世界経済新聞社より愛をこめて

 世界経済新聞社より愛をこめて


 世界経済新聞社と雖も何時如何なる時にもビックニュースが飛び込んで来るとは限らない。勿論作り出そうと思えば片田舎のコソ泥を大いなる陰謀の嚆矢へ仕立て上げるのも容易いのだが。残念ながら政府から文句を付けられるのは分かっているしやった所で何だと言うのだが。

 「はぁ……近頃は平和で仕方ねぇ……ちょいと七武海が騒動でも起こしてくれりゃいいんだが……」

 新聞王モルガンズは珍しく暇を持て余していると適当に棚から過去の新聞を取り出し考える。騒動を引き起こす存在として目下優れているのはアラバスタの英雄モンキー・D・ルフィだろう。付け加えれば彼の隣に何かと目立っているウタもニュースの種としては申し分無い。仮に彼等が海賊だったとしたらくどくど世界政府から何を消せ何を書くなと言われていた筈。

 「そろそろいい感じに海賊ぶっ飛ばしてくれねぇかなぁ…………新世界も知らねぇひよっことは言え、あのガープの孫とくりゃちゃんとしごかれてんだろ」

 破天荒では在るものの確かな善性を持っているルフィの英雄譚と来たら毎回売り上げを伸ばしてくれる逸材だ。新人記者が必死こいて掴んで来る二束三文の記事よりもよっぽど我が社に貢献している。当然自分のような存在を毛嫌いする姿もありありと想像は出来るのだが。珈琲を一口飲んだモルガンズは喧しく廊下を掻き鳴らす音に気が付き姿勢を正す。

 「大変です、社長! あの、あのアラバスタの英雄が! モンキー・D・ルフィが!」

 そら来た自分から掴みに行くスクープは極上の味だが向こうから黙って寄り添ってくれるニュースも楽で良い。今度は一体どんなに愉快な英雄譚を引き起こしたのかと思った時ふと社員の顔に気が付く。如何やら察するに宜しくないニュースと思えるのだが一体何を仕出かしたと言うのか。

 「…………くっ、はは、クワハハハハハ!」

 天竜人を殴り飛ばした。

 「ビックニュースだ! ビックニュース! 最高だぜ、モンキー・D・ルフィ! おい、さっさと号外の準備をしろ! どんなネタが来ても擦れるように一か月は二十四時間体制で取り掛かれ! 政府直通の電伝虫は寝かせろ! オレぁ密着取材の準備だ! 嗚呼、ビックニュース! ビックニュースだ!」

 先ず以て大将及びバスターコールからも抜け出せるかはあの二人の実力を考えれば絶無に等しい。だがモルガンズにとってはたかが大将たかがバスターコール如きとすら思えてならない。何処へ逃げるのかも知らないものの追えば間違いなくこの新聞王を飽きさせないのは確かだ。

 「何と言う魅惑の逃避行! アラバスタの英雄と誉れ高き歌姫が天竜人へ粗相を働き軍を追われる! 足跡を追うだけでも一面は固い! 民衆の反応を思うだけで筆も乗るってもんだ! 札付き相手なら多少の誤報も構わねぇ! こんな特ダネ、あっさり潰させてたまるかよ! なぁ、世界政府さんよぉ!」

  

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