五労星

「くっ、胃薬が切れたか……」

「次はもっと強いのを発注するか？」

「いっそベガパンクに胃を鋼鉄にしてもらうという手も……」

「いや、それは流石に……」

「はぁ…‥何故こんな事に……」

世界最高権力を持つ5人の天竜人『五老星』。

しかし、今はただ胃痛に悩まされる老人たちと化していた。

理由は明白、モンキー・D・ルフィ元大佐とウタ元准将についてだ。

少し前までは全てが順調だった。

何せ世界政府が長年求めても手に入らなかったゴムゴムの実──否、ヒトヒトの実モデル“ニカ”と魔王トットムジカ起動のキーであるウタウタの実の能力者二人が海軍入りしたのだからそれはそれは喜んだ。

おまけにルフィはいくらか目につく行動はあれど英雄ガープの孫であり、アラバスタでは国家転覆を企んだ王下七武海のクロコダイルをスモーカーと共に打ち破って英雄と讃えられている。

ウタも実力はさることながら、その歌声は民たちだけでなく海兵たちの心も癒していて世界的に根強い人気を誇る。

それはたった一日、だった一人によって全て台無しになった。

シャボンディ諸島で二人が出会してしまった天竜人ロズワート一家のチャルロス聖がウタを見初めて妻にしようとして強引な手段を取った結果、ルフィがキレてチャルロス聖を殴ってしまった。

それによって二人は一躍お尋ね者となってしまい逃亡。

海軍は今回の件によって反発者が続出してしまい、ガープを始めとする名のある海兵たちが辞表を叩きつけて大荒れ。

二人を狙うために四皇や革命軍も動いているし、あの二人を黄金帝テゾーロが援助しているという噂もあるとかないとか。

捕まえるにしてもその後どうするかという問題もある。

処刑何でもしようものなら暴動が起きるだろうし、処刑場に四皇と革命軍、その他諸々が勢揃いして最終戦争勃発なんて事態になりかねないし、インペルダウンに投獄するにしてもインペルダウンが更地になるという可能性も充分あり得る。

そもそも世界の根幹を揺るがす悪魔の実の能力者が二人も確認出来ている状態なんて今後数百年有るか無いかなのだから、死なせるわけにもいかない。

しかし天竜人を下々の民が殴ったということでロズワート一家の怒りは凄まじく、お咎めなしというわけにもいかない。

『はぁ、胃が痛い……』

5人の胃に穴が開くのも時間の問題かもしれない。