七武海海賊団(仮) 〜旗揚げ編〜

七武海海賊団(仮) 〜旗揚げ編〜



『近年の治安の悪化・四皇勢力の強大化・海軍本部の人手不足に伴い、王下七武海は新たな人員を増やした上で統合し、これより一つの海賊団として扱うものとする』

『ということでヨロシク。byセンゴク』


「………だそうだ」

「「「「「ハァァ〜〜!?!!!?」」」」」


“鷹の目”ジュラキュール・ミホークが伝書バットから渡された指令の手紙を淡々と読み上げた。

場所は聖地マリージョアの真下に配置された軍艦。

彼の他にこの場に集まったのは、クロコダイル、ドンキホーテ・ドフラミンゴ、バーソロミュー・くま、ゲッコー・モリア、ボア・ハンコック、ジンベエの王下七武海正規メンバー。

そして、追加人員としてスカウトされたマーシャル・D・ティーチ、トラファルガー・ロー、バギー、エドワード・ウィーブルの総勢11名。錚々たる顔ぶれである。

突如海軍本部・世界政府両方の名の下に召集された曲者海賊たちは、急展開を告げる特令に揃って驚愕の声を上げた。


「いくら何でもそんなハデにアホな話があるかァ!!せっかくのおれ様の華々しい七武海デビューだと思ってたのによ!!」

「だがこりゃあ……キシシ、きちんとセンゴクのサインまで記してあるな」

「突然勢揃いで呼ばれて何事かと思えば、こりゃ一大事じゃわい」


「わらわは反対じゃ!世界政府の命令など聞きとうない!」

「おれも降りるぞ……何故こんな奴らと、特にドフラミンゴ!お前と組まなきゃならない!?」

「全くもって同感だ。おれは誰とも組まねえよ……お前ら全員手下になるなら別だがな」


ひとまとめに七武海とはいっても、彼らの性格立場は様々であり、指令への反応もまた千差万別であった。

困惑する者、断固拒否の姿勢を見せる者、苦々しい顔を向ける者───そして、面白そうだと笑みを浮かべる者。

ローとクロコダイルに同時にじろりと睨まれたドフラミンゴは、腕を広げてわざとらしいオーバーなリアクションを取った。


「フッフッフッ、傷付くじゃねえかお前たち!そう悪い話でもないだろ?」

「ゼハハハ!おれらが組めば向かうところ敵なしの海賊団が出来上がっちまうなァ」

「おでも皆んなと仲良くしたいど!」


高笑いする二人に嫌な顔を向けていた海賊たちは、ほとんど唯一無邪気な理由で声を上げたウィーブルの台詞にやや表情を柔らかくした。

確かに、とそれまで沈黙を貫いていたくまが呟く。


「おれたちはこれまで揃って顔を合わせることすらほとんどなかった。連帯感を高めるという意味では有意義な命令だと言えよう」

「いや無理だろ。ほぼ初対面のおれらでどうしろっつーんだよ海軍政府のスットンキョーどもは!」

「“赤鼻“の、しかしどうやら……わしらに拒否権はないようじゃぞ」


誰が赤っ鼻じゃサメ野郎クラァ!と怒鳴り飛ばすバギーは、嫌な気配を感じ急に口をつぐむ。

ジンベエが甲板の隅に渋い顔を向けているのに釣られてそちらに視線を遣ると、海兵たちに混じって白服を纏い仮面を被った異様な姿の者が複数立っていた。

世界最強と名高い諜報機関のCP-0───実力者ばかりの七武海と言えども好んで戦いたくはない相手である。


「チッ、監視まで付けてやがる……抜け目がねえな」

「まあやれるだけやってみようじゃねえか!崩壊したらそれまでの話だ」

「……そもそもまず、誰が船長を務めるのだ?」


ミホークの素朴な、しかし妥当な疑問にその場が静まり返る。

既に自分の勢力・海賊団を持ち率いている、あるいは率いていた船長経験者が大半である。当然おれだ、いやわらわじゃと無言の睨み合いが数秒続き……埒が明かねえとモリアが最初に溜息を吐いた。


「オイオイやめとけ……さっそく崩壊の危機か?クジでも何でも良いからとっとと決めねェか」

「海賊らしく殴り合いはどうだ?フッフッフ!」

「船が壊れるだろう」


一同がちらりとCP-0の方を見ると、諜報員たちも首を横に振っていた。

……協議の結果、ジンベエとくまがその場で手作りしたクジを全員で引くことで船長を決める流れに決まった。無論、細工などがないように互いを見張りつつである。

図体の大きい厳つい老若男女が揃って大人しくクジを引いているシュールな光景に、見張りの海兵たちは内心吹き出しそうになったと後日語ったという。


そして決定した船長は───


「わらわじゃ!!!平伏すがいい男どもよ!!!!」


大きくのけぞる見下しすぎのポーズで勝ち誇るハンコック。

しかし、当の男性陣は残念がりこそすれど意外にも反発する声は少なかった。

この面子の中でも特段我が強く、加えて男嫌いのハンコックは明らかに誰かの下でやっていける性格ではない。扱いづらい彼女のポジションとしては、むしろこれ以上ない最適解なのかもしれないという見解で落ち着いていた。


「じゃあ次は、おれたち海賊団の名前を決めねえとな?ゼハハハ!楽しくなってきたぜ」

「順当に“七武海海賊団”とかでいいんじゃねえのか……?」

「つーかよォ、七武海なのに人数多くねえか?これじゃあ“十一武海海賊団”になっちまうぜ」

「……“七武海ヒーロー海賊団”とかどうじゃろうか」

「ダサい!却下じゃ!!わらわが決めよう」


無言でショックを受けるジンベエを余所に、ハンコックがブツブツと呟きながら紙に候補を書き連ねる。


「おではヒーローかっこいいと思うど」

「ウィーブルくんは優しいのう……」


「急に乗り気だな女帝屋は」

「だが……なかなか適性があるようだ。船員たちも打ち解けつつある」

「まあな。癪ではあるが……“海賊女帝”が率いるとなると目立つ上に箔も付く」


「ときにピエロよ、海賊団の名は船長の名前や異名を付けるものが多いのじゃな?」

「んん?あー……そうだな。おれんところはそのまんま“バギー海賊団”改め“バギーズデリバリー”、モリアやローやクロちゃんのところはなんか小洒落た名前付けてたか。名前考えるならよ、そいつらに頼んだらどうだ?」

「わらわは男の手など借りぬ」

「あ、そう」


ならば、ふむ、と唸りながらしばらく紙を睨んでいたハンコックは、不意にきらきらと目を輝かせ頬を染めながら顔を上げた。

“海賊女帝”らしからぬ珍しい表情に男性陣からも視線が集まる。


「よし!決まったぞ。今から旗揚げじゃ!ゆくぞ、“ルフィの良き妻海賊団”!♡♡」


「「「「「「ふざけんなァ!!!!!!!」」」」」」



───TO BE CONTINUED……?

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