事前アンケート
「…ではこうしよう。今から殺し合って小僧が勝ったら無条件で、俺が勝ったら俺の縛りで生き返る」
「『いいぜ──」
馬鹿な小僧だ。彼我の差もわからず承諾するとはつくづく愚かしい、
「──ただし、俺からも条件がある』」
「は?」
想定していなかった言葉に、即座に頭を斬り飛ばすつもりで掲げた手が止まる。
「だってこの条件だと、交代はお前側からだけだろ?俺からも呼び出せるようにしたい」
「何を言っている、これはお前を生き返らせる条件としての縛りだぞ。釣り合いが取れん。お前が弱いせいでまた俺に下らん虫の相手をしろと?」
「あーいやいや、主導権を変われとかそういうんじゃなくて。ほら、俺の体に目とか口とか出せるよな?それだけでいい」
「…?わからんな。お前にどんな得がある」
「いいじゃん。逆にそっちの損になることでもないだろ」
確かに小僧の得になるとも、俺の損になるとも思えん。ならこの縛りを設ける意味はなんだ?
「よしわかった。こっちの条件を受け入れてくれたら殺し合い抜きでお前の縛りを呑む!それでどうだ!」
意図が読めず沈黙する様子が迷っているとでも見えたのか勝手に譲歩を追加してきた。
ますますわからん、聞く限りでは俺に有利としか思えんが…どちらにせよただの戯れだ。
「…まあ、いいだろう。条件はなんだ」
「よし、ちゃんとした条件を決める前に色々聞かせてな!」
◇
Q1.目や口を出す場所に制限はありますか。
「体表であれば特にない、ただし身体機能を阻害する場所へは同意なしに出すことはできん。例えばお前の目がある場所へ重ねるように俺の目を出すとかだな」
Q2.目や口を出す数に制限はありますか。
「目は四つ、口は二つだ。それ以上出すこともできるが、面倒な条件を満たす必要があるから基本的には出来んと考えておけ」
Q3.口に入れたものはどこに行きますか。
「肉体として存在しているわけではないが、強いて言うなら生得領域にいる“この俺”の口だ」
Q4.手に出した口に手の厚さより長いものを入れたらどうなりますか。
「その厚さを越した分が消失とはならん。体表面に出したものがそのまま裏面に繋がっているわけではなく、概念的に俺の肉体への“門”を開いているにすぎんからな」
Q5.出てきた口を完全に塞いだらあなたは窒息しますか。
「あくまで“門”を出現させているだけであって通常の呼吸は必要としていない、よって窒息などはせん。おい、この下らん問答はいつまで──」
Q6.口の感覚はあなたへも「俺へも同時に伝わる!いい加減しつこいぞ小僧、さっさと条件を決めろ!!」
◇
「じゃあ条件はこれな。①俺が“契闊”と言ったら俺の指定した場所に指定した部位を出すこと。口以外の部位を指定した時はお前の判断で拒否していい。②その間絶対に俺を傷つけないこと。以上だ」
「わかったわかった。その条件で縛りを『結ぶ』」
ようやっと終わったと息を吐き、心臓の再生と同時にこの忌々しい阿呆をここから追い出そうと掌印を結ぶ。これなら強制的に殺し合いの方が楽だったが、当初の目的である縛りは問題なく設けたから良しとしよう。ハイお疲れ“解”散、“解”散。
「これからよろしくな、おなh…宿儺!」
頭を斬り飛ばす直前、小僧が何か言っていたが気のせいだろう。