一進一退一瞬一匹

一進一退一瞬一匹




来るとしたら、どんなのが来るかな…?

おとこ…おんな…

女の子がいいな。今日は女の子の気分。




静かな水辺でいつものように私は待っていた。

私の近くに無知で欲深い誰かが来るのを待っていた。

でも、今日は――



「綺麗…静かで、いいところ…」



――無知でも欲深くもなさそうなのが来た。

彼女のことは知ってる。円喚師フェアリだ。

私で何度か話したことがあるけど、いつも私とは一定の距離を取ってくる。

バレてるのかな?

頭も悪くなさそうだし、フェアリは望み薄かもしれない。

いつもの重そうな服はどこへやら、今日は水着を着てる。

フェアリの趣味なのか露出度は低め。

もっと肌を出した方が色々釣れるんだけどな…いや、フェアリはそういうのじゃないか。


「つめた~い…。ここにいると暑さを忘れちゃいます…来てよかったぁ…」


ここに水浴びをしに来たの?ふーん…

薄く目を開けて、フェアリの様子を観察する。

相変わらず、私は避けてるけど…これはチャンス。

そっちにまで私いるから。他の緑に紛れて見辛いでしょ…?

いいよ、少し深いところに入った。

でもあまり近づかれたら私に気付かれそう……なら。


私を動かしてわざと少し音を立てる。あえてバラす…寝たふりだよ。起きてるよ。狙ってるよ。


「……!」


…よし、フェアリは私に気を取られて私に気付いてない。離れようとして、近づいてくる…

お…近い、近い…そうだよ、もっと泳いで、 

一瞬だけでいいの、 

私に触れて?


「ジーナさん、おはようございます」


おっと…?距離を取ったフェアリが話しかけてきた。

気付いてはいないけど、止まっちゃったか。運がいいね…。


「フェアリ…おはよう、来てたんだ…珍しいね。何しに来たの?」


すっとぼけた。

フェアリは緩やかに泳ぎながら口を開く。


「暑くなってきたので、水浴びでもしようかと。

 ジーナさんの邪魔はしないようにと思ったんですが…。

 起こしちゃいました、ね。

 ごめんなさい。でも、長居はしませ










 前言撤回。


 運が悪いね…。



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