世話焼き甘栗
学生御三家テールナーは自信過剰なところのある、クラスのマドンナである。
ゲコガシラはあまり授業には出ない、ミステリアスな存在である。
故に、孤独である。
いや、周りは『孤高』と表現するだろう。そして彼ら自身も。学年一位とはいかずとも、成績は勉学と運動共に優秀。普段の気まぐれな振る舞いには、それらから成る自信が感じられた。
とどのつまり、ふたりが周りに馴染まないのはふたりの意思だと言える。気にはかけつつも、無理に関わろうとするものはいない。
…ただひとりを除いては。
「今度勉強会するんだけど、教えられそうな奴がみんな忙しくてさ…来てくれない?」
あ、無理にとは言わないぞ!
そう言って苦笑を浮かべるのは彼らのクラスメイト兼ご近所さんのハリボーグ。小学生の頃のやんちゃはある程度落ち着き、今はむしろ年々気難しくなる他のポケモンに手を焼く側だ。
「我々が?」
「うん。お前ら俺より頭いーじゃん?教え方も上手いしさ」
「そりゃアンタの呑み込みが早いだけよー。アタシ他のやつに教えられる自信ないわ」
「そこをなんとか」
ハリボーグは穏やかで気配りのできる、クラスの良心的存在である。
故に、側にはいつも誰かがいる。
だからゲコガシラには、なぜ彼が何かと自分たちに話しかけるのか全くわからなかった。
こいつには友だちが沢山いる。もっと喋りやすくて協調性のある奴を頼れば良いのに…。
「そこまで我々にこだわらなくても、良いんじゃないか」
「言っただろ?みんな忙しいの」
「ほら、ジャノビーとか」
「中学上がってからのハジけ具合、ゲコガシラも見たことあるよな」
「…ジメレオンは」
「バチンキーと一緒にラビフットの専属家庭教師」
「……モウカザル」
「生徒会。忙しくて来れない奴筆頭。むしろなんでそんなに嫌がるんだよー」