二度目の初恋

二度目の初恋



 エレジアの事件解決後、私はシャンクスとも和解し、エースとサボ、それにウソップたちの助けもあったおかげで私たちは逃亡生活にピリオドを打つことができた。

 その日はルフィの提案もあり、赤髪、白ひげ、ウソップ、ハートの海賊団そして革命軍、それにゴードンさんたちのみんなで大きな大きな宴をすることになった。

 宴自体はすっごく楽しかった。

 本当だ。久しぶりにルフィ以外の気のおけない人たちと歌ったり踊ったり、食べたりするのは心から嬉しくて笑いながら涙が出てきてしまうほどだ。

 だけど何よりも嬉しかったのはルフィが太陽のような笑顔を取り戻してくれたこと。

 やっぱりルフィは私だけじゃなくみんなと一緒に笑っている時の子供っぽい横顔が一番素敵だなぁ。

 そんなことを考えていると顔が紅くなり、不意にルフィから顔を背けてちびちびと手元にあった飲み物を飲む。

 ・・・なんだかとっても喉が乾いてしまう。

ルフィ「ウターーーー!!! アンコール歌ってくれよ!!!」

ウタ「ひゃ、ひゃい!」

 背後から突然抱きつかれ私は思わず飲み物を落としかける。

ルフィ「わ、わりぃウタ!!」

ウタ「う、ううん!だ、だいじょうぶでしゅ」

 けどそれ以上に後ろからルフィに抱きつかれたことにどぎまぎしてしまう。

 お、おかしい。今までの逃亡生活なら私は抱きつかれた時、離してほしくないという思いのほうが先行していたはずだ。

こんな心臓がバクバクすることなんてなかった。

 ・・・あれ? 心臓の音が2つある? あれ?

ルフィ「ごめんな、ウタ…おれなんかしたか?」

 ルフィが離れてしまう。心臓の音も1つになる。

 安心するような残念なようなまるでルフィにまた恋をしているような・・・

ウタ「こ、こい!?」

ルフィ「こい!? こいが食いてぇのか!? ちょっとまってろ!!!」

 ルフィが立ち上がり、ご飯がいっぱいある場所に向かおうとする。

ウタ「まっ、まって!!! ち、ちがうの!!! そういうのじゃないの!!!」

 慌ててルフィの服を掴み引き止める。衝動的でドキドキして目がぐるぐるまわる。

ウタ「そういうのじゃなくてルフィに抱きつかれて頭が沸騰するというかびっくりしたというかルフィかっこいいなとか!!!」

 あー!! あー!! あー!! 何いってんの私!? 

 お互いに裸ももみてるしあんなやことやこんなことしてるのに!?!?

ルフィ「そ、そうか。だったら良いんだ」

 ルフィがそう言うと私の手をつかむ。

ウタ「あっ・・・」

 お互いに沈黙し私達の間にだけ静寂な時間が流れる。

ルフィ「ウタ・・・。おれちょっとこええんだ。ウタに嫌われてんじゃねぇかって」

ウタ「え・・・?」

ルフィ「あいつをぶん殴ったのは後悔してねぇ。けどよ、そのせいでウタが傷つきまくったのはおれのせいなんじゃねぇかって」

ウタ「ルフィ…?」

ルフィ「ほんとはよ、おれどっかでお前の笑顔を守るっていいながら、ほんとは・・・おれがウタを取られたくなかったからってだけで・・・!」

ウタ「・・・」

ルフィ「だからよ、お前がおかしくなってたって、わかってたのに…それでもお前の笑顔のためだって…! 目ぇそむけて…!」

ウタ「ルフィ…!」

ルフィ「ウタ?」

 私は全身を使ってグズグズに泣くルフィを抱きしめる。

 あー、もうかっこいいとおもってたけどやっぱりルフィはまだまだガキンチョだ。そんなことで悩んじゃうなんて。

ウタ「そんなことないよ、ルフィ。あの時天竜人を殴ってくれなかったら、そのまま一緒に逃げてくれなかったら、私、今ここには立っていられなかった。笑顔でいられなかった」

ルフィ「ウタ…! でもよう」

ウタ「ううん。聞いて、ルフィ」

 私の脳裏によぎる、私がずっとルフィに投げかけていた言葉。

ウタ『ルフィ、ごめんなさい。ごめんなさい。私のせいで、ごめんなさい』

 きっとこれは私がかけた呪いだ。だから今ルフィは苦しんでいる。

 呪いは解かれないといけない。そのための呪文を私は目一杯の笑顔とともに唱えなた。


ウタ「ありがとう、ルフィ!!! 私を助けてくれて!!!」


ウタ「辛い時にいてくれてありがとう! 私の笑顔を守ってくれてありがとう! 私の正義を守ってくれてありがとう! 一緒に逃げてくれてありがとう! 笑ってくれてありがとう! 私が今生きているのはルフィのおかげだよ、ありがとう!」

 薄暗いときもあった。疑心暗鬼に陥ったときもあった。狂気に飲まれかけたときもあった。ルフィ以外いらないなんて思ったこともあった。

 そんな間違った考えを全部ぶっ飛ばしてくれたのがいつだってルフィだ。

 だからありったけの感謝を私の幼なじみに伝えよう。

ウタ「だから・・・ってルフィ?」

 ルフィはうつむいて麦わらぼうしのせいで顔が見えなくなっている。

 余計なこといっちゃった!? ど、どどどどどうしよう! や、やっぱり青臭いというかわざとらしいのかな!? でもでも、本当にルフィには感謝しかないし!

ルフィ「ウタぁ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」

 がしっとルフィは私に抱きつく。

 その顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃで・・・でもさっきのような思い詰めた涙じゃない感極まった時の涙だった。

ルフィ「おれだっていつもウタに助けられてよォ!! おれのわがままいつだって聞いてくれて!! 腹減った時にはメシいつも分けてくれてぇ!!」

ルフィ「ありがとうっつーなら…おれのほうだ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」

ウタ「ルフィ、ルフィ、ルフィ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」

 そこからは泣いた。二人で泣いた。抱き合って泣いた。泣いて泣いて泣いて泣きわめいた。


サボ「おーい、二人共落ち着いたか」

エース「全くお熱いこって」

 サボとエースの声を聞き、私たちは互いを抱擁していた手ばっと離す。

ルフィ「え、え、え、え、エース、サボ!!! いつからそこにいたんだよ!!!」

エース「結構前からいたぞ…。しっかし、お前そんな顔真っ赤にしやがって。よっぽどウタのこと好きなんだな」

ルフィ「当たり前だ!!! ウタのことは好きだ!!!」

エース「そういう意味じゃないのはわかってんだろ、ルフィ」

 エースが呆れたようにそういうと先程の勢いはどこへやらルフィは口をつぐみ顔を真っ赤にする。

 えっ待って? ルフィの顔が真っ赤!? ちょっとまって、え、そんなっでもえっと・・・

サボ「おいおい、まさかおまえたち・・・」

 そう言ってサボが私の顔を見るので、私は両の手で周りに自分の顔が見えないように覆い隠す。

エース「まっっっじか、お前ら・・・今更その段階なのかよ・・・」

 今は周りは見えないがルフィもおそらく私のように顔を伏せているのだろう、サボとエースの驚きと呆れるようなため息が聞こえる。

 再度いうが私とルフィは寂しさをまぎらわせるために、あんなことやそんなことを・・・って今考えるとメチャクチャ恥ずかしいいいい!!!!!!!!

 そして、今、自覚する。


ウタ「ひゃー」

 その日、私は二度目の初恋をしたのだった。

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