二頭のりゅうを従えし偉大なる王
カイドウside
最初は単なる興味からだった、何故敵であり、殺し合った中でもあるおれ達を仲間に勧誘したのか疑問でもあったからだ、最初はまぁ…キングを取り返すために仕方なく手を組んだんだが、その後なし崩し的に仲間にされちまった。当然何れはその頭の座は奪い返すつもりではあるがな…しかし俺の思惑とは逆にあの小僧から帰ってきた答えは『おれの好みだったから』だそうだ、呆れて物も言えねェ隣のキングを見てみろ、怒りのあまり背中の炎の火力が上がってんじゃねェか、抑えろ抑えろ、気持ちは痛いほどわかるがまぁ落ち着け、こう言う時は年長者らしく落ち着いて冷静にだな…『最初の頃はな…顔とか見た目とか生き様で気に入った奴を選んでたんだけどよォ、二年の間レイリーと修行をしてた時に歳上のおっさんの良さってやつもわかったんだ、渋いって言うんだろ!』…ふゥー…落ち着け…全神経を宥めるのに費やしたのはババアとの相手以来だ、金棒をフルスイングしなかった俺は褒められるべきだ、今なら鬼ヶ島の時以上の雷鳴八卦が使えるかも知れねェ…と言うか原因は“冥王”か…全くどいつもこいつも!ロジャー海賊団って奴はなんでこう…‼︎あァ…酒が飲みてェ。
アルベルside
おい麦わら…てめェカイドウさんを困らせてんじゃねェ‼︎事実なんだろうがもう少し暈して言うことは出来ねェのか‼︎クイーンの脳なしですらもう少し気を利かせるぞ‼︎ジャック程とは言わねェが、お前上に立つ者なら責めてもう少し気を利かせてだな…‼︎何?『偉い奴ってのは周りを掻き回して話を聞かない奴のこと?』…ッ‼︎燃やされてェのかてめェは‼︎誰の影響だそれはァ‼︎『爺ちゃんとシャンクス』…クソッ‼︎安易に否定できねェ‼︎クソったれ…今ならおれは怨みの念波をマリージョアまで飛ばして殺人ができそうだ…何も考えずに大空を飛び回りてェな…
カイドウside
ふと思えばこいつらとの付き合いは二年前からだったな、酔い覚ましに“楽園”側に行った際にジャヤに不時着を決め込んだ時だった…あの時の小僧が今やこのおれをも従えようってんだからこの海は何が起こるかわからねェ…あの時は…そうだ、確か空島に行きたがってたんだったな、ちっせェ樽三つほどの酒じゃ全然足りなかったがそれでも酒は酒、一酒の借りは作らねェから一応概要と触りだけを言って後は龍になって飛んで帰ったんだが…あいつら本当にあの小舟で行ったのか?旧型の船だろう、あれは、それで“突き上がる海流”経由で空島に行ったってんだから笑い草だ、しかもただ行っただけでなくそこで神をぶっ飛ばして大量の黄金を手に入れて無事降りてきたってんだからな、こいつらは純粋に海賊を楽しんでやがる、海賊ってのは暴力と支配の象徴だと思ってた、実際“ロックス元船長”がそうだったからな、おれにそれを敬ってああいった海賊団を結成したんだが…今思えば自由と冒険をこよなく愛するこいつらに負けるのは必然だったのかもしれねェ…ウォロロロロ‼︎だから…お前の“夢の果て”とやら、楽しみにさせてもらうぜ?“モンキー・D・ルフィ船長”、このおれが船長と認めたんだ…半端で折れたら死んだ後も殺すからな覚悟しとけよ?
アルベルside
この一味との出会いは今思えば二年前の魚人島付近の“赤い土の大陸”だったな…あの時は興味が勝ったのとカイドウさんがやけに楽しそうにそいつらのことを話すから記憶に残っていた…あの時甲板に残ってたのは…たしか、そうだ麦わらとゾロ、サンジにモネだったな、魚人島に行くためにルフィがこちらに食料を寄越してきたのだがその時にゾロとサンジがやけに騒がしかったのを覚えている、今思えば当然のことだったな、ルフィが他人に自分の食糧を与えると言うのはカイドウさんが自分の酒を他人に譲渡するに等しい、つまりはありえねェってことだ…そこからわずか二年でおれ達を倒して従えるってんだから麦わらの王としての器が見て取れる、それとこれは絶対に本人には言ってやらねェが、あの時政府の実験棟から助けられた時は素直に感謝している…またあの日に戻るのかと思ったら死にたくなった、だがそれを止めたのは麦わらだったな…政府の連中から聞けばつまり奴の能力、“ゴムゴムの実”ではなく“ヒトヒトの実”モデル:ニカ、とのこと、そしてそれはジョイボーイの能力であるとされているらしく解放の戦士、太陽の神とも言われている…おれの一族が言っていた…いつの日かこの世に自由と解放をもたらす太陽の神が降臨すると…それが本当に麦わらなのだとしたら…まぁあの男が語った“夢の果て”とやらには興味がある。おれ個人にとっての解放者、つまりジョイボーイはカイドウさんだったが、おれ達の種族、ルナーリア族の解放者、ジョイボーイは麦わらだ、ならばおれはこいつが作る世界を目にしてみたい。そう誓い、しかし決して口には出さず、あくまでカイドウさんについて行くという名目でこの船に乗った、それだけだ、この男なら大丈夫だろう、何せこのおれが認めた世界最強の男を正面から倒したのだから“夢の果て”とやらを見せてみろ、“モンキー・D・ルフィ船長”
fin