事務員の必需品

事務員の必需品

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その日は、ミレニアムサイエンススクールへと赴いていた。


犯罪者の捕縛に、ミレニアム内で日夜行われている発明品が使えるのでは無いか? と言う提案があったのだ。

無論、技術の流失を防ぐ為にシャーレの管理下で、と言う条件でだったが。


試作品を確認し、いくつかをS.C.H.A.L.E経由で各学園の治安組織でテストをする事なっている。


引き渡しの書類にサインするのだが……


“………書けないや”


インク切れだろうか、ボールペンのインクが出なかった。


「先生、こちらをどうそ」

スッと、ペンが差し出される。


“ショウコ、ありがとう”


ペンの主にお礼をいうと、サラサラと署名し、返却しようとしたのだが

「……そのまま、しばらくお持ちになっていて結構ですよ。まだサインする事もあるでしょうし」


一見、素っ気ないが、彼女を良く知るなら少しだけ、機嫌の良い声で返答があった。

それもそうか、とペンを差し出そうとした手を戻した。


“このペン、何時も使っている物と同じだね?”

「ええ、このような外出先でシャーレとしての署名をする事もあり得る訳ですから。 同じ物を購入して携帯しています。


同じペンで書かれている方が書類の収まりも良いですし」


“大事に使ってくれているようで嬉しいよ”

「はい、私にとっても手に馴染んだものですから」

“私が、シャーレにショウコが来た記念に贈った物だからね”


「………そうですね」


文具の専門店でしか見かけない。 

しっかりした作りの、高級感のあるボールペン



彼女が、事務員としてシャーレに来てくれた記念として。また、実用足り得る物を選んで贈った物だ。


その後もいくつかの装備品と、運用にあたるコスト等をショウコと確認すると、シャーレのオフィスへと戻った。






(…………言えませんね、オフィスで使っている方が新たに購入したもので。

常に持ち歩いているこちらの方が『貴方から贈られた物』だ、なんて……)

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