三人四脚?
神永 side in
ホテルから何とか撤収して家へと帰ってきた俺たちは例のマスターの持ち込んだ礼装やら資料やらを家で分類することになった。
「……」
「ん〜、これじゃないし…こっちは……」
すっごい気まずいのだ、そもそも美作はバーサーカーが負けたことで脱落したはずなのに何故こんなに積極的に情報を精査しているんだ…?
「なぁ、美作」
「ナニよ、今忙しいんだけど」
「お前脱落したはずだろ?なんでそんな必死に情報漁るんだ?」
ため息をついた美作はこっちに右の手の甲を突きつけながら言い放つ。
「あのねぇ、私はまだ令呪を残してるの、そして契約するサーヴァントさえ居ればまだ参加する権利は残っているの」
「だとしてもそんな状況にはならないだろ?」
「あら、気づいてないのね別にサーヴァントと契約するのは1人だけだなんて決まってないわよ?」
「まさか、ライダーと契約するってのか?」
「そうよ?それに貴方の魔力量じゃライダーの戦闘スタイルには足りないでしょ?」
確かにライダーは豊富な宝具を切り替えながら戦うスタイル故に俺の魔力量だと精々2〜3回程度が限界だ、というか実際足りなくて屋上であの後倒れてるし
「むぅ、そうなると聖杯への願いはどうすんだ?」
「そこはまぁ二人で話しあってよ、それに何となく貴方の願いもわかるし」
「…そうか」
…正直、ここでオレはこいつに令呪を押し付けてマスター権を放棄してもいいかもしれない、そう思った。
ライダー、あいつの事をオレは……
「あ、先に言っとくけどあんたに降りる権利は無いわよ?」
「は?何言ってんだよ、んな事する訳…」
「ライダーのことで何か悩んでるんでしょ?今ライダーは礼装を私の家に運びに行ってるから話しなさい」
……なんでこいつはそこまで見透かしているんだ。
そんでこういう時に限ってコイツは絶対に引き下がらないんだよな。…仕方ない
「……怖いんだよ、ライダーが」
「怖い?」
「オレは、ライダーの在り方が怖いんだよ」
そう言って置いてあったお茶を飲んで一息ついてから話し出す
「人の生き死に、そこへの感覚が違うってのはわかるんだ」
ライダーの生きた時代では命は今よりもずっと軽いものだった、それはわかるし俺も魔術師の端くれだ。そこの感覚は一般人と離れているってのはわかっている。
「でもライダーの精神構造、アレだけは分からない」
俺を純粋に主として慕っているのはわかる、ただそれ以外との優先順位の乖離。それだけが理解しきれないしたくないしてはいけない、そんな気がした。
「もし俺にあいつが敵対したら、なんの躊躇もなく殺す。そう思ったら…」
───まともにライダーを見れない、そう思ってしまったのだ。
「ふぅーん、成程ね」
「お前、人に聞いておいてそれは無いだろ」
「いや呆れただけよ」
「は?なんで」
「だってあんたライダーの事をまともに見れないから怖いそういうことでしょ?」
……纏めたらそうなるのか?
「はぁ…なんというかあんた友達少なかったのが裏目に出てるわねぇ…」
「うるせぇお前も少ないだろ」
「残念だけど友人は大事にしてんのよ」
「そうは言うけどどうしろってんだ」
「話し合いしなさいよ、ちょうどいいわ私は帰るからアンタたち二人で話しなさい」
「はぁ!?ちょ、待っ」
「じゃあ資料は纏めて置いてちょうだい、それじゃあ」
そう言ってさっさと家から出ていってしまった美作、追いかけようにも魔力切れのせいで動くことがままならないため追いかけることが出来なかった。
「……とりあえずライダーが来るまで待つしかないか」
ライダーが来るまで考えを纏める時間ができたと思うか…
───ライダーにはなんて伝えるべきだろうか
神永 side out
ライダー side in
美作殿に頼まれ魔術礼装を彼女の家に運んだ帰り、ばったり美作殿と鉢合わせした
「あら、ライダーもう運び終わったの?」
「ええ、とりあえず従者の村田さんに預けました」
「ありがと、そうそうライダー」
「何でしょうか?」
「家で神永クンが話したいんだって」
思いもしない言葉が美作殿の口から飛び出してきたのは少々驚いたが主殿が話をしたいというのなら急いだ方がいい
「わかりました!では!!!」
「ちょ、待───」
何かを言っていたようだが既に走ってしまったため声が聞き取れなかった、まぁ大丈夫だろう。
急ぎ主殿の元に行かねば……!
ライダー side out