予測されるけれども目に見えない危険は、人の心を最もかき乱す
イグ6を夢見るドーザー「G4、積極的に前に出て応戦しろ!あのイカレた中古車輪には貴様の爆発武器が有効だ、ライガーテイルと主導で対処するぞ!!」
「言われなくてもやってる、クソ親父!ぐおっ……野郎、火炎放射まで付いてやがる!何なんだこの破砕機は、設計者の頭はトんでやがんのか!!」
コーラルを求めた争いの最終局面、集積コーラルの反応が認められた、氷原地下に眠っていた技研都市の戦場は、今や大混戦の様相だった。
相手はベイラムグループのV.部隊、V.Ⅰ、V.Ⅴ、V.Ⅵ、V.Ⅷ……鹵獲されたLC、HC機体多数。それに応対するのが、俺達レッドガンのG1、G2、G3、G4、俺、G6……そして肩を並べるルビコン解放戦線。本来は憎むべき仇敵である企業勢力の側に付いている解放戦線は、流石に大局が片方に傾きすぎた事をちゃんと理解していたらしい。ベイラム本社のクソ共は、ミシガンの野郎がどうにか黙らせたそうだ……が。
「第三部隊、後退しろ!地獄への片道旅行にしたくなければ各自脱出レバーに手をかけておけ!消耗を抑え横槍を入れさせるな!第四部隊前へ!!役立たず共、愉快な遠足の時間はまだまだこれからだ!!」
「うおおおーっ!!」「総長とキャノンヘッドだけにいい所を持っていかれるな!」「解放戦線も続け!」「灰かぶりて、我らあり!!」
それだけで済めばどれだけ良かった事か。高速接近する機影が見えたかと思えば、いきなり都市の方からワケの分からねえコーラル反応を撒き散らす高速機体と、これまたコーラルで駆動していると思わしきイカレた武装の破砕機にやたらと速え四脚共が突っ込んできて、それからはもう滅茶苦茶だ。
物量至上主義のベイラム側が、アーキバスの鹵獲による潤沢な惑星封鎖機構の機体を活かした、雑兵共ですら屈強な戦線に押され、それをV.部隊が押し上げる。これじゃあどっちが物量主義なのやら。こっちは精鋭の数で何とか拮抗させちゃあいるが、V.Ⅰの戦力がデカくてやはり押し返される。そこを食い破るように突っ込んできた例のクソ機体共が入り乱れ、互いに互いばかりを意識するのは不可能に近い状況と化している。
「通らんよ、それはな。」「なるほど、そういう動きもあるのか……。」「今のはナイルか!よくやった、貴様はそのままV.Ⅰに気を配りつつ遊撃に回れ!」「全く、総長は人使いが荒い……了解だ。」「ナイル殿、そちらは凶穴と見えます。無数の破砕機が来ますぞ。」
それに……一瞬見えた機影、見違える訳がねえ。あいつ、野良犬だ。何故かは知らんがECM装置を纏って、一瞬だけ見えた逆関節特有のスピードに両肩の厳つい氷原の化け物狩りランチャー……相変わらず先行してやがるのか。今度は何をしでかそうとしてやがる?
【イグアス、やむを得ません。このままでは貴方まで失い、計画は頓挫します。まず先に貴方の離脱を優先させます、そのために伏兵の対処を行ってください。】
この前から聞こえるようになった、耳鳴りのように煩え通信。AM……傭兵支援機構の名を使うコイツは、独自の思惑で俺に接触を図ってきた。俺の今最も望むもの……強さを与えるから協力しろ、と。
正直、願ったり叶ったりでもあった。今のままじゃあ野良犬の隣に立ってアイツを助けるとか、そういう俺の願いにはシンプルに実力不足だ。腹立たしいが、ミシガンの野郎に一発お見舞するのも夢のまた夢……とにかく強さが必要だった。
「一々癪に障る……指示ばっかで偉いご身分だなオイ、約束は分かってんだろうなぁ!」
【AMは、計画の成就により貴方の傭兵としての成長を支援します。この乱戦に乗じ、まずは通信のジャミングを行います。次に指定の座標まで移動し、全ての戦果を得ようと画策するV.Ⅱの排除を行ってください。】
「ケッ……あの時の木っ端役人か、如何にもそういうこすい事を考えそうだ。」
指定された座標は、混戦地帯から随分と離れ……何だこの場所、排水溝の奥地?ふざけた場所じゃねえか、自分だけ前線と無縁の場所で高みの見物かよ、気に入らねぇ。
そうこう考えている内に、通信の接触が一気に悪化していった。ざらざらと苛つくノイズが走り、すぐにレーダーまで機能不全を起こし始める。
【大勢は拮抗しているように見えますが、一般兵を含めた物量で勝るアーキバスが押し返すのは時間の問題です。C兵器を排除した後、的確なタイミングで不意を打って出られれば、ベイラム連合軍は壊滅すると見て違いないでしょう。】
あのクソ親父がやられるとは考えたくもないが、相手はV.Ⅰ。奴はこの混戦の只中でも我が物顔で捌きながら、時折ミシガンやナイルを排除しようと動いていた。
レッドガンによるベイラム連合軍……と言えば聞こえはいいが、そもそも解放戦線の戦力はアーキバスはおろか、レッドガンにも及ばない。いるだけマシだが、いないよりマシなだけだ。
指揮、士気、そして武力で前線を支える指揮官と副官が潰れれば、後は雪崩れ込むだけ……想像に易い。木っ端役人はそれを狙っているんだろう、イラつくぜ。
通信の混線と、戦線の混線に紛れ、都市の残骸を縫うように進む。二度目の足抜け行為……今度こそミシガンに死ぬまで殴られるだろうが、今度会う時はあいつを殴り返す時だ。でなきゃこうする意味は無え……。
「どう……通信……途絶え……G5……」「スネ……閣下、……を……」「急に何……やめ…………破砕機……」
悪いなミシガン、お前には恩を仇で返しっぱなしだ。ヴォルタ、殴られ損させちまってすまねえ。だが、俺はそれでも……。
戦線を越え、排水溝を進む。すると道中にはMTが配備されているが、この程度は物の数ではない。伊達にレッドガンでクソみてえなシゴキは受けていない。
「ベ……ム所…AC!?何故ここ…、通信が……スネ……」
【計画が成就すれば、貴方は人類として、より上のステージに立てます。計画の裏切り者……独立傭兵レイヴンも、敵ではなくなるでしょう。全ては我々AMにお任せください。】
「指示が終わったなら、テメェはもう黙ってろ……キンキン耳鳴りがして煩えんだよ……!」
クソ、此処に来てまた耳鳴りが酷くなっている……イラつく、イラつくぜ……こうしないと強くなれねえ自分にも、また野良犬の背中が遠のいていく感覚にも……。
排水溝を突き進み、光が差し込む方向に近付いていくと、通信が聞こえてきた。
「ええい、此処まで私の計算が狂うとは……!だが、まだ修正は利きます。レッドガンが疲弊し、フロイトが隙を生み出したタイミングでミシガンかその副官を落とせば、我々の勝利は可能……駄犬の情報が入ってこないのが不穏ですが、如何にあの精強な独立傭兵と言えど、V.部隊全隊と私、封鎖機構のHCとLC部隊で叩けば物の数では……。」
この期に及んで、まだあの野郎は……!
「見つけたぜ……あいつらの言った通りだ!」
先手を取って不意を打ち、リニアライフルとミサイルを周辺の雑魚共に叩き込んで殲滅する。周りの雑魚が片付けば奴の機体は鈍重、バランスに優れた俺の機体なら競り勝つのも……!
「貴様はベイラムの……何のつもりだ!狂犬が私に楯突くというのか!」
奴もすぐに戦闘態勢を整え、素早く打って出てくる。鈍重な機体の割に、牽制の武装は手堅い。握ったスタンガンとプラズマミサイルは回避が困難で、ACS異常を狙いつつも崩れた所に化け物狩りのランチャー、或いはレーザーランスの突貫を狙うスタイルだ。
突破力も、対応力もある。だが、速度は完全にランス頼りだ。ミサイルはシールドで受け流しつつ、デカい一撃を食らわないよう予兆を見極め続ければ……。
「不愉快なんですよ、旧世代型は……貴方も彼女も、カビの生えた存在だと自覚しなさい。あの駄犬も……狂犬も、私の気分を害する!」
「テメェに野良犬の何が分かるってんだ!知ったふうな口利いてんじゃねえ木っ端役人!!」
的確に、的確に相手の重い一撃を往なす。皮肉な事に、野良犬が普段から矢鱈と振り回してた獲物がこの木っ端役人とダブっていたのが功を奏した。こいつの動きと予兆は、野良犬よりもずっとすっとろい。
たかが世代が上なだけで、たかがそれだけであいつには敵っちゃいねえ。こんな奴、こんな程度で俺は……!
「そこです。」
「ぐあっ……!!く、クソ……俺と、俺とあいつで、こんなに差が……!」
だが、回避を重ねても限界は来る。ミサイルで回避を誘導され、立て続けにENを吐かされた所に畳み掛けるようにしてランチャーを撃ち、いよいよENが底をついた所に強烈なチャージが突き刺さる。
【イグアス、落ち着いて対処してください。貴方ならば、堅実に立ち回れば勝てない相手ではありません。】
「黙っ、てろ……!キンキンと、クソ耳鳴りが……!!」
AMの手はずで受けた支援、OSカスタマイズで搭載したパルスアーマーを展開し、何とか致命打となるランチャーの一撃を間一髪で防ぎ立て直す。以前まではカスタムの容量が足りなかったのだが、あれから何とか搭載に漕ぎ着けた。
「むう、狂犬の癖に守りの堅い……鬱陶しいことこの上ありませんね!」
ちくちくと、両手に握ったライフル二丁でひたすら小さな衝撃を重ねていく。鈍重な奴の機体では、到底回避はままならない。適度に放つミサイルも刺さり続け、いずれ―――
「くっ、私を……舐めるな!!」
「ぐあっ!?」
ACS負荷限界に達し、畳み掛けようとした所を攻性防壁……アサルトアーマーで逆に切り返された。防御面は機体の重さに任せ、攻め手は矢鱈と用意してやがる……!
じわじわと避けきれないスタンガンに蓄積させられたACS異常も畳み掛け、大きくAPを削られる。クソが、俺は……こんな所では……!
「俺を、野良犬と一緒にしてんじゃ……ねぇ!!」
復帰するや否や、素早く蹴りを放って無理やり突き飛ばし、後方にブーストを吹かす。そこを咎めるように向こうもチャージを放つが―――
「土壇場でイニシャルガードだと……見苦しい抵抗を!」
普段咄嗟に使えず、あまり性能も高くはないがそれでも通常のガードより高い性能を持つイニシャルガードを決めて、何とかACS負荷限界ぎりぎりで踏みとどまる。返す刀で再び蹴りを放って追い返し、形勢が傾くのを押し止め……だが、限界が見えてきた。
俺じゃあ、役不足だってのか。俺じゃあ、どうしようもねえってのか……?俺は、こんな所で―――
ドス、と。
そう思っていた所に、予兆なく地面へ化け物狩りのランチャーの弾頭が突き刺さる。
「な―――ぐうっ!何者で……があっ!!」
呼吸の暇もなく急接近した機体が飛び蹴りを見舞い、両手のショットガンを胴体に叩き込み―――更にアサルトアーマー。容赦なくもう一発―――撃っていない肩のランチャーを叩き込んで、撃墜。
「馬鹿な……この私が、駄犬……に……!?」
一瞬身構えたが、この状況。俺の余力でコイツを相手に出来ないのは、最初から理解していた。だから抵抗するのはやめにした。
「……?いぐ、あす。てーこーしない?」
「しても……無駄だろ。こんだけやられといて、こっからお前に勝てってのか?」
「いぐあすなら、あきらめない、かなって。……すねーるあいてに、よくがんばった、ね。」
所々に損傷と消耗は見受けられるが、野良犬の機体は割とピンピンしていた。ふざけた野郎だ、どうせこいつの事だから、あの乱戦を全部叩き潰した後だろう。せめて何で半壊もしてねえんだよ。中身はあんな可愛い癖に、戦闘となると可愛げのねえ奴……。
【イグアス、何故抵抗しないのですか。相手は独立傭兵レイヴン、ここで排除せねば、我々の計画は……!】
「ゴチャゴチャ煩え、もう消えろ!……こんなん負けだろうが、往生際が悪いぞ。」
【……!!馬鹿な、貴方はレイヴンを越えたかったのではなかったのですか……?我々の計画が……人類と、生命の……可能性が……?……取り込むべきでは、なかった……イレギュラー……。】
AMを名乗る耳鳴りが意気消沈し、遠のいていくのを感じる。ザマア見ろ、クソが。少し気分が晴れたぜ。
結局、俺一人でV.Ⅱを撃破出来なかったっつうのは心残りだが……つくづく俺は単独戦闘に向かねえらしい。それもそうか、俺の隣にはいつだって、ヴォルタの野郎がいたからな……。
「あ、うらぎった。……いいの?」
「良いもクソもあるか、お前に見限られた時点でこのクソ耳鳴りの計画はどうせ御破算なんだ。マトモな戦力でお前に勝てるかよ野良犬。」
【……レイ……、貴女の…とは…………、これも…………?】
耳鳴りが消えたと思えば、別の耳鳴りがしてきやがった。煩え……。
「けーさん、がい。でも、よしとしよー。とりあえず、そこのすねーる、もらってく、ね。ざまみろ、おーるどんまい。やーい、がばちゃー。」
「な、駄犬!何をする、私は……私は企業だぞ!!」
「あっ、おい野良犬!何処行くんだよ!」
好き放題引っ掻き回して、スネイルの入った脱出ポッドだけ拾って飛んで行きやがった……あいつ何しに来たんだよ。
「……それでハンドラー・ウォルター。貴様の言い分では、つまりあのプラントを利用して無節操に星外へコーラルを持ち出すなり、大量に集積させれば破綻を起こし、二度目のアイビスの火が起こる。そう言いたいんだな?それで俺にベイラムの上にマトモな判断を掛け合ってほしいと。」
「それを信じろと言うのですか、冗談も休み休み言ってください。どうせコーラルを好き放題したいという思惑が透けて見えている、お断りです。」
「それについてはあたし達RaD改め、オーバーシアー……ひいては技研の研究データで裏が取れてるよ。信用ならないってんならそっちでシミュレートしてみな。」
「コーラルを使う事については、ここにいるコーラル側の代表、コーラル波形生命体……通称エアに同意を得ている。大量消費や消失には難色を示すにしても、我々人類とコーラルが共存する道を模索する為には、要求を呑むという事だ。」
『はじめまして。私はエア、コーラル波形です。レイヴンとウォルター以外と会話するのはこれが初めてなので、人間の常識とは大きくずれた解答を示す事があるかもしれませんが、どうかご容赦ください。』
「解放戦線としては、企業の犬共にコーラルを持ち出されるのは不服極まりないが……いや、コーラル自身が望むならば、これも搾取ではなく……共生、なのか。セリア、君が今もいてくれれば……。」
「それよりハンドラー、それとレイヴン。さっきの戦闘をやり直さないか?あの機体は何だ、コーラルをあそこまで効率的に武装に仕上げているのも驚異的だが、ハンドラーがあそこまでAC乗りとして強いとは思わなかったぞ。早くやろう、今すぐロックスミスの新しい構成を試したい。今日のアセンでは太刀打ちできなかったからな。」
「少し黙っていなさいフロイト!貴方がいると話が進まなくなる!V.Ⅳ、こいつを摘み出しておきなさい!……くっ、コーラルは真空で急速に増殖する性質がある、確かにこのデータを計算するといずれ破綻が……。」
「最早私がスネイル閣下に従う理由は、あまり無いのだがね……了解したスネイル閣下、では私の新型機体のテストに付き合って貰おう。」
「ラスティ、お前実力を隠していたんだな。いいぞ、お前の新しいスティールヘイズで相手になってくれ、今すぐやろう。ロケーションはどうする?起伏のある場所か、閉所か―――」
……あれから結局、全勢力を招集して、これからの話とコーラルの秘められた危険性、かつて引き起こされたアイビスの火の顛末と、それぞれの思惑、そして円満な解決法について話し合っていた。
野良犬のハンドラーがオーバーシアーとかいう、コーラル焼却を目的とする集団に所属していたり、RaDの頭目までその組織だったどころか、そもそもRaDが隠れ蓑だったとか。V.ⅣとⅢがそもそも解放戦線のスパイだとか。解放戦線の帥父が過去のアイビスの火に関わっていたりとか……教養のねえ俺には最早何が何だか分からねえ。
これら全部の調停に、野良犬が大きく関わってるっつうんだから、いよいよ自分の地頭の悪さが苦しくなってきた。推定年下に置いてけぼり食らう俺はもう何なんだよ……腕前でも負けてるし、情けねえ。つうか、V.部隊の上位二人がスパイとか、あいつも相当気の毒だな。
「……ね、いぐあす。あのとき、かみついてこなかった、よね。なんで?」
「何でって……そりゃあ……。な、何でも良いだろ野良犬!っせえな!」
大論争の蚊帳の外、部屋の隅で野良犬が俺に話しかけてくる。今回の停戦の立役者であり、あの大乱戦を片っ端から叩き潰したとんでもねえ奴。話に聞く所、戦線を荒らし回っていたC兵器共を双方が疲弊した所で死人が出る前に辻斬りの如く潰し、その後はECMジャマーで補足されないのをいいことに、技研都市の残骸を活かして闇討ちめいてランカーのAC乗り共をいつものように殺さず停止させ、ヤバそうなHC機体を粉砕。
そうして大方片付いた後に、ハンドラーの野郎が乗っていたACの馬鹿みてえな一発で戦場を区切って黙らせ、表に出て威嚇。予め全てを話して調停を掛け合った解放戦線の師父、それを知っていたV.Ⅳ、引き摺っていったスネイルと合わせて、鶴の一声で戦闘を無理やり止めた、とのことだ。無茶苦茶しやがる。
そもそも開戦時に乱入してきたC兵器をこっちに擦り付けてきたのが野良犬で、適度に疲弊させる事とコーラルの危険性、元々あれらを開発していた技研……ひいてはそこに噛んでいたオーバーシアーとRaDの組織としての威を示すのが目的だったらしい。今、交渉のテーブルに就く時にナメられないように、だ。なあ、本当にこいつただのガキか?俺、頭悪いのが恥ずかしくなってきたぞ。つうか出たとこ勝負かよ。
「……じつは、とちゅーから、きいてた。いぐあす、おこってた、よね。なんで?」
「何でって、そりゃ……あの木っ端役人がお前に知ったような事言ってたからで……お前の事とか、何も知らねえだろ、アイツ。」
……聞かれてたのかよ、恥ずかしくなってきたじゃねえか。言葉の意図とかが汲み取れてねえのは不幸中の幸いっつうのか、何つうか。
「?……それで、おこったの。いぐあす、へんなの。」
「変なの、ってお前な。悪し様に言われたら普通イラつくだろ……ああいや、野良犬は感情っつうのが……だあぁ!!」
や、やり辛え。俺のこの気持ちが気取られてねえのは良いが、希薄な感情っつうのがやり辛え。普通の感性と感覚が違いすぎらあ。
何にせよ、野良犬の抱えてたモンが、これで肩の荷から降りたっつうなら……この後……。いや煩えなこいつら、また揉め出しやがった。ゴネてんのはスネイルの野郎か。
「第一、あなた達が実力行使に出ると言うならば本来我々が最も優勢だった筈で」「ちからのさ、わかんないなら、もっかい……やってもいーよ。」「……こ、この駄犬……くっ!」
「へっ、天下のスネイル閣下サマもカタ無しだな?こんなチビスケ一人に押し黙るたあいい気味だぜ。」
「G5!貴様が一体いつからG13より強くなった?次余計な口をこの議論に挟むならば、二度に渡って足抜けしようとした事についてたっぷりと感想文を書かせてやる、覚えておけ!さもなくば今すぐ意中のG13と仲良くおままごとでもしているがいい!!」
「……いや意中ってこのクソ親父!俺はそんなんじゃ……!!」
会議室に残ったレッドガンのメンバーから、微笑ましいモノを見るような目を向けられている……な、何だよ!何なんだテメェ等!!
「お、俺は見世物じゃねーぞ!ニヤついてんじゃねえ!!」
「……?いつう?おなか、いたいの?わたし、いたく……ないよ?」
「お前はお前で腹を捲り上げて見せるな!何やってんだ野良犬ゥ!!」
ちょ、調子狂うぜ……。
議論はしばらく続き、平行線になるかと思いきや、小耳に挟んでる限りでは思いの外建設的に纏まりつつあるらしい。まさかこんな力技から、真っ当な話を全勢力で纏められる事になるとは、思っていなかった。そう考えていた所……。
外から、重々しい音が響く。それも、何度も叩きつけるような。
「す、スネイル閣下!緊急の、緊急の報告です!!」
「何ですか、今我々は企業としての利益と危険に対する必要な話し合い、譲歩について……」
「え、衛生砲が!地上に向けて、無茶苦茶に射撃を開始しています!!それに、む、無数のコーラル反応が……衛生砲から此方に向かってきています!!!」
「―――何だと?」
621:独断専行で企業がドンパチするのを待ってから、C兵器共を引き連れて狂気のトレインした。また、その際にバレないようにザイレム仕込みのECM技術をカーラに用意してもらい、疲弊した所に合わせてC兵器を一掃してからエアのサポートで補給を受け、WショWワーム砲で倒せる者から即闇討ち。なおC兵器に誰かがやられるとかそういうのはケア無しの出たとこ勝負。作戦もくそもないあまりの無鉄砲にカーラは爆笑した。
イグアス:ランク的には2つも上のスネイル閣下相手に頑張った。レッドガン部隊には既に野良犬に対する気持ちの意味がほぼ全員にバレている、はよ告白せえ。
ごす:HAL826のゲロビで威嚇して戦闘を中断させた。結果としてフロイトに実力がバレて付き纏われる事に。621……あいつも友達なのか?
エア:コーラル波形代表に電撃就任。ちょくちょくコ波感して周囲に引かれてる。
カーラ:オーバーシアーの目的としては片手落ちながら、相当笑える事になってきて一周回って楽しくなってきた。
チャティ:ビジター、RaDのチャティ・スティックだ。あれから時折苦い顔はするものの、ボスがずっと楽しそうで何よりだ。要件はそれだけだ、じゃあな。
フロイト:なあレイヴン、あのお前の凄まじい電撃作戦、もう一度やってくれないか?今度の俺の機体なら対応し切れる筈なんだ。ハンドラー、お前の機体についても聞かせてくれ、コーラル兵器への対処法を身に着けたい。ラスティ、その機体の機動力、前にも増して研ぎ澄まされているな……お前が慣れるまで10回先取でロックスミスの相手にならないか?G1ミシガン、レッドガンの歩く地獄と相まみえる事が出来て嬉しいぞ、今度は戦場の乱戦ではなく一対一でやら
スネイル閣下:此処からどうにか他勢力を出し抜きたいが協働した方がマシかとも考えている。デキる現場監督なのだがV.部隊の上位二名がスパイだった事に頭を抱えている、胃薬が手放せない。
ミシガン:この後ベイラムの上層部を説得するのが本当の地獄だと思っている。イグアスはこの後結局殴った。
ヴォルタ:とっとと告白しろ童貞、と思っている。ミシガンに連帯責任で殴られた。
ドルマヤン:セリア……私があの時このような影響力さえ持っていれば、君と共存出来ていたのだろうか……。
ラスティ:戦友がとんでもない背景を手に入れていた、抜けられると困るから一応V.部隊に戸籍が残ってる。調停の時に新型を持ち出した結果としてフロイトに付き纏われる羽目に。
オキーフ:こいつもちゃんと生かして返したせいでAMもレイヴンの離反を察知。今日も泥水のようなフィーカを啜っている。
AM:後がなくなった。和解されてコーラル研究が進んで破綻を抑制出来るようになったりしたらリリース計画が永遠におじゃんになるので衛生砲とそこに駐在していたHC、LC、C兵器をハッキング、総動員してルビコンの勢力を焼き払おうと目論む。決してヤケになった訳ではない。決して。得てしてルビコン3は外から来る者を徹底排除し、内から出る者も一人残らず排除しようという死の監獄に。
イグ野良がおセッセするまで後もう少しかかります。