二人で
「MEMも無茶言いやがって…」
アクアは深夜の自室で、ベッドの上でつぶやいた。
あいつらを抱くだって? 何を考えているんだ。
MEMにとってはただの冗談かもしれない。それでも、その発言は、最近の二人のアプローチを考えるとある意味生々しすぎた。
しかも、精神的にも追い込まれていたアクアにとって、そのようなかたちで要望を発散してしまうというイメージは、それはそれで彼自身をも刺激してしまうものでもあった。
「くそっ…」
とにかく考えを振り払おうとする。
その時、突如、ノックが響いた
「……うん?」
ドアが開く。
「おにいちゃん…」
「ルビー!?」
何故こんな時間に。しかも暗がりのなか、ルビーの声の方に目をやったアクアは驚愕した。
「有馬!? なんでお前まで!?」
有馬かなはそれには答えず、静かに、と顔の前で指を立てる仕草をした。ルビーが少し楽しそうに笑う。
二人とも、寝具姿だった。
その薄地の生地が、どこか艶めかしい。
つい先ほどまで彼女らについての妄想に囚われてしまっていたアクアにとり、それは目の逸らしがたい何かではあった。
「私達、MEMちょから色々言われてね。今はアンタの気持ちを動かすのは無理だから、とりあえず、ね。だから、色々相談して、こうしよう、と決めたのよ」
「先輩に譲ってあげるって言ったのに、先輩強情だからさぁ…」
「こっちのセリフよ。この子は本当に素直じゃないんだから」
そう言いながら、二人はアクアを左右から挟み込むように、アクアのベッドに乗っかってきた。
「おい、お前ら……!」
「アンタが誰も愛さないというのなら、それでいい」
「そうそう、私達、アクアの気持ちを無理矢理どうこうしようとは思わないし」
アクアはベッドの上で起き上がり、後ずさる。二人は、アクアにゆっくりと近づいてくる。
「アンタにやりたいことがあるのは分かってる。だからもうそれについて何かを言うつもりはない」
「おにいちゃんは、やることがあるんだものね」
二人の微かな香水の匂いと、汗の匂いを感じる。
そして、二人の息吹を。その熱を感じる。
「アンタは誰も愛さない。だから、これは、そういうものじゃない。そう、私達は…ちょっと変な気分になって、なんとなくアンタの部屋に入り込んでしまっただけ」
右から、有馬かなの声が響く。その息を感じる。
「おにいちゃんが何かしようと、悪いのは私達」
左から、ルビーの声が響く。その息を感じる。
「アンタがうっかり何かをしでかしてしまったとしても、それは私達がきっかけだから」
「そうそう。私達が油断しただけだよ」
「そう、だから、アンタは好きにすればいい」
「おにいちゃんの好きに、ね…」
アクアは、もはやただ動くこともできず、二人を見ていた。
二人は、微笑んだ。
「だから…こっちを見て? あーくん?」
「ね? おにいちゃん?」
そして二人は、アクアの前で、ゆっくりと寝具を脱ぎ捨てた。