不破マギアとゆあちゃんSS

不破マギアとゆあちゃんSS


刃唯阿が健全な精神を取り戻したらどうなるだろうと、不破マギアは時折考える。

自身は介護・保育に重点を置いて設計されたヒューマギアだ。一般的な保育士モデルとは比較にならない金額を注いで作られたから、再雇用(再利用)も引く手数多だろう。けれど、不破マギアが人工知能を精一杯動かして予測する未来には、再びスーツに身を包んだ「刃唯阿」の姿がない。

バチ、と不穏な音がした。

回路のどこかが軽くショートしたようだ。

まがい物の体が嫌になる。人間の体にコードは通っていない。CPUなんて計算ずくの部品は無い。不破マギアは止まない火花の音から逃れるようにモジュールを掌で覆った。人間のような行動に、またCPUが嫌悪を訴え、直立のための重心制御すらままならない。

隣で眠る唯阿を見る。

少し細くなった手足を撫で、不破マギアのアイカメラは陰る。

いっそ、彼女の心がどうしようもなくばらばらになってしまえば、俺はずっと

「すまない、不破マギア」

物理的衝撃。耐久限界を超過したショック。無数のエラーが処理を遅延させるほどに埋め尽くす。強制シャットダウンまで3秒前。2。1。ブラックアウト。

「すまない」

天津垓! なぜ! 不破マギアの発声機能は、エラー音を吐き出すだけだった。


***


「君を廃棄? まさか。こんな言い方をするのもなんだが、結構な金をかけているんだ。唯阿が元気になれば君は補佐だ。秘書、経理、ベルト整備の技術などは改めてラーニングしてもらうがね」


それより君、いったいどれだけ負荷をかければ内部回路がショートするんだ。全く。ここは交換した方が早いな、こっちは保護剤で……ぶつぶつと独り言をこぼしながら、不破マギアのスキャン結果へ目を通す天津。足元では犬型ロボットが昼寝モーションを始めたところだ。


「なぜ物理的手段でシャットダウンさせたのですか」

「正面から頼んでも理由をつけて躱されそうなのでね」

「唯阿に絵本を読むと約束していたのですが」

「健康診断だと説明してある。ついでに唯阿の体調もチェックしているから、あとでデータを送ろう」


天津の目元へズームすると明らかに隈ができていた。スケジュール上では仮眠の時間をメンテナンスに当てたようだ。不破マギアの優先度最上位は唯阿だが、ちょっと悪いことをしたな

、と思った。

そして、やはり自分は唯阿の隣に立てないのだと、記憶領域に刻まれた男が囁いた。


(上手く出力できず短くなってしまいました。他のと文字数違っても許して)

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