不定形凛ちゃんと幼少期兄ちゃんの出会いの場面のSS書いてみた
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撫でられる感触がして永い微睡みから醒めた。どうにか力をかき集めて目を造る。小豆の色の髪をした子どもがいた。どうやらこのぼんやりとした黒いカラダを仔猫かなんかだと勘違いしているらしい。もっとよく観たい。手のひらにすり寄ってみた。不思議と心地がいい。ふふっと笑う息がかかる。子どもも気に入ったようだった。
あれからしばしば子どもはこの神社を訪れるようになった。背にあたるだろう部位を撫でている間、子どもはいつもなにやらぽつぽつとひとりごとを溢していく。塩昆布茶とフライドポテトが好きで、サッカーをやっていて、弟が欲しいらしい。叶えようと思った。
ある時子どもは膝に傷をつけていた。サッカーで転んだらしい。なんだかいい匂いがする。甘い。力が戻る。あと必要なものは。
名前をつけてやる、と折よく子どもは言った。
「凛」
カラダの形が変わった。
目の前の兄ちゃんが目を丸くしている。どうしたんだろう?黙ったままの兄ちゃんに不安になって、そうっと手を伸ばす。兄ちゃんはパシパシと瞬きをした後、ゆっくり優しく手を握ってくれた。
「俺の弟になるか?」
もとから俺は兄ちゃんの弟なのに、へんなの。
でもなんだか嬉しくて、俺は頷いた。