万魔殿モブちゃん再教育
……ひどく目が痛む
私は確か、ハイランダーの列車を襲撃していたはず…
…列車のような揺れや騒音は感じない
暗く封じられたままの視界と見当もつかない現在地、心細さに手足を縮こめそうになるが、手枷か足枷か…鎖の音が僅かに鳴るだけで、体は自由に動かせない
にわかにパタパタとこちらに向かってくる足音が聞こえた
「ああ、目が覚めたんですね!よかった…どこか痛むところは?」
…心配するような女生徒の声音、内容も特に違和感のある物ではない
しかし病院にいるわけではないだろう、まさか一目で正気の者とわかるはずの万魔殿の制服を着ていたのにこの拘束…まともの場所での待遇とは考えにくい
「…ここはどこですか?もう一つ、貴女は誰ですか?」
「…ふふ、頭の回転が早いですね…♡私は浦和ハナコ、ご存知ですよね?そしてここはアビドス高等学校…私が預かっている"補習授業室"です♡」
段々と意識が鮮明になってきた
目だけでなく身体中のヒリヒリとした痛み、ズキズキとした鈍痛が強くなってくると同時に、作戦に参加してからのことを思い出し始める
そうだ、襲撃は失敗し…私は列車の乗務員に捕まって……
「最悪…」
妙な煙に包まれてパニックになった
体中を撃たれた、ひどく殴られた
いつのまにか気絶していたのか、目を覚ませば拘束されていて目の前にはあの"砂漠の魔女"
踏んだり蹴ったりだ
……まさか痛む目は、失明した…なんてことは……
「は、早く拘束を解きなさい!私に何をするつもり⁉︎」
不安を振り払うように喚き、口を閉じてしまったことで居場所がわからなくなったハナコに顔を向けようともがく
「⁉︎」
唐突に後頭部に手を添えられ、柔らかく温かい物体に顔を押し付けられた
鼻腔から肺の中まで砂糖漬けの花のような香りに満たされた私はせめてもの抵抗に息を止め顔を背けようとする
しかし既にそれを吸い込んでしまったために、すぐに浮き上がった体の輪郭が曖昧になるような感覚とともに多幸感が湧き上がる…
痛みが僅かにマシになっているのは不幸中の幸いだろうか
「あんまり暴れないでください、大丈夫…♡」
「ひぅっ⁉︎」
正面から抱き寄せられたまま、耳元でぽしょぽしょと囁かれる
…あの香りのせいで昂った神経を耳元に当たる吐息で更に刺激され、妙な感覚に混乱して変な声が出てしまった
「一体なんの───」
「痛くて見えなくて怖いですよね、大丈夫…誰も貴女に酷いことをしたりしません♡今は治療をするだけですから安心して…少しじっとしていてくださいね?」
信用できるか、そんなこと…
しかし抵抗できるような状況では無いのも事実だった
「次、おでこちょっと沁みますよ♡」
「んっ…」
額に消毒液を染み込ませた脱脂綿を当てられ、傷口が一瞬ピリッと痛む
すぐにガーゼか絆創膏らしきものを貼り付けられ「終わりましたよ♡」と囁かれる
ハイランダーの生徒にひどく痛めつけられたようで、ハナコから身体中こんな調子で手当を受けていた
それにしても…
「なんで一々囁いてくるのよ…!」
「?いきなり触ったりしたら驚かせちゃうかもしれませんから…♡目の方も診ますね、すごい腫れてますけど…」
また耳元で…!
「うぅ…そういうこと聞いてるんじゃ…!」
「はい、深呼吸してください…痛かったら言ってくださいね、瞼が開けられないほどならやめておきますから…♡」
まずいとは思いつつも言われた通りに息を吸い込んでしまう
甘い香りが痛みを和らげ、ふわふわとした高揚感と多幸感を与える
それでも瞼に触れられると僅かに痛みが走り…
「眩し…」
視界に真っ白な光が差し込んだ
よかった…目は潰れていたわけでは無いようだ
…本当に、よかった……
ほっと安心して小さく息を吐くと、再びハナコが抱きついてきた
「催涙ガスを浴びた後に殴られたみたいですね…まぶたが腫れて目を開けられなかったようです、湿布と包帯を巻いておけばきっと数日で良くなりますよ♡」
そう囁かれながら、瞼の上にひんやりとしたものを貼り付けられる
そのまま包帯を巻きながら、ハナコは打って変わって真面目な口調で話し始めた
「…その、こんなことを言うのはとても身勝手だとは思うのですが…あまりあの子たちのことを悪く思わないであげて欲しいんです」
「そんなの無理に決まってるでしょ!めちゃくちゃボコられたのよ?それに私は貴女達のしてることを許すつもりも…」
しまった、と思ったが遅かった
ついカッとなって拒絶してしまった
一応捕虜として治療されている身の上だ、下手に刺激して放置…最悪暴行を加えられたりしたらたまったものではない
「それも当然の反応ですね…まぁ彼女たちハイランダーは元々あまりゲヘナが好きではないですし、加えてついこの前ゲヘナの指名手配犯と風紀委員会が列車の中で衝突し脱線事故を起こしたとも聞いています…」
だが意外なことにハナコは冷静に私の非難を受け止め、包帯を巻く手を動かしながらハイランダーの連中を庇い続けた
その件は噂程度に聞いていたが…だからといってこの仕打ちに納得できるわけでは……
「貴女たちは間が悪かったんです…私の方も彼女達に過度の暴力を避けるように言っていなかった責任があります、ですから…」
再び、耳元に湿った吐息を感じる
「容態が良くなるまでの面倒は私がしっかり見てあげます…♡」
「ところで、お腹が空いたり喉が渇いたりしていませんか?用意しますよ♡…まあアビドス(ここ)で用意できるものは全て砂漠の砂糖か塩が入ってますけどね」
放たれた問いと付け足しに神経を逆撫でされる
「いらないわよ!…手当には感謝するけど、その代わりに薬漬けにされたんじゃ割に合わないわ」
「ふふ…♡…駄目です♡」
当然の対応だが、こうはっきりと自分はもう助かる見込みがないのだと突きつけられると精神的にまずいものがある
「とはいえ、ご飯を食べていただけないのも困りますね…飢えて弱っていく人を見るのは辛いですし…」
「ちょっ…やめへ…」
ため息をつくハナコに手慰みに頬をむにむにと弄ばれる
彼女はやがて手を離し、何を思ったのか拘束を解き始めた
「暴れないで下さいね」
手短に言い放つ声の後、私の背と膝裏に腕が回されて抱き上げられる
「何を…」
「ご飯を食べていただけるように、まずはちょっとご親睦を深めようかと♡しばらく縛られていて体も凝り固まっているでしょう、マッサージ♡してあげますよ…♡」
そっと柔らかい床の上に…ベッドの上だろうか?下ろされて横たえさせられた
「待ちなさいよ、そんなの別に頼んでない…ていうかマッサージって何する気よ⁉︎ま、まさか乱暴する気じゃ…いっだぁ⁉︎」
慌てて身を捩っている最中にくすくすと笑いながら足裏を押し込まれ思わず悶える
痛い、日頃の不摂生とこの負傷や拘束が祟ったせいかめちゃくちゃ痛い
「ちょっ…きついから!せめてもっと優しく!」
ハナコはその言葉を聞いて、言質を取ったとでも言わんばかりに口の端を吊り上げた
とんとん、ゆさゆさ
軽く押したり、揺らしたりするだけの刺激の弱いマッサージ
「んぅぅぅ…っ!なんっで、そこばっかりぃ…!」
それでずっと臍の下あたりを責められている
「優しく、と言ったのは貴女ですよ♡弱めにじっくり揉んであげますから…ほら、いちに、いちに…♡」
「ああっ…//」
背中に感じる感触と砂糖漬けの花のような甘い香り、そして耳元で囁く声からして私は今背中から抱きしめられて腹を触られているようだ
抵抗しようとした腕はゴム質のロープのようなもので固められてしまった
蠱惑的な声と共にリズミカルに与えられる未知の刺激に思わず震える声が漏れてしまう
「そろそろいいですかね…ね、ちょっとこっちを振り返ってみてください…♡」
「なに……んくっ⁉︎」
言われるがままに振り返った途端に唇に柔らかいものが触れ、有無を言わさず口にぬめった舌を捩じ込まれる
口内を蹂躙する熱さと甘さに驚き咄嗟に噛みつこうとするが
ぎゅう〜っ…♡
「あ゛⁉︎ ゔあっ♡あ゛ぁ゛〜〜っ♡♡♡」
腹に回された手で臍の下に溜まった熱を押し潰され、そこから甘い痺れが広がって全身の力が抜けてしまう
先程までの優しい手つきとは違う、制服の上から"内臓"を押され、潰されて痛みや苦しささえ感じさせられるような押し方
粘膜を撫で回す甘さと芳香に染め上げられた私の体はそんな刺激ですら快感に変換し、腹を押されている限り逃れることの叶わない法悦に囚われてしまった
「っ…は、ぁ…!だめ…っ♡フーッ…フーッ…離してっ‼︎んお゛っ…♡♡」
ハナコがようやく唇を離す
彼女はそのまま息も絶え絶えに懇願する私に向かって最悪の二択を突きつけた
「え〜?いいですけど…代わりに私が用意する食べ物をちゃんと食べてくださいね♡約束できるなら、手を離してあげます♡」
「そ、それはぁ……」
ダメだ、この香りや体液の交換だけでもこの有様なのに直接砂糖を口にしてしまったら
「嫌ならいいですよ♡このまま気絶するまで責めてから食べさせてあげます、そっちの方がきっとお得ですよ…♡」
返答に窮した途端にぐりぐり♡と腹に押し付けられた手がゆっくりと上下に動き始める
パターンの変わった刺激と蠱惑的な囁き声、酸欠と快感で思考力の落ちた私は抗うことができなかった
「ほぉ゛っ…♡まっでっ食べる!食べるから‼︎」
後悔先に立たず…解放され魔女が食事の用意に離れてから、私はシーツを握りしめてうずくまった
ふわふわのスポンジ生地を咀嚼し、舌の上で溶けたクリームと共に嚥下する
強れつだが優しい甘さが脳をさし、パチぱちと暗い視かいにスパークが散る
「うふふ…♡美味しいですか?このケーキは私が焼いたんですよ♡」
「はい……美味しいです…」
「それはよかったです♡じゃあもう一口どうぞ…ほら、あーん…♡」
あまい
あたまがふわふわする
「あー………♡」
あまくてしあわせ
もっとほしい、たべさせてほしい
「やっぱり高純度の砂糖はよく効きますね…最初は往生際悪く抵抗していたのに一口でとっても素直になっちゃいました♡」
……なにをいってるんだろう?
ふわふわ、あまいのがほしい
さとうがほしい
「もっとください…はなこさま……」
「ふふ、慌てなくても大丈夫ですよ…♡飲み物もありますからね…♡」
くちに柔らかいストローをいれられる
さっきみたいに口のなかをゆっくりとなぞられて、思わずこえがもれてしまった
「吸って…飲んで下さい…♡甘ーいですよ♡」
「んぐっ…⁉︎♡んっんっ…ぷはっ///」
くちのなかではじけたあまさをいわれるがままにのみこむ
のども、あたまも
ぱちぱちして きもちいい
めがちかちかする からだが…ゆれてる?
あたたかい やわらかい
……ハナコ様にだきしめられてる
「んぇ…あはっ//ふふふ…♡」
「幸せそうですねぇ♡大丈夫、お腹いっぱい食べてください♡ちゃんとお世話してあげますからね…♡」
すごくしあわせ
はなこさま…
「ありがとぉ…ございます…♡」
すごくゆれてる?
あたまがふわふわして、もうなにも………
「もっと甘いのください♡ハナコ様♡私なんでもします♡なーんて…健気で可愛かったですよ♡」
「やめろ…!やめて…」
砂糖が悪い、私のせいじゃない
私が魔女に従ったわけじゃない、私が言った言葉じゃない
「ふふ…♡何を考えているかは分かりますよ、ええ…貴女は悪くありません、おかしくなるのが普通なんです…でも」
囁きながらも「必要なお世話の範疇ですよね♡」などと言って歯を磨いてきた時に私を縛ったまま、魔女は先程のように私の下腹部に手を添えてくる
「貴女のあんな姿を見た他の子はどう思うでしょうね?♡」
ス…トンットンッ
「はぁぅ…//やめっ」
軽くそこをゆすられるだけで体から力が抜け、喉から自分のものではないような音色が溢れる
「同情や恐れはもちろん…恥ずかしい♡みっともない♡情けない♡…そのあたりですら、まだいい方ですかね」
さすさす、ふにふに
…大量に砂糖水を摂った後にそんなところを優しく刺激し続けられれば、当然生じてくる感覚もある
「だからやめ…っ、ちょっと!まずいから…!」
「だーめ♡さて…あれだけ懇願していたら、ひょっとしたら裏切り者や狂喜に堕ちたと思われてしまうかもしれませんね?まるで獣のような乱れっぷりでしたから…」
そうだ、私はそれを知っている
砂漠の魔女に捕えられたスパイや背信者は必ず彼女に忠誠を誓うように…否、彼女を盲信するようになって現れると
そんなことよりも喫緊の問題があるのだが
「ん//ふぅゔっ…!この…離して!本当やばいって…!」
「えぇ?何がですか?言ってみてください…♡」
「その…場所を教えて、せめて連れてって……お、おトイレ…」
何故か体を縛りつける力が強まった
「ちょっと⁉︎離して…ってば!んぐぅ⁉︎」
ぎゅう〜〜〜っ♡
じっくりと指圧するように臍の下を押し込まれ、同時に口に何かを突っこまれる
ゴム質で咥えるにはやや太い、まるでホースのような…
「んくっ…んぐっ…!っハァ!駄目だから!本当に‼︎ねえ!せめて何か言って…!」
口の中に甘いサイダーを流し込まれ、砂糖を求めずにはいられなくなってしまった体が思わずそれを受け入れてしまう
じわりじわりと嫌な感覚を覚えながら必死にもがき、喚く私に
魔女が囁く
「そうですね…頃合いも良さそうですし…実はずっと動画に撮ってるんですよ、私達のこと♡だからほら笑ってください、笑顔ですよ笑顔…♡カメラは正面ですよ、スマイル〜!」
「はぇ?」
嘘だ
今までのことも…これからのことも?全部撮られてる、見られてる?
ぐりぐりぐりっ♡♡♡
突如容赦なく敏感な下腹部を弄られ、遂に忍耐が決壊する
「ひぁ、やだっ、駄…目 …〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ‼︎」
限界を迎え、初めて袖を通した時には凛々しさと誇らしさに感動した制服を汚しながら私は……
「なぁんだ、ちゃんと笑えてるじゃないですか…♡尊厳もなく、こうやって砂糖とマッサージでめちゃくちゃにされちゃうの…大好きなんですよね?♡」
滂沱を流し火が出るほどに顔を熱くしながらも、相貌を崩していることを自覚してしまった
「ぐすっ…ぅ…ひぅ……ふ、えへっ…あはは、あははははは…!」
わたしが笑っている
気持ちよくて、しあわせで、わらってるんだ
おもしろいなぁ、こっけいだなぁ
「いいんですよ、これが気持ちよくて…♡私は貴女を裏切り者と呼んだり、そうなったことを責めたりしません♡貴女が望むなら、何度でも尊厳を奪ってぐちゃぐちゃに狂わせてあげますから…」
はなこさまありがとうございます
きもちいい
わたしをこんなふうにしてくれて、こんなわたしにくちづけしてくれて
「だから、私に協力してください♡」
「喜んで……」
私は、ハナコ様に囁き返した