主人だ」


女が手のひらから落とした首輪はカラン、カラン、と音を立てて転がっていく。

首輪は、もうなくていい。







追記

このわし様はガチで戦略を練って練って練って練って練った果てに大勝利を得たわし様。

別名、堪え性パラメーターぶっ壊れ五姉妹(任意固定ルート)ガチ勢ドゥリーヨダナ。

愛したものを手に入れるためならどれほどの時間をかけても構わない。

代わりに、けして自分を裏切らせない愛を植え付け信じ込まさせた。愛した女を手に入れるため、あらゆる手を使い尽くしに尽くした前向きで情熱的なヤンデレ野郎


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