七武海撤廃後2
注意 このSSは長期連載SSとは一切関係のないものです。
著者も別人です。
「元王下七武海ウタ!
貴様の権限はレヴェリーでの決議により
完全に失効した!
抵抗せず投降することを勧める!」
早朝、島の静寂を破り流れる音声は、城内にて待機していたウタの耳にも届いた
「漸く来たか…
ちょっと行ってくるよ
ゴードンさんは避難よろしくね」
「ウタ…君は…」
「大丈夫だって
昨日からいっぱい準備したから
音符兵の皆もいるし」
「わ… わかった…
だが、一つ約束してくれないか…
必ず戻ると…」
「勿論、絶対戻るよ
全部終わったらパンケーキよろしくね
ホイップマシマシのやつ
じゃあ行くね」
最後にゴードンさんが何か言っていたような気がするが、私は早足で城を出た
シャンクスに捨てられた日、燃え盛る街を背景として駆けた坂を下る
あの日も一人、今も一人だ
あの日から身長も伸び、歌も上達し、海賊の世界で生き抜けるほどの力もついた
だが、私の周りには誰もいない
音符兵は私の配下
物言わぬ従順な下僕
修行でウタワールドの外にも展開出来るようになったけど、彼らは人ではない
ゴードンさんは私を恐れている
私に悟られないよう振舞ってはいるが、何処か隔たりを感じていた
彼の王国を滅ぼし、しかも海賊に堕ちたのだから、無理もない
何時ぞやか、新聞に見覚えのある帽子を被った人物が載っていた
沢山の友人に囲まれできるらしく、楽しそうに笑う彼
仲間一人のために政府機関を襲撃する、天竜人を殴り倒す、その他数多の暴挙も彼が仲間や友人を大切にしているが故の行為なのだろう
頂上戦争にて一瞬目にした彼は、私の記憶の底に眠る少年の姿を残していた
…私の所にも来てくれないかな…
この十数年、何度思ったことか
あの波止場に、レッド•フォース号の船尾が無慈悲にも遠ざかるのを泣きながら見た波止場に
彼の船が近づいて来てはくれないか、と
今現在、眼下に見えるのは私を捕らえようとする幾千の兵が積載されている海軍船
私の待っている船ではない
そうであるなら、叩き潰さなければ
そう自分に言い聞かせながら、私はあの波止場へ辿り着いた
「繰り返す!
元王下七武海ウタ!
大人しく投降しろ!」
私はポケットに隠していた薬を飲み干し、彼らに向け返答する
「そんな叫ばなくても聴こえてるよ
海兵さん
投降しろって言われてそうする海賊がい
るかな?
面倒臭いしさっさとやろうよ」