世界の果てに君と2人で

世界の果てに君と2人で


ドッ

一護と藍染の耳に肉の切り裂かれる音と、一拍遅れて平子の小さな声が聞こえた。

っあ、が、と漏れた呻めき声。

「平子?!」

血相を変え振り向いた一護の目に飛び込んで来たのは、黒い霊圧に体を飲み込まれる平子章子の姿だった。

ユーハバッハの霊圧は次に平子の頸部に食い込み、その刃を抜いた途端に血が吹き出す。

「………残念だな、明鏡止水は私の全知全能に及ぶ筈がない」

濃くなるユーハバッハの霊圧と、平子の血の臭い。藍染は全身の血が一気に失われていくような心地に襲われた。


ズズズズズ


増幅するユーハバッハの霊圧に呑み込まれた平子は、その長い手足を投げ出し倒れ込むのが見えた。逸る気持ちを抑えながら、藍染は無言で平子に近づく。藍染!と一護の声が遠くで聞こえた。

ユーハバッハの中。平子の吐息が漏れている。まだ息はあるのか。

残る力で治療を始めてやる。それでも泉のように、平子の血と霊圧は流れ出て止まらない。


平子は思考が追いつかなかった。今、どうなっているのか。一護は。ここは。どこ。


平子章子


平子を呼ぶ声が聞こえる。振り仰ごうとしてもほんの僅かも動かなかった。仰向けにされ、眼帯をした黒い囚人服の男が見える。

「生きているか平子章子」

「ぁ…?やめ……早く、いち…………はやく……いちご……」

「織姫の到着を待っていると君は死ぬ。死にたくなければ今は大人しくすべきだ」

こひゅー、ひゅ。上がる息を抑えるように一護を助けてと繰り返す平子を無視し、藍染は平子の裂傷を治していく。

平子が震えているのに藍染は気づいた。血と霊圧の大量消失により体温すら保てなくなってきているのだろう。跪き、冷えかけた体を抱きしめてやる。平子の身体は華奢で、柔らかだ。まだ生きている。この娘の母親とも、雛森とも違う。場違いにもこれがこの女の感触なのかと藍染は思った。

「や……触らんと……おまえ………匂い……ややぁ……」

「それはすまない、体を清める時間までは与えられなかったのでね。次は君の好きな香を用意しよう。何が好みかな?」

「おまえに…だかれる…なんざ……こんりんざぃ……おことわりじゃ……」

こんな状況だというのに君も私もよく喋るな。虚圏で過ごしたあの日々に言葉はなかったというのに。


「私が死した未来さえ書き換えてやろう‼︎」


ユーハバッハと一護の戦闘は激しさを増す。まもなく真の世界が完成され、生と死の境が消えていく。

それでも今この腕の中にあるぬくもりだけが現実で、平子章子だけが藍染の全てだった。

「肉付きは多少成長したようだが、まだまだだな」

「……せ…く…はら……もぅ1万ねん刑ひきのばせ……」

「褒めてはいるさ。この身体なら脚を活かした闘いは続けられそうで何よりだ」

「よる…ち…さん…だいじょぶかな…」


虚圏で着飾らせ、傷つけ、また着飾らせたのにも関わらず一向に会話をしなかった理由は何なのか。平子章子は平子真子ではないからだ。こんなにも似ているのに、何もかもが違う。

平子の手が弱々と藍染の背中へ周る。

平子真子なら、例え世界に2人だけになろうと、心細さで私を抱きしめる事などない。

ユーハバッハの黒い霊圧の中、平子から滴り落ちる血液と藍染から流れ落ちる血液、2人の血は混じり合い、互いの服をぐしょりと濡らしていた。



よくわからない人物紹介


藍染:虚圏は娘ちゃんをずっと同室にしてた。気絶したお姉ちゃんをお姫様抱っこしてベッドに運んだ事はあるけど今回初めて娘ちゃんをぎゅっとしてハグすげ〜を実感した

娘ちゃん:7割平子真子だけど10割でないので3割藍染が藍染を邪魔して性的被害は受けてない。けどジェネリック平子としてキャンプ後に嘘朝チュンはされた事がある。家族の仇に不本意なぎゅっをしてしまい悔しい

お姉ちゃん:お姉ちゃんの力はご都合でバッハの前で潰え仮面パリーンした。本当ごめん

一護:藍染と娘ちゃんが話せるくらいバッハと戦闘シーンが盛り盛りで超頑張ってる。めっちゃ凄い

石田:バッハの霊圧が晴れたあと、好きな人が自分以外の男に抱きしめられてるシーンを見てショック受けるかもしれない


※この話は藍染も娘ちゃんもお姉ちゃんも親子?いや違うと思うけどもしかして、な前提で書いてます

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