ちょっと不思議な一日

ちょっと不思議な一日


…本来なら今日何も予定のない日。ぐっすり眠ることも出来た。ただ…

「ん…何かいるのかしら?」

…さっきからモゾモゾとベッドの中で何かが動いてる。鬱陶しさを感じた私はシーツを引き剥がした。……するとそこには…

「………猫?」

そこには…スースーも気持ちよさそうにゴロゴロ眠っているどこかあのペッシェモンターニュに似た色の赤毛の猫がいた…

「にゃ…にゃふ…」

それだけじゃなく、起きた猫の瞳もペッシェのような紫色の瞳を輝かせていた。

「まさか…ペッシェなのかしら?」

「にゃ?にゃーん」

 


「んにゃ…」ゴロゴロ

「ナナイ。いったいどういう事なの。本当にペッシェが猫になったっていうの?」

「悪いけど、私にもこれは分からないし、どうにもできないわ。そもそも…人が猫になるといういう事自体が理解できないのよ。全く別の生命体になるなんて…でも本当にペッシェに雰囲気が似ているわねこの猫…」


とにかく私はペッシェの事を良く知っているでだろうナナイも元を訪ねたけれど…成果は何も得られなかった。そして困ったのは、この猫をどうするか…


「…仕方がないわ。セリーヌ。あなたがその猫の世話をしなさい。」

「な…!?何で私がわざわざこいつの世話をしなきゃならないのよ!」

勘弁してほしい。猫の世話の仕方なんて全く分からないのにどうしろと…

「他に頼めそうな人がいないからよ。この事を研究所内に広まるのもあまり良くないわ。それに…」

「にゃーん」スリスリ

「どうやら、貴方に随分懐いちゃったみたいね。」

随分と居心地良さそうに膝下で擦りついてくるペッシェ…猫ってこんなすぐに懐くの?

「くっ…分かったわよ…で?一体何をすればいいのよ?」





「…とりあえず先ずは身体を洗いましょうか…汚れでもあったら大変よ…」

ナナイからある程度のアドバイスを受け、自室に戻った私は彼女の…ペッシェと思われる猫の世話を始めた。まずは洗うようにしよう…汚れがあった状態で部屋をうろうろされたら流石にたまらない。


「気持ちいいかしら?」

「にゃ〜ん♪」ゴシゴシ

身体全体を満遍なく濡らしながら、シャンプーを泡立てながら洗っていく…これでやり方が合っているのかは分からないけど………それにしても、気持ちよさそうな顔をしてる。さっきよりも鳴き声も明るくなっているし、多分上手くできているのだろう…

「 それにしても案外可愛いわね…あまり認めたくないけど。」

「にゃ?にゃ!」

まるで嬉しい!と言っているように明るい声で鳴く猫。…もしかしたらこっちの言葉を分かっているのかもしれない。気のせいかもしれないけれど。

「そろそろ上がりましょうか。しっかり拭いてあげないとね。」

「にゃん!」




「にゃ…」グゥゥ

「あ〜…お腹すいたのね…」

次に困ったのは猫の食事。猫になったとはいえ元々ペッシェだったから、猫用のご飯を用意しても合わないのでは?と少し悩んだ。

「…何かお粥でも作りましょう」

とはいえ作ったことも無かったので、流石にナナイを呼んで色々と手伝ってもらいながら何とかお粥を作ることが出来た。…正直ナナイがいなかったらまともに作れなかったかもしれない。


「ほら、早く食べなさい」

「にゃん!」モグモグモグモグ

…ちゃんと食べている。味は問題なさそうで良かった。にしても、お腹が減っていたのか分からないけれど勢いが凄い。かなり多めに盛りつけたのだけど、このままだとあっという間に食べてしまいそう…

「にゃー」ペロリ

「…いい食べっぷりだったわ。」

「にゃ!」





「はぁ〜…色々と疲れた…」 

ようやく就寝の時間帯。本当に今日は色々と慣れないことばかりで疲れた…実験や模擬戦があったわけじゃないのに…

「慣れないことをするのって案外大変なのね……でも、たまには悪くないわ。」

最初は仕方がなく色々世話をしていたけれど、気づけばどことなく楽しんでる自分がいたような気がする…

「にゃ〜」モゾモゾ

「ちょ…!?何入って来てるのよ!?」

今日のことに浸れていたら、いきなりペッシェがベッドの中に潜り込んできた…これから寝ようって時に……いや、これはもしかして…?

「まさか…一緒に寝たいの?」

「にゃん!」

やっぱりそんな気はした…ものすごくご機嫌な鳴き声だからよっぽど一緒に寝たかったのかもしれない。普段なら、誰かを隣に寝させるなんて絶対しないけど…

「…いいわよ。ほら、来なさい。」

「にゃ〜♪」スリスリ 

許可した途端、真っ先に枕もとまで来て、思い切り頬に擦りついて来た。……すっかり甘えてきて、何だか可愛らしい。

「そんなに甘えたかったのかしらペッシェ?」

「ふにゃ…にゃ〜♪」ゴロゴロ

可愛らしくて、ちょっと顎下と体を撫でてみる。毛並みがとても良くてふわふわしていて凄く柔らかいてとてもさわり心地がいい…ペッシェも気持ちよさそうだ。


「それじゃ、そろそろ寝ましょうか。」

「にゃ〜」

せっかくだし、少し抱きしめてみる。暖かくて、何だか安心してくるような気がする。

猫になったペッシェと色々と大変な一日だった…でも、孤独感は全くなかったし、世話を楽しむことも出来た……こういう生活も案外悪くない。

「…おやすみなさい…ペッシェ…」

「んにゃ……」





その日はいつもよりもずっと心地よく眠れたという…



完 








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