中略

中略


 カチャリ、と音を立ててはめられた手錠にドフラミンゴが目を見開くと、手錠をはめてきた男は下品な笑みを浮かべて口を開く。


「あぁすみませんね。以前本部からの人間に荒らされたことがあって、身体検査をさせていただくことになってるんですよ」

「……手錠は必要ないだろ」

「必要ですよ。だって能力者でしょう?」


気を抜けば立っていられなくなりそうな虚脱感は、海楼石によるものだろう。それがわかっていながらも、ドフラミンゴにはどうにもできない理由があった。


(あれは幻覚……いや、本当にいるのか?)


前髪の長い金髪の人物が、銃を持って立っている。

海兵同士での拷問紛いの遊びが横行しているこの支部では、それを周囲が異常と思ってないことは異変であるとドフラミンゴには判断できなかったのだ。

舌打ちをして男から距離を取り、鍵を探そうとしたが、ドフラミンゴはすぐに別の男に捕まってしまう。


「身体検査をしてないですよね? こちらです」


腕を掴む力は強く、引きずられるようにして連れて来られたドフラミンゴは、そこか妙に焼け焦げている場所であることに気付き、血の気が引くような感覚がした。


「遅かったじゃねェか」

「意外と動けてんだよ。何か薬盛っとけ」


到底海兵とは思えない言葉を交わしているのは、ドフラミンゴを連れてきた男を含めて7人。一体何をするつもりなのかと身構える間もなく、ドフラミンゴは手錠を掴まれ、高い位置に引っかけられた。


「なに、を……ぅんッ!?」

「ほーらゴックンして。しないとこのまま窒息させちゃうよ」

「おい! 1人で楽しんでんじゃねェよ!」


突然口も鼻も塞がれ、わけもわからないままドフラミンゴは嚥下をすると、即座に体に異変が起きる。


(催淫剤……? それにしては効果が変だ……)


呼吸ですらビリビリと電気が走ったように感じるほどの感度の上昇に、ドフラミンゴは腕を下ろそうとした。しかしそれよりも先に男の手が伸び、無遠慮に腰を掴む。


「ひぁッ!?」

「ほら、いい感度だろ」

「んなこと言って、前回飲ませすぎて即死だったじゃねェか」

「や、めろ……!」


世間話のようなやり取りによる鼓膜の震えすらドフラミンゴには辛いもので、喘ぐように言葉を零す。

それを男たちが聞き入れてくれるわけもなく、ドフラミンゴの服は無残にも破かれた。


「あ……ッ!?」

「服にも何か仕込まれてると困るんで」

「その設定まだ続けんのかよ」


肩に辛うじて引っかかるだけの服は、今のドフラミンゴからするとただ刺激を与えてくるだけのものでしかなく、払い除けようにも海楼石と薬で力が入らない。


「じっくり検査するんで、大人しくしててくださいね」


耳元でわざとらしく囁かれた言葉に、ドフラミンゴは喘がないように唇を噛み締めることしかできずにいた。



それから2時間は経過しただろうか。

指先や手のひら、唇や舌などで検査とは名ばかりの愛撫をされ続けたドフラミンゴは、唯一脱がされていない下着をぐっしょりと濡らして身を捩っていた。


「はぁッ、はぁッ、も……いい加減に、しろ……!」

「いい加減にすんのはアンタだろ。何検査でイってんだよ」

「馬鹿か。おれがイかせるわけねェだろ」


力の入らない体でカクカクと腰を揺らすドフラミンゴの肌に添うようにナイフを滑らせた男は、ドフラミンゴの下着を切り捨てる。べちゃりと落ちた布切れも、怒張したモノも酷く濡れているが、白濁とした液体は確認できない。


「相変わらずド器用っスね」

「お前らがガサツすぎんだよ」


過剰なほど感度を上げられているにも拘わらず、この2時間で1回も射精をさせてもらえていないドフラミンゴは、揺れる腰も飛び散る先走り汁も止めることができないまま、悔しそうに口を開く。


「ッ……触って、くれ……!」

「触ってるでしょ」

「ちが、う……! もっと……」

「もっと、何? 誰のどこをどうしてほしいのか、言われないとわからないなぁ」

「お前ド下手なんだから引っ込んでろよ」


言葉を交わしながらも手は止めず、それでいて決定的な快楽は与えられない。それを2時間も続けられてもなお、幸か不幸かドフラミンゴの理性は崩れることはなかった。

じれったく、それでいて強すぎる刺激に翻弄され、理性の残るドフラミンゴは明け透けな言葉でねだることもできず、口からは嬌声が漏れ始める。



それからさらに3時間後。身体検査は口内や耳といった体内にまで及んでいた。

当然それは下からも行われ、ドフラミンゴは膝を震わせて指を受け入れることしかできず、じわじわと快楽を得られるようになってきていた。


「はぁーッ、はぁーッ……は、ぁ……ッ」

「あれ? 感覚鈍くなってね?」

「は? アレ前回の5倍だぞ?」

「何で前回即死してんのに5倍にしてんだよ!」


呼吸をしても快楽は増さない。そのことに安堵したが、今のドフラミンゴにとってはそんなこと、些細な問題だった。


「まぁここまで頑張れたんだから、ご褒美くらいあげないとね」

「あッ!!? あぁぁぁ……ッ!!」


今まで掠める程度にしか触れられなかったところを撫でられ、ドフラミンゴは腰を突き出すようにして射精する。それを笑ったのは1人か複数人かわからないまま、ドフラミンゴはさらに出そうと腰を揺らし、男たちは吐き出された白濁を塗り付けるように肌を撫でる。


「盛りついた猿でももっとマシだろ」

「ほーら、どうしてほしいのかな?」


呆れたような声を掻き消すように問われた言葉に、ドフラミンゴはねだるように腰を突き出して涎を垂らす。


「……もっと、もっとたくさんイかせてくれ……!」


理性の飛んだドフラミンゴのおねだりを男たちは低く笑い、その望みを叶えるように手を伸ばし始めた。



それを1時間ほど続けただろうか。ようやく理性を取り戻したらしいドフラミンゴは、それでも体の奥底に熱を燻らせていた。

ぐちぐちと体内にまで侵入してきては蹂躙するかのように動く指は、つい数時間前までは外からのものを受け入れる器官ではなかったはずの場所を作り変え、貪欲なまでに快楽を拾っては肉体を喜ばせている。


「すっげー、名器じゃん」

「最初の感じからすると処女だけどな」


代わる代わる指を入れては雑談するかのように言う男たちは、いまだに服を脱ぐどころか乱してすらいない。それを正確に理解しつつも、ドフラミンゴは耐え切れずに近くの男の腕を掴み、懇願した。


「奥まで……指じゃ届かない、奥まで、ほしい……ッ!」


少し驚いたように目を見開いた男は、ニヤリと口角を上げてドフラミンゴの腰を掴む。



いつの間にか吊るすように引っかけられていた腕は下ろされ、ドフラミンゴは目の前の男に抱きつくようにしてしがみ付き、壊れたように嬌声を上げていた。


「なぁ、誰か代わってくんね? おれそろそろ体力が限界」

「自力で引き剥がせよ。んなことよりコイツの最期どうすっか決めたからな」

「は!? 溺死だろ!?」

「すんません先輩、今回は火炙りっス!」


ぎゃんぎゃんと騒ぐ男たちの声は、理性の飛んでいるドフラミンゴには聞こえていないようで、呻くように喘いで欲望のままに快楽を貪り続ける。


「あーもう! せめて何か薬入れろよ! 筋弛緩剤とかあるだろ!」

「お前が軟弱すぎるんだろ……ほら、多分これだ。多分な」

「んぐぇ、う……」


喘ぐドフラミンゴの口に無理矢理薬を放り込み、飲み込ませた男はそのままドフラミンゴの体を引っ張り上げる。

ボタボタと精液を零す体は弛緩している様子はなく、薬が違っていたのかと納得して男はドフラミンゴを地面に投げ捨てるように置いた。


「う……あ……?」

「これ眠姦したい奴らが使ってたヤツじゃね?」

「死姦じゃありませんでした?」

「似たようなもんだろ」

「ぶっ殺されるぞ」


頭に靄がかかったようにぼんやりとしたまま立ち上がれずにいるドフラミンゴを放置し、男たちは好きに話し始める。言っていることはわかるが何もできないドフラミンゴは、ついさきほどまで自身を抱いていた男に向かって這うように移動し、足を掴む。


「おわっ!? え、何?」

「くす、い……いあ、ない……」

「は? あぁ、薬いらない? でも飲んじゃったし、ここに嘔吐趣味な奴いないから抜けるまでそのままだな」


あっさりとした返答に一瞬呆然としたドフラミンゴだったが、ぼんやりとした意識のまま懸命に言葉を紡ぐ。

意識が鮮明ではないだけで、体はまだ快楽を欲している。それをどれだけ時間をかけて訴えたか、結局男は折れたようにドフラミンゴの体を仰向けにし、周囲に声をかける。


「なぁ、誰か体押さえてくれよ」

「あ? 何お前、またやんの?」

「したいってうるせーんだよ。つーかこれお前の案件だっただろ。いいのかよ」


体というよりも首を絞めるように手を置く男に、ドフラミンゴの足を大きく開かせた男が胡乱げに視線を向ける。

そんな視線を鼻で笑った男は手の力を強め、苦悶の表情を浮かべるドフラミンゴの顔を覗き込んだ。


「おれはこの顔が歪むところが見たいだけだ」

「わっかんねェな……だったら沈められて藻掻いてる時の方が人間いい顔すんだろ?」

「……おれはお前でも構わないぞ?」

「あーはいはい。わかったよ、首突っ込んで悪かった」


そんな呑気ともいえるやり取りを交わす下で、ドフラミンゴは意味を成さない言葉を零しながら揺さぶられる。与えられる快楽も鈍いのか、求めるように男を見上げているがそれに気付く者はおらず、気付いていたとしても望み通りになる可能性は低いだろう。


この場にいる男たちはすでに『その後』へ意識が向いているのだから。



それから1時間後。

ようやく薬が抜けてきたドフラミンゴは、数人の動きがおかしいことに気付く。


「火加減は?」

「弱火でじっくり! 基本中の基本っスよ!」

「はぁ……その前に切ってもいいか?」

「そりゃズルだろ! だったらおれは絞めてェぞ!!」


そんな不穏な会話と共に積み上げられているのは薪だろうか。近くにある樽からは油のような匂いがしてくる。その2つの情報から導き出された答えに、ドフラミンゴは血の気が引いた。


「お? 何、そろそろ抜いていいか?」

「え……? あっ! いや! 待て!! も、もっとほしい!」


思わず思考が逸れ、理性もとっくに取り戻しているドフラミンゴは、ようやく解放されるといった表情を浮かべた男にしがみ付き、叫ぶように言う。


「えぇ……もう勘弁してくれよ……」

「先輩もしかしてド下手なんじゃないっスか?」

「そんなにお前沈められたいのか?」

「じょーだんっスよ!」


騒ぐ男たちをどうにか引き付け、火炙りを回避しようと模索するドフラミンゴは、この支部へ妹が到着した事実をまだ知らない。

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