一葉だけ

一葉だけ


注意事項

・学パロ

・あんまりしゃべらないホーキンス(notワンパ)

・二人とも中学生くらいで同じ学校

・多少のモブとそのセリフあり

・恋ハリゆえ奇行をするホーキンス


それでもよろしければ↓からどうぞ



授業が全て終わり放課後の時間。ホーキンスは部活である占い研究同好会に行くために教室に向かっていた。その途中の渡り廊下の壁には今写真がずらりと並んでいる。この前の修学旅行の写真だ。カメラマンによって撮られた写真を希望者は割り振られた番号と枚数を書いて購入するというものだ。

ホーキンスは素通りしてしまおうとしたが前方に女子グループがいるのを発見し思わずゆっくり歩き、目で追ったのはとある人物の存在のせいだ。癖のあるオレンジの髪と黒ぶち眼鏡。女性にしてはやや高めの身長。思わず目を引いてしまう顎のバッテン傷。2-4のX・ドレークだ。

女子たちがわいきゃいと写真を見ている中ドレークは腕を掴まれながら一緒に見ていた。これいいね。あれいつの間に撮られたの!?買っちゃおうかな?と談笑しているのをドレークは微笑みながら自分も写真の吟味に参加していた。

「ドレークさんこれいいんじゃない?」と声を掛けられ少し屈み恐らく友人であろう人物の指さした方向を見た。そしてややあってから

「うーん。私はいらないかな」と答えた。

えー?なんでー?もったいないよー!と言われながらもみくちゃにされていた。そのうちにこちらに気付き、パアッ!と笑いながら声がかけられた。

「ホーちゃん今帰り?」首を横に振る。

「もしかしてこれから部活?」コクコクと頷く。

「そっか、私これから委員会の仕事があるからもし終わったら一緒に帰らない?」先ほどより大きめに頷く。じゃあまた後で!と女子たちと歩きながら去った。

「ドレークさんホーキンスと仲いいのね」と去っていく女子たちの会話が耳に入った。

「いつも一緒に帰ってるもんね」

「あぁ」と短くドレークは答えた。

「付き合ってないの?」

ホーキンスは世界が一瞬止まったように感じられた。心臓が跳ねるのを落ち着かせようとボックスステップを踏み、拳を固く握って祈るようにドレークの返答に耳をそばだてた。

「まさか、ただの友達だよ」

なんでもないような声色にビタッと停止し落胆した。遠のく女子たちの会話を背に溜息をはき、重い足取りで部活に向かう。教室の扉を開き部員たちに手をあげ挨拶をする。部員たちは入ってきたホーキンスに挨拶をし返すと、その表情が暗いことに気付いた。

「ホーキンスさんどうしたんですか。もしかして今日運勢が悪いんですか?」

それとも体調?と辮髪の男がたずね首を横に振る。

「もしかしてドレークさんですか?」

猫のミンクの男の言葉にゆっくりと大きく一度だけ頷き、あぁと周りから声が上がった。

ホーキンスはドレークに恋をしていた。きっかけは1年生のときであった。友達はいなかったけれども問題なく一人で過ごしていて時、声を掛けられた。

「なぁ!海ソラすきなのか?」

鞄につけてるキーホルダーを指さし若干興奮気味にこちらに話しかける様子に一瞬なんだコイツと思いつつ海ソラの話ができることに自身も浮かれ気味であった。そのあと語りに語り合いまだ足りないと思いつつも時間切れになった後ようやくお互いに自己紹介をした。

「じゃぁ、また明日!」

と言って別れたその背を見送りホーキンスは充足感につつまれた。笑顔が素敵だなと誰にいうでもなく自身も帰路についた。それからというもの事あるごとに海ソラについて語ったり、今日あったことをしゃべりながら一緒に帰ったり、休日は遊びに行ったりもした。ホーキンスは口数が少なく、身振り手振りで表現することが多いため奇異の目で見られることが多いがドレークは最初、困惑しつつもそれを読み取ろうと一所懸命に根気よく向き合ってくれた。おかげで翻訳者として駆り出されるくらいにはホーキンスの言動の意図をわかるようになっていた。その頃くらいからホーちゃんというあだ名で呼び出した。ホーキンスはそんな自分を受け入れてくれるドレークに感謝をしつつ好意を持っていた。

あくまで友人としてのはずのそれに変化が来ていた。

2年生に上がったころのことだ。クラスが別になってしまったがドレークは休み時間の合間に遊びに来てくれた。いつものように会話(?)をしていた時一人の男子生徒がドレークに話しかけた。用事があったらしくちょっと待ってとそのままその生徒の方に行った。それにムッという気持ちを抱いた。せっかくふたりで話していたのに邪魔しやがって。いや、まてドレークだって俺以外に会話くらいするじゃねェか。何をイライラしているんだ自分は?戻ってきたドレークはさっきの話の続きを始めたがホーキンスは自分のこの感情に疑問を抱きその原因解明に勤しむ。離れていれば目で追いかけ、笑顔がキラキラしていて見るとドキリとするが幸福な気持ちになる。話してると楽しいくてずっとそうしていたい。他の男と話してるとイライラする。自分だけ見てほしい。


もっと見てたい。もっと声を聴きたい。もっと知りたい。触れてみたい。


いつの間にかドレークの髪に手を伸ばしているの気付き止まった。気付いたドレークは髪にごみでもついてたか?と言って自身の髪を軽く払った。今自分は何をしようとしていた?とその原因を探ったホーキンスは答えにたどり着きそして動揺した。その反動で座ったままの姿勢で後ろの空いていた窓から背面飛びよろしく植垣に突っ込んだ。友人の初めて見る奇行に「ホーちゃん!どーしちゃったのー!?」と慌てるドレークをよそに自分で出した答えにストンと腑に落ちていた。


ホーキンスは恋に落ちていた。


それからのホーキンスは行動が早かった。よしならばアプローチをしようとアタックを開始した。がしかし、思うようにいかなかった。

花をプレゼントをしようとクロユリと竜胆をチョイスし後から花言葉を知り平謝りし(ドレークは気にしてないと笑った)、ラブレターを書いたはいいものの緊張により字がガタガタになったそれを受け取ったドレークはかろうじて読み取れた海ソラの単語から(海ソラになぞらえて書いていたので)海ソラプレゼンバトルの果たし状と勘違いをし屋上で開催するはめになったり、部活の一環と称して手相をみようと手に触れてみたが汗がダラダラ出てしまい、逆にドレークに触れられ(「白くて細くてきれいだな」とあの笑顔で言われた)着席状態背面飛びを再び決め込んでしまった。

それでもコミュニケーションと控えめなスキンシップと試みているうちにいっそ思い切ってと、好きだと伝えてみたがあの屈託のない笑顔で私もだと言われた。ドレークは初心なところがあり、恋愛やいわゆるそういうことの話題になると顔を真っ赤にしていた。それがないといことは友人としての好意としてとらえられているのだろう。もしかしたら俺とそういう風になるとは微塵も考えていないのかもとホーキンスはうなだれた。

部員たちは大丈夫ですよ、きっといつか伝わりますよとホーキンスを励ました。占ってみませんか?という幾度となくされた提案を今回も断った。占いはホーキンスにとって生活になくてはならないほどでその吉凶で今日の行動を決めるくらいには身近で大事なことであった。上記のアプローチはもちろん吉と出た日に行った。だが結果はごらんのとおりである。自身の占いの精度と技術に自信を持っているが故の絶望だった。ホーキンスはドレークとの相性が占えなかった。怖いのだ。溜息をこぼすホーキンスを部員たちは慰める。

部活も終わりドレークと帰るため玄関に向かっていた。憂鬱な気持ちで渡り廊下を急ぎ足で玄関にむかっていたホーキンスはある写真の前で足をとめた。確かドレークがいらないと言っていた写真だ。場所は狛鹿公園であろうか。彼女が小さな狛鹿と共にぎこちないピースと笑顔で写っていた。写真は他に人が写ってなかった。しばらく見ていたホーキンスはその番号を控えて途中で職員室に寄って玄関に急いだ。その日は他愛もないおしゃべりをしながら二人で並んで帰った。

数日後の放課後

ホーキンスは職員室で担任から緑の袋を受け取りぺこりと頭を下げた。写真がきた。買うつもりはなかったが、ドレークのだけ買うと怪しまれるので自分の写っているのとクラスメイトのもフェイクでいくつか買った。移動して誰もいない廊下で袋を開けドレークのだけ取り出した。やっぱり買ってよかったなと思った。小さい狛鹿に戸惑い珍しく笑顔がぎこちない。それがかわいいくて愛おしくて心が躍った。写真なんて今ではスマホでいくらでも取れるしこれまでも撮ってきた。でもあの時要らないと言っていたから、だったら俺が持っていたいと思った。彼女のアルバムから抜け落ちるであろうこの一枚だけなら持つことを許されないものかと思って。

自分の恋心とともに。

写真を胸ポケットに入れてドレークの待っている教室に向かった。教室に入るとドレークが写真を見ていた。ドレークも購入した模様で楽しそうに眺めている。その様にホクホクとしているとこちらに気付いて軽く手を振ってくれた。帰ろうかと立ち上がったドレークから何かが滑り落ちた。拾い上げるとそれは写真であった。が、そこに写っているものに目が点になってしまった。俺だ。俺が写っている。しかも一人で写っているやつだ。

正確には狛鹿もいるが、それは狛鹿公園での一場面だった。狛鹿公園ではふれあいだけでなく大人の狛鹿の乗馬(?)体験ができる。一緒に回っていたクラスメイトに囃            し立てられ乗ったのだが、余りに様になっておりなんかムカツクと理不尽な感想をも          らったのを思い出していた。しかしこの写真は購入していなかったはずだ。何故と顔をあげればこちらに伸ばした行き場のない手と顔を真っ赤にしているドレークがいた。

「あのっ…こ、これは…その…」としどろもどろになっていた。

おい、待て。なんだその表情は。その仕草は。まさか…。

と思考を巡らせていると、ドレークは教室を飛び出した。すかさず追いかける。

「違うんだ!ホーちゃん!これは違うんだ!」と叫びながら走っていく。     クソッ、速い、待ってくれと息せきを切りながら走った。

階段に来たときホーキンスを浮遊感が襲った。段差に躓いたのだ。あっと思った時には宙に浮いていた。今日は死相が出てないから大丈夫だろうがこれは痛いなと思わず目をつむろうとした直前に振り返り青ざめたドレークが手を広げているのが見えた。思ったほどの衝撃が来ないことに首をかしげながら目を開けるとドレークが下敷きになりホーキンスを抱きしめていた。

「だ…い、じょーぶ、か?ホーちゃん?」と声をかけるドレークにお前の方こそと心配を目で訴えるとはにかみながら答えた。

「私は大丈夫だ。少し背中が痛いけど平気だよ」ほっと息を吐き、それより帰ろうと手を離したドレークの顔の横に手をついた。ここは踊り場だから壁ドンならぬ床ドンかと少しずれた考えをしながら困惑するドレークに質問をぶつけた。ここで逃がしてたまるか。

「ドレーク…俺のこと好きか?その、恋愛的な意味で」

ボッ!と真っ赤になった顔を必死になって逸らそうとしている。ホーキンスの髪がドレークの顔を外から遮るように下りているから顔だけがよく見える。

「違うんだ…これは、その…」

とだんだん声が小さくなった。うるんだ瞳とまつげが震えている。泣きそうだと気づき胸ポケットを探る。落ちてなくてよかった。写真を取り出しドレークに見てくれと近づける。恐る恐る目を開けたドレークはその写真を見て、えっ?と声を漏らした。

「なんで?…その写真は買って、なかったは…ず…」

体を起こしながら言葉尻にと共に思考の海に沈み、しばしの沈黙の後まさかと答えを見つけ浮上した。

「そういうことだドレーク。」

口を開いては閉じを繰り返しあわあわしている。

「…ホーちゃんは私のことが好きなの?」

ここまで来てまだそんなこというのかとぶすくれると抗議の声が上がった。

「だって!スキンシップしてくる割りには平然としてるし!いつも見てるなって思ったら、突然奇行に走るし?!ホーちゃんが友人として接してくれるのに私がこんな想いをもってるのが申し訳なくって…」

さっきのだって表情が変わらないから本当にそうなのかなって不安になるし、と再び顔を逸らされてしまった。

表情が変わりにくいのは生まれつきだ。口数が少ないのも相まって感情が伝わりにくい。だからボディーランゲージを鍛えてきた。おかげでいくらかは伝わりやすくなった。だが、こうやってドレークが不安になっている。これまでやってきたアプローチが無駄でないことに安堵しつつ伝えねばと、ドレークの手を掴み自分の胸に当てさせる。自分のうるさすぎる鼓動を相手に教えてやるために。胸に充てられた手からこちらの顔に視線を移したドレークを真っ直ぐ見据える。

「好きだドレーク。俺と付き合ってほしい」

「……はい!」

思わずお互いに抱きしめあう。しばらくそうした後、我に返ったドレークが慌てて離れた。顔は真っ赤だ。そして少し恥じらいながら

「これからよろしくね」と笑った。

これからもな、と言いつつこちらこそよろしく頼むと返した。さて、とドレークを立ち上がらせて保健室へ向かった。ケガをしていないか診てもらわなければと手をつなぎながら共に歩き出した。互いの熱すぎる手と耳の赤さを夕日のせいにしながら廊下を進んでいった。



「そういえばなんであの写真だったんだ。他にも俺だけ写ってるのがあったと思うが」

「ん?あれが王子様みたいでかっこよかったから」

「………そうか」

「うん!」

ホーキンスは照れ隠しにブレイクダンスした。




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